マカオのカジノ成長と急増する質屋

2014.07.04 / カジノ

マカオの街を歩けば必ず目にする「押」の看板。これは質屋のトレードマークで、その昔、質入れの際に押す判子が由来と言われている。これらの質屋の看板デザインはどこも似ており、中国では福をもたらすと信じられているコウモリがコインを抱えるシルエットの中に「押」の字が埋め込まれている。質屋は、大手の金融機関のように煩雑な手続きや厳しい審査が無いため、昔から家計のやりくりに困った人々やカジノや競馬などの博打打ちにとっては心強い存在だ。2002年、マカオ政府がカジノライセンスを開放した結果、新たなカジノリゾートが相次いで開業し観光客が増加、それに歩を合わせるように質屋の数もそれまでの3倍に増え約170件になった。マカオの街角にある数多くの質屋は、成長著しいカジノ産業と大きな関係がある。

昨年、4兆円を超えたマカオのカジノ収入は、依然として大金を賭けるVIP客への依存度は高いものの、「マスマーケット」と呼ばれる標準的な顧客層の存在感が増しており、昨年、このマスマーケットの収入は少なくとも25%は上昇したともいわれている。マスマーケットの約半分は香港や台湾以外の中国本土からの訪問客。マカオの質屋はこれらの中国本土からの訪問客にとって、非常に重要な役割を果たしている。勢いのあるマスマーケットの中でも、特に大きな存在感を示すのが「プレミアム(上位)マスマーケット」と呼ばれる顧客層。彼らがカジノで使う金額は一回の渡航で約500万円が相場と言われる。しかし、中国本土の渡航者は国外に持ち出せる現金は一回の渡航につき約2万元(約30万円)、ATMから引き出せる金額も1日あたり1万元に制限され、通常であれば賭博用の現金を手にするのは難しい。一晩で数千万、数億という金額を賭けるVIP顧客ともなれば、ジャンケットなどを通じて特別な融資を受けることも可能だが、マスマーケットに属する客はこのような資金ルートを持たない。そこで、質屋を通じた〝裏ワザ〟を使って賭博に向けの現金を得るのだ。彼らは、質屋に並ぶ時計や貴金属などの商品をクレジットカードで購入し、その商品をその場で質入れまたは売り戻すことで現金を工面するというのだ。この場合、質屋に5~10%の手数料を支払う必要があるが、まとまった現金を得るのに最も手っ取り早い手段となっている。また、香港のように融資金額の上限が法律で定められていないことから、店のさじ加減でいくらでも現金を得ることができてしまう。

質屋の「現金の提供窓口」という特殊な役割は、マカオのカジノ収入にどれほど貢献しているか正確に計られてはいない。しかし、ここ10年間の質屋の増加を見る限り、成長の原動力のひとつとなっていることは間違いないが、時にこのような取引は資金洗浄の温床と指摘されることも多い。

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