新型肺炎 日本レース影響も~IR事業者の時価総額,YTD変動 Melco,MGM,Wynn40%強の縮小
2020.03.10 / カジノ【海外ニュース】
3月9日、ニューヨーク・ダウ平均株価(ニューヨーク証券取引所, NASDAQ)終値は、23,851.02ドル, 前日比2,013.76ドル低下(-7.79%低下)。低下額は過去最大。
以下は、日本IR事業への参入意欲を持つ大手IR事業者の3月9日終値をベースとする株式時価総額、1月初からの年初来変動率(Year-To-Date, YTD)。
縮小率が大きい3社は、MGM Resorts Internationalの47%減、Wynn Resortsの42%減、Melco Resorts & Entertainmentの40%減。
米国本社、米国上場で、マカオへの依存度が相対的に高い3社。
縮小率が小さい3社は、SJM Holdingsの9%減、Galaxy Entertainment Groupの17%減、Genting Singaporeの21%減。
マカオ(香港)、シンガポールの本社の3社。
市場は、新型肺炎(COVID-19)の影響、および、マカオの営業権満期(2022年6月)のリスクを重視。
<マカオ・香港>
Galaxy Entertainment Group(香港証券取引所) 27,986億円, YTD17%減
Melco Resorts & Entertainment(NASDAQ) 7,127億円, YTD40%減
SJM Holdings(香港証券取引所) 6,052億円, YTD9%減
<フィリピン>
Bloomberry Resorts(フィリピン証券取引所) 1,592億円, YTD37%減
<シンガポール>
Genting Singapore(シンガポール取引所) 6,539億円, YTD21%減
<米国>
Las Vegas Sands(ニューヨーク証券取引所) 39,016億円, YTD29%減
MGM Resorts International(ニューヨーク証券取引所) 9,248億円, YTD47%減
Wynn Resorts(NASDAQ) 9,015億円, YTD42%減
マカオ:新型肺炎”前例なき深刻さ”~カジノ市場 2月YoY88%減。中国客不在,回復見えず
3月1日、マカオのゲーミング規制当局(Gaming Inspection and Coordination Bureau, DICJ)は、2020年2月のカジノ市場(GGR, Gross Gaming Revenue)を発表。
2月はMOP3,104mn,YoY87.8%減(約419億円)。
1-2月計は、MOP25,229mn,YoY49.9%減(約3,406億円)。
2月は、新型肺炎の影響が本格化。マカオ政府は、カジノ施設を2月5日から19日まで閉鎖。20日より再開可能となったが、中国顧客不在であり、市場は閑散状態。
現在、中国政府は、本土住民のマカオへの入境を制限。個人旅行(Individual Visit Scheme)ビザの新規発給、団体旅行ビザとも停止中。
マカオ訪問者(2019年3Q, 7-9月)のうち、70%が中国本土、13%が香港、韓国が4%、台湾が3%など。
現時点では中国顧客のマカオ入境の解除の時期は予見できない。
カジノ市場は、2019年12月にYoY13.7%減と、2016年3月以来の前年同月比2ケタ%減を記録。続いて、1月YoY11.3%減、2月YoY87.8%減と3ヵ月連続の2ケタ減。
コンセッション6事業者のカジノ顧客セグメント別の限界利益(GGRからGGR課税, リベートおよびプロモーショナルアローワンスを控除)の構成比は、VIP部門が約3割、マス部門が7割。
VIP部門は、キャッシュバック・リベート(仲介業者、プレイヤー)負担が大きく、GGRに対する利益率が低い。
マカオ カジノ市場(Gross Gaming Revenue)の暦年の動向 ・2014年=MOP351,521mn,YoY2.6%減 ・2015年=MOP230,840mn,YoY34.3%減 ・2016年=MOP223,210mn,YoY3.3%減 ・2017年=MOP265,743mn,YoY19.1%増 ・2018年=MOP302,846mn,YoY14.0%増 ・2019年=MOP292,455mn,YoY3.4%減 2016年9月~2018年12月の前年比プラス要素、マイナス要素 |
マカオ:新型肺炎”前例なき深刻さ” 市場縮小が海外IR6社に影響。日本レース左右も
新型肺炎は、2020年のマカオ・カジノ市場(Gross Gaming Revenue)を大幅に減少させるリスクがある。マカオ市場縮小は、海外IR大手6社の業績に大きな影響を与えよう。
2月20日、Melco Resorts & Entertainment(MLCO, 米国NASDAQ上場)が2019年度4Q実績を発表。
その機関投資家向け電話会議にて、ローレンス・ホーCEOら経営陣が、新型肺炎の影響、展望について以下を述べた。
「我々は、マカオ市場が極めて閑散(顧客が少ない)とした状況が長期間続くと想定している」
「厳しい期間は、今後4-6ヵ月におよぶ可能性がある」
「20日0:00のカジノ再開後、StuioCityの顧客数は約10名、City Of Dreamsは10-12名であった」
「20日にカジノ施設は再開したが、いまだ非常に多くの課題が残る」
「回復は、まず香港や東南アジアのVIPセグメントからとなろう(中国本土顧客でなく、)」
「現在、中国本土では学校が休校となっている。その対応として、7-8月の夏休みがなくなる可能性があり、その場合、マカオ訪問者が減少する可能性がある」
Melco Resorts 19年度4Q 経常益0.9億ドル,YoY35%減~足元は肺炎打撃。日本は横浜集中
それは、2020年に実施予定の日本各地における事業者選定(RFP)の行方を左右する可能性がある。都道府県・政令市は、事業者選定の過程で、足元の四半期業績、2020年度業績予想を注視する。
マカオ市場縮小の影響度は、マカオへの依存度の高さ、損益分岐点の高さ(売上高利益率の低さ)、により異なる。
2018年度の大手6社の調整後EBITDA構成におけるマカオ依存度は、Galaxy Entertainment Group, Melco Resorts & Entertainment, Wynn Resortsが、それぞれ96%、88%、77%と高かった。
一方、Genting Berhadは、マカオに事業を持たない。
2018年度の大手6社の売上高利益率では、Melco Resorts & Entertainment、MGM Resorts Internationalが、それぞれ7%、5%と低かった。
マカオ市場縮小の影響は、2015年度業績から示唆を得ることができる。2015年度には、マカオ市場は、中国政府による反腐敗対策等の影響で、YoY34.3%減となった。
2015年度には、Melco Resorts & Entertainment、MGM Resorts Internationalは、それぞれ赤字転落を余儀なくされた。