役物メーカーを退社して見えたこと

2020.02.26 / コラム

デザイン系の大学を卒業したAさんが就職したのが役物メーカーだった。パチンコが好きでその会社を選択した。会社ではデザイナーだった。役物メーカという立場上、メーカーの下請けだが、大手メーカーの担当者と直で打ち合わせる立場にあった。

「2~3万台売れる機械もどんどんなくなり、数年前から多品種小ロット時代を迎えました。それに併せて受注自体も減っていきました。昔はボーナスは6カ月出たものが、今は3~4か月分に減りました」(Aさん)

年間400万台売れていたパチンコも今や133万台まで落ち込んでいるのだから、ボーナスが減るのも致し方ないところだが、ボーナスの落ち込みは台数減だけではなかった。

「メーカーさんは至って強気ですよ。ロット数が下がればコストが上がるのは当たり前の話なのに、メーカーさんにはこれが通じない。仕事を他社に回されては困るので、泣く泣く利益を削ってでも仕事を受けていました」(同)

生産台数が減り、役物の製造コストが上昇しても、それを飲んでもらえない主従関係が収益性を圧迫しているようだ。

販売台数が減る要因はいうまでもなくホールが買わなくなったからだ。かつてはまず、最初に主力スペックを出した後で、甘デジや1/200のスペックを随時リリースして、シリーズで台数を稼いでいた。今は大型版権以外では、主力スペックでコケると後のスペックはお蔵入りとなる。

それでも忘れかけた2~3年後にひょっこり、と甘デジを出したりしながら台数確保に勤しんでいる。

1機種をスペックを変えながらリリースすることで部品メーカーも恩恵を受けていたが、設定付きが浸透するとそれも望めなくなる。そんなことを見込んでAさんは、長年勤めていた部品メーカーを一昨年退社する。

業界を離れて見えてくることもある。

「釘調整ができないということは、やはり釘はなくなるでしょうね。釘がなくなる代わりに役物と突起物でスタートに入れることになる。釘打ちの工程も不要になる。釘メーカーの人もいずれ、釘はなくなる、と思っている。せいぜい釘が使われるのは風車釘ぐらい。スタートも今のように1カ所ではなく、2~3カ所になることも考えられます。ベースメーターが付いたことで、電チューが入りやすくしたりする。機械の方でスタート調整をしてくれる。それによって初心者でも楽しめる機械が作れる」

とどのつまりは、パチンコの息つく先はパチコン「ギガ」の釘がないバージョンということか?
それでパチンコ人口が増えるのならば善しとするしかない。











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