年齢で貴重な人材を逃したホール

2019.08.20 / コラム

東京・銀座の一等地ガス灯通りで営業を続けてきた正統派のキャバレー「白いばら」が87年の歴史に幕を下ろしたのは昨年1月10日のことだった。店内は生バンドの演奏が流れ、フロアではダンスが繰り広げられる。若かりし頃の石原裕次郎が活躍した日活映画の昭和レトロを感じさせる老舗キャバレーでもあった。

平日ならビールとおつまみが付いてのセット料金は3時間9800円、と銀座では良心的な明朗会計で今でも多くの人に愛され続けてきた。

経営は順調だった。客質も良く、ホステスのホスピタリティー溢れる接客も好評なのに、閉店を余儀なくされたのは建物の老朽化だった。

白いばらのホステス用トイレの個室にはこんな注意書きが貼っている、という。

「ここでスマホを使用しないでください! 少しでも早く! 今、ご来店いただいているお客様への喜び作りのために」

この精神がホステス一人ひとりに浸透していた。

「白いばら」でホステスをしていたA子さんは、閉店に伴い、職を失うことになった。そこで給料が高そうな業種としてパチンコホールを選択した。2社面接に行ったが2社とも不採用になった。

接客には自信があるA子さんは不採用になったのは、自分の年齢のせいではないか、と考えた。正確な年齢は分からないが、40歳を過ぎていた。

2社とも正社員採用はないが、アルバイトなら採用してもいいということだったが、A子さんはあくまで正社員採用を希望した。

「パチンコ屋さんはカウンターはやはり若い子の方がいいんですかね」とA子さん。

ホール企業に不採用になったA子さんが次に選択したのがビジネスホテルだった。こちらは採用となり、3カ月間の試用期間を経て正社員に登用され、即戦力として頑張っている。

白いばらで磨いてきたA子さんの接客術はホテル業でも見事に活かされ、上司からは非常に高い評価を得ている。小さな気配りや、客が望んでいそうな先読み術は長けていた。

接客については「また来たいと思っていただくことが重要です。チェックイン前に部屋の準備が100%できていなくても、お客様からは早くチェックインしたい要望がある。お客様の要望に応えるためには部屋の準備が100%できていなくても、フロント対応でチェックインしてもらうこともあります。失敗してもいいからそこから気づけばいい」というスタンスだ。

ホールのカウンターは若い女性がいいかも知れないが、ホテルのフロントは年齢がいっていてもそれが安心感につながる。

ホールは年齢にこだわったのか、いい人材を逃してしまった。






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