暴力団員が面接に来たら…

2020.02.04 / コラム

関東のホールに28歳の男性が面接にやって来た。人物的には今時珍しいほどの好人物で礼儀もちゃんとわきまえている。

すぐに採用したいほどだったが、男性の経歴で店長は迷った。

関西に拠点がある暴力団の三次団体に所属していた。

「高校を中退して、任侠の世界に憧れて入ったが、斜陽産業で先輩もどんどん落ちぶれて行く姿を見ていて、抜けたいと考えています。普通の会社ではまず雇ってもらえないので、パチンコ店の面接を受けています」と身の上を包み隠さず話した。

暴力団排除条例の影響で、シノギが断たれ、いい車に乗って、いい女を連れて、いい服を着ることもできなくなっている。

三次団体なので組といっても10人余りの小所帯。組抜けしても地元では働けないので、知り合いがいない関東で職探しをしている。

大手はまず採用されないと思い、関東で10店舗クラスのチェーン店の面接を受けたが、ことごとく不採用になっていた。

「パチンコ業界だって同様に斜陽産業ですよ」と店長はやんわりと断ろうとした。

「ボクの様な者は他へは行けません。1年間丁稚奉公で真面目に働きます。それで良かったら正社員にして下さい」と懇願した。

熱意は感じた。根性のない今時の若者よりもはるかに人間も出来ている。入れ墨も入っていない。指も欠けていない。

鉛筆書きやプリクラの写真を貼ってくる常識のない若者の履歴書が問題になっているが、字も達筆で、職歴欄にはちゃんと組の名前が書かれていた。

断る理由がなくなってきた。

問題が一つあった。

まだ、完全には組から抜けていない。仕事が見つかってから組を抜ける予定にしている。

面接とはいえ、現役の暴力団員と接触することは問題がある。

組を抜けるには半年余りかかる、という。

その際、車や貴金属、腕時計などは全部没収されるそうだ。

今は雇ってみる方向性に気持ちは傾いている。

パチンコ業界の歴史は駆け落ちしてきたカップルや足抜けした暴力団員などを受け入れることで、社会からドロップアウトした人たちを救済してきた。

そういう意味では弱者に優しい業界でもあるが、時代の流れと共に、大卒を採用する現在とでは状況がいささか違う。

組抜けしても就労支援がなければ、社会復帰の壁となる。離脱届けという組とは縁を切った、という組長からの証明書も必要になる。

人手不足の中、戦力化の見込みもない使えない人材をわざわざ採用するか、経歴に問題はあるが使える人財を採用するか、あなたが店長なら今回のケースはどうする?





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