【水曜】第97回パチンコ雑誌ライター喜納臭蔵の視点

2016.03.08 / 連載

第97回 素直な意見が「失言」になってしまう業界とは

プレス発表会やファンイベントのゲストに、タレントとかアイドルといった話題性のある人を呼ぶことが多いですよね。良くも悪くもそれが旬の人であれば、囲み取材でワイドショーやスポーツ新聞の芸能欄なんかに取り上げられ、その背景に機械が写りこむことで宣伝にもなるのでしょう(というか、それが最大の目的)。

だからきっとパチンコやタイアップしたコンテンツに興味がない人でもいいんだと思います。それがたとえ当たり障りのないコメントやメッセージだったとしても、取材する側はそういうものだと考えているのでノープロブレム。ただ、お笑い芸人なんかだとパチンコ・パチスロが大好きという方も結構いたりして、そういう人からはファン目線的なコメントが出てくることもあったりします。そして好きだからこそ、時に失言をすることもあるんですね。例えば、「先日、いくら勝ちました」とか「換金率」みたいなフレーズ。そして後から「当該コメントは記事中で使用しないでください」と釘を刺されることも。

ファンとしては当たり前な「三店方式」をオフィシャルな場では公言できないのは、この業界が抱える慢性的な問題であり課題だと思います。テレビドラマなどで、ホールの場面が使われることも少なくなっていますけど、昔はパチンコで勝ったことを表現するために、紙袋一杯のお菓子を抱えているというのが定番でした。実際によく見られる、交換所からお札を数えながら出てくる光景は、ドキュメンタリー番組や映画といったもの以外ではタブーになっているようです。これもファンから見ると極めて不自然ですが、換金できることをあからさまに表現するのはダメなんでしょう。

今のパチンコ業界は、換金という根幹の部分をおおっぴらにできずにグレーなまま、巨大産業になってしまいました。一般市民にとっては、本音と建前を使い分ける必要もないので、娯楽ではなくギャンブルとして見られています。

それを取り締まる行政に対しては、個人的にはしっかりと道筋を作らなかったという大きな責任があると考えていますが、それでも遅ればせながらグレーな部分をすこしずつ解消しようとしているように見えます。現場にとっては歓迎せざることかもしれません。しかし、今後もこの業界が生き残るためには、荒治療だとしても射幸性が低下したとしても、のめり込み問題への対応は必要なのかなと。お上のやることがすべて正しいとは思いませんし、実際これまでにもみなし機撤去にプリペイドカードの推進と疑問に思うことは多々ありました。それでも今回こうやってレールが敷かれた以上は、粛々と、そして足並みをそろえて進んでいくしかありません。

以前も書きましたが、筆者個人としては怪しげで〝牧歌的〟で、子どもがホール内を走り回っていたような1980年代のパチンコが大好きです。当時は荒いといっても今ほど射幸性が高い機械があったわけではなく、産業規模も大衆娯楽として身の丈に合ったものでありました。それを良しとせず、グレーなものをグレーのまま拡大し続けた結果、さまざまな問題を抱えるようになってしまった。ここらで改めて身を清めておくべきではないでしょうか。

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パチンコ・パチスロライター 喜納臭蔵(きなくさぞう)

学生時代にパチンコ・ パチスロの魅力に取りつかれて、はや30年以上。黎明期から始めたファン雑誌でのライター活動も20年を超え、このままずるずると続けるしかないなと(やっと)覚悟を決める。ファン側の立ち位置にこだわるが故に副収入は一切ないが、なけなしの財布から年1回のマカオ旅行も継続中。メールアドレス:kusazo@yahoo.co.jp

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