パチンコに人生を賭けたおじいちゃんの顛末
2020.02.14 / コラム北関東のホールでの出来事。常連客の70代のおじいちゃんは、お客さんたちからは「ピッタシさん」のあだ名で呼ばれている。
理由はおじいちゃんの口癖が「今日は1万円ピッタシ負けた」「今日はピッタシ2万円勝った」などと必ずピッタシを付けたがったからだ。
おじいちゃんは専業農家でトラクターのハンドルも握るが、仕事はほとんど息子に任せ、悠々自適で毎日のようにパチンコを打っていた。
おじいちゃんはそれなりに資産があるので、4パチ、20スロ以外は打つことはなかった。ところが、しばらく、おじいちゃんの姿がパッタリと途絶えた。
数か月後、再びホールに姿を現すようになった。
あれだけ、4パチ、20スロしか打たなかったのに、それ以降は1パチ、5スロに替わった。
1日2万円の予算だったが、息子さんから小遣いを減らされたために、止む無く低貸しにシフトした。
小遣いを減らされた理由は、農機具の大型投資をしたためだった。
小遣いを減らされてからは、ホールに足を運ぶペースも月一に落ちた。
「今まではおカネがあったので、負けても惜しいとは思わなかったが、1パチ、5スロではやっている気分にならない。パチンコはワシの人生を賭けたバクチだ」(おじいちゃん)
そんなおじいちゃんが「俺のことは2週間探すな」と置手紙を残して家出した。
友達と向かった先はアメリカのラスベガスだった。
500万円をトラベラーズチェックに換え、最後の大勝負に出た。
おじいちゃんは、カードゲームは分からないので、スロットマシンとルーレットの2本に絞って勝負した。
カジノ初心者だったが、結果的にはスロットマシンで1500万円、ルーレットで1000万円、計2500万円勝った、という。まさにビギナーズラックだ。
向こうで30%の税金を払って差し引いた1750万円相当を全額息子に渡した。
その代り「パチンコを禁止しないでくれ」と懇願した。
以前の半額の月30万円の小遣いをもらうようになった。しかし息子からの条件は「1パチにしてくれ」。
おじいちゃんはいう。
「パチンコは身を亡ぼす。その通りだ。身を滅ぼした常連を何人も見てきた。でもウチは収入があるから身を滅ぼさない。俺は他とは違う、というところを見せつけたかった。カネは冥土には持っていけないから、全部パチンコに使う」
常連客の間ではこれだけギャンブル好きだから、またラスベガスへ行く、と予想している。そしてスッテンテンになって帰ってくることを。
「大負けするのを楽しみにしている」という声がどこからともなく聞こえてくる。