「敵がやる以上自店も」だと業績は上がらない

2019.05.25 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(215) 仕掛けのタイミング

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。

GW後のこの2週間、特に19日の週からここまで非常に厳しい数字が続きました。この流れが例年6月いっぱいは続きます。なので今考えているのは、おそらく「どうすればこの苦境を乗り切れるか」だと思います。苦境を乗り切る手法としてはやはり入替を軸とした仕掛けになると思いますが、しかしその「仕掛け」、やり方を間違えると思ったほどの効果が得られないばかりか、むしろ投資の分だけマイナスになってしまうこともあります。今回はこういった「仕掛けの時期」についての適切な考え方についてお伝えします。

6月は休日の数も少なく例、年落ち込みます。ある程度の業績を上げているお店は稼働維持を図るために入替を軸にした仕掛けをすると思います。もちろん強豪店舗ほど大型の入替をしてくるでしょう。そういった推測のもと、
・敵がやる以上、対抗しないと埋没してしまう。
という危機感から背伸びをした入替の計画しているお店もあると思います。しかしここで考えてほしいことがあります。それは、
・本当に、このタイミングがいいのか?
ということです。
「タイミングなどは関係なくGW後の落ち込みが厳しすぎるので、敵がやる以上自店もやらざるを得ない」
もしもこういった考えで計画しているとしたら、「だから業績が上がらない」といえます。

紀元前の兵法家である孫子はその著「孫子の兵法」で次のようなことを述べています。

「川の中にある石が動くのは水の力ではなく、流れの勢いの力で動く。また、鷲や鷹が水面の魚を獲れるのは一瞬のタイミングまで待ち、それを逃さないからである。これと同じように戦の上手なものは、仕掛けるまでの勢いと“ここぞ”という時を逃さないのである」(兵勢編)

物事の結果は、その施策の内容よりもそこに至るまでの勢いが大事であり、またその成果は最も良いタイミングでこそ得られるということを示しています。勝負は基本的に強い者が勝つものであり、強豪店と真っ向から勝負をしても勝ち目はありません。その意味で強豪がこぞって大型入替をするような時期に対抗するというのは、「ここぞ、というタイミング」ではないと考えられます。

次に違う角度からも考えてみます。

落ち込むタイミングでの仕掛けは、言ってみれば「弱みの解消」が目的です。しかし有名な環境分析であるSWOT分析では「強みを伸ばすこと、そしてその強みを最も良いタイミングに合わせて打ち出すこと」を最優先すべきとしています。

6月のこの時期の入替は「弱みの解消」が目的といえ、且つ「強豪がこぞって入替をするという、良くない時期」といえるので、最もしてはならない組み合わせ(弱み解消を脅威のタイミングに合わせる)だといえます。

以上、東洋、西洋の2つの戦略論(孫子の兵法、SWOT分析)を見てみました。そのどちらも「良いタイミングまで待て」と言っています。良いタイミングがいつなのか?と聞かれればそれはお店個々に違いもありますが、6月が「仕掛けるべきではないタイミング」と考えられる点は一致しています。

「勝負は強いほうが勝つ」、だからこそ勝負を避けることも戦略の一つなのです。イベント規制などもあり入替が戦術の大きな柱となっている現在、それなりの資本投下となる入替は慎重に、できるだけ成功の可能性の高いタイミングを計ってほしいと思います。強豪と同じ土俵で勝負しても結果は見えています。

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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

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