ギャンブル依存症とカジノ議論は慎重に

2014.08.19 / カジノ

8月18日、毎日新聞は社説で「ギャンブル依存症 深刻な実態を直視せよ」をWEBで掲載した。

記事はカジノを検討している政府に次のような対策を求めている。「ギャンブル依存症は精神疾患の一つである。ギャンブルそのものを否定するつもりはなく、自分の責任で楽しんでいる人が大多数であるのは事実だが、薬物依存と同様にギャンブルをやめると手の震えや発汗などの症状が表れ、治療が必要になる人がいる。さまざまな刑事事犯や家庭内での暴力の原因にもなり、苦しんで いる家族は多い。(中略)カジノ法案が臨時国会で本格審議されるが、ギャンブル依存症対策こそ急がねばならない」。

依存症対策は確かに必要だ。しかし、ここで陥りがちなのが「カジノはギャンブル依存症の原因になるから反対だ」「ギャンブル依存症が増える」という議論だ。

そもそも「ギャンブル依存症」は同記事でも指摘しているとおり、WHO(世界保険機構)が「精神疾患」と定義づけている病気である。病気であるからには治療が必要で、決して「自制心がない」などと切り捨てるべきではない。これは骨折した人間に「ガマンしろ」と言っているのと同じだ。専門医の指導により治療するべきである。

では、本当にカジノはギャンブル依存症の原因になるのか。カジノはこの場合、ハマる対象にすぎない。セックスに依存する人がいれば、ドラッグに依存する人もいて、買い物に依存する人もいて、食事行為自体に依存し、自慰行為に依存する人もいる。喫煙に依存する人(ニコチン依存症)は、平成11年の統計になるが1800万人もいる。

これら「依存」は、それら「対象」が原因ではない。喫煙するからニコチン依存症になるわけではなく、精神的安定を求めて喫煙し、結果ニコチン中毒になる。同様に飲酒するからアルコール依存症になるわけでもない。精神的不安定な状況を本能的に避けるために酒を飲み、その結果としてアルコール依存症になるのである。話を戻すと「カジノはギャンブル依存症の原因」という議論は非常に難しいことになる。

また、「カジノでギャンブル依存症が増える」は、同様に乱暴な議論で、パチンコ店がここ10年で2000店舗近く減っているものの、それに比例してギャンブル依存症患者が減っているというデータはない。むしろ、「パチンコ」と「ギャンブル依存症」を結びつける言論はネット上で増え続けている。

さらに、「ギャンブル依存症」については統計資料が少なく、参照できるようなものがないのも問題だ。同記事で毎日新聞が指摘しているとおり「国はギャンブル依存症の調査研究に力を入れ、予防に向けた啓発や治療体制を拡充すべき」である。

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