そして後継者がいなくなった
2019.12.17 / コラムフランチャイズビジネス専門誌の記者が取材の過程で本業がホール企業という人物を取材した。年齢は50代で2代目だった。ホール経営を継ぐために表周りから始めて店長などの現場経験も積んだ。2代目はいきなり役員スタートするケースが少なくない中、ホール経営と真摯に向き合っていた。
ところが会社を継ぐべき2代目(長男)は、フランチャイズビジネスを始めて10年近くが経つ。これまでに手掛けたのはコンビニ、コーヒーチェーン、焼き鳥チェーンなど。
「以前は、たくさん出して遊んでもらうようにしていたので『今日は楽しめたよ』という言葉を掛けてもらうこともありましたが、等価になってからは『負けた』という言葉ばかりで、まったく感謝されない遊びになってしまった。感謝されない商売をやってもつまらない」(2代目)というのがフランチャイズ経営に走った理由だ。
現在、コンビニ経営は続けているがかなり否定的だ。
「日本人のアルバイトが集まらないので外国人を雇っていますが、知り合いが来るとカゴヌケ、と言ってレジを通さないこともあります」
100円ショップのフランチャイズも考えたが、完全に飽和状態なので諦めて、新たに始めたのが作業服のチェーンだ。
従来は職人ご用達の店のイメージがあり、一般客は寄り付けなかった。過酷な環境で使う作業着で培ってきた品質と値段の安さに加え、デザイン性・機能性を取り入れたスポーツウエアをアイテムに加えて業態を転換。それによってこれまで考えられなかった女性客や一般客が急増して注目されている。
「安くて品質がいいのでお客さんも笑顔で感謝されています。郊外店でも大丈夫でまだまだ出店の余地はあるので、後2~3店舗の出店を考えています」
今はフランチャイズビジネスの方が忙しく、ホール経営からは離れている。年老いた初代は「ホールを継がないのなら財産は一切やらない」と憤慨している。
弟と妹がいるが2人ともホールを継ぐ気はない。関東で店舗数は結構抱えている、というが後継者がいなくなったパターンで、M&Aの対象でもある。
「お客さんから『ありがとう』のない商売は精神的に辛い。生き甲斐としてやっていられない。パチンコに見切りをつけたのは楽しくないから。まさかこんなに業界が悪くなるとは思わなかった。儲かりすぎている時に将来のことを見なくなった。自分の儲けしか考えない業界ではダメだ」と警鐘を鳴らす。