林秀樹「ド底辺に必要な理論的な思考方法」

2016.07.02 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(64) 理的根拠

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。7月に入りました。6月に関して私の支援先では「5月よりも良かった!」、「6月はさらに落ち込んだ・・・」とバラバラな結果が出ています。通常、全体としては総じて同じような傾向があるものなのですがこの6月は業績にかなりバラつきがありました。さて、今月は「なぜこういった差が出てきているのか」についてお伝えします。

あるお店の話です。このお店も昨今の業界環境において例外ではなく、厳しい営業となっていました。そこで対策をいろいろと行っていたわけですが、そのほとんどが思いつきや行き当たりばったりの対処療法的な施策ばかりでした。例えば、
・売上を上げたくて玉単価の高そうな機種を入れる
・有力機種が入らないので、中古で「質より量」とばかりに闇雲に入れる
・稼働が落ちたといって、計画を無視して放出に走る
などなど。。。しっかりとした根拠があるのではなくその時その時の感覚で物事を進めていくものですから、当然方針はいつもブレブレでいったい何を(どこを)目指しているのかわからない迷走状態に陥ってしまいました。

私はそういったお店の状況を見て、まずは「お店の方向性」を設定しなおすように提案しました。かっこよく言えば理念、ビジョンに近いものです。そのうえですべての施策はこの方向性に合うことをしていく、と規定しました。当初は「現場で、肌で感じたことにすぐに対応することこそ正しい」、「理屈よりもまず実践、すぐ行動」という意見も多くなかなか定着しませんでしたが、それでも徐々に「まず考える」という文化がついていき結果的に「根拠のあることをしよう」というお店のスタイルが出来上がりました。そうすると面白いもので業績が少しずつ回復していったのです。

「理論」と「実践」は常に必要な、車の両輪といえます。しかし、このうち「実践は活動をする限り必然的に付きまとうものであり行動こそ前に進むために必要なこと」だと多くの人は思っていますが、「理論は意識しなくてもあまり差し支えない」と感じる人もまた多いものです。しかし本当にそうか、というとそれは間違いで、理論の欠如した実践はどこか心許ない、そして得られる結果に対しての確信が持てない行動になります。

「実践なき理論は空虚であり、理論なき実践は盲目である」
原文からは少し意訳していますが、哲学者イマヌエル・カントの「純粋理性批判」に登場する言葉です。この言葉は、行動するには実践的確信とともに思索によって得られた論理的確信がどうしても必要なのだ、ということを示しています。

行動を起こすためには「自信」が必要です。自信は「自分を信じる」と書きますが、どこから批判されても相手を納得させられるような論理的な根拠を持つことで自分を信じることができます。だからこそ、理論が必要なのです。

日々の業務を遂行していくには、思いつきではなく、自分の言っていること、していることに対する理論的根拠、なぜそうしなければいけないのか、どうしてそういうことが言えるのかを、はっきりと意識的に根拠づけることが必要です。「スグに動く」フットワークの軽さも必要ですが、その前にまず理論的根拠を持つように意識してください。「行動の前に、考える」、これを意識するかどうかが、のちに明確な差になって表れますよ!

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。

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