「パチンコ店買い取ってみた」のお店が休業でファン殺到

2018.02.13 / ホール

「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ」
昔ながらの名調子、マイクを握るのは埼玉県のパチンコホール「幸手チャレンジャー」を経営するオーナーのひげ紳士(ハンドルネーム・46)氏だ。

1月31日、休業することになった店内にはあふれんばかりのファンの姿があった。15時までは通常通りの営業を行い、一旦休憩をはさみ16時からは無料パチンコとして開放。パチンコ156台、パチスロ79台、合計235台に対し、並んだファンの数は250名以上。そのほとんどが通常営業から来店し、そのまま残って無料パチンコを楽しんでいた。

30年近くホールで働いているひげ紳士氏が、地場の中堅チェーンの役員を辞めて幸手チャレンジャーのオーナーになったのは5年前のこと。本当は業界を離れようと考えていたが、「なにか面白いことができそうだ」と、知り合いだった前の経営者からこのホールを譲り受けた。

昭和から平成へと時代の変遷期にグランドオープンした当時のままの内外装や設備は、古きよき時代のパチンコ屋そのもの。最新ホールにはない懐かしさに「普通のホールみたいなことはやりたくない、大手さんではできないゲリラ戦が仕掛けられそうだと考えたんですね」というのが、オーナーをやろうと思ったきっかけとのこと。レトロ感こそひげ紳士にとっての武器であり、だからこそ一文字切れたネオンサインもあえてそのままにしている。そして5年前からほとんど入れ替えていない設置機種も、「古い機械にはファンがいますからね」と大事に大事に使い続けてきた。

「ファンが増えたのは、2年半くらい前に始めた動画配信ですね。こんなホールがあるんだということを多くの人に知ってほしくて」と、ハンドルネーム「ひげ紳士」としてYouTuberデビュー。「パチンコ店買い取ってみた」というチャンネルでは店の紹介だけでなく、ひげ紳士として実戦を行うなどのファン目線の動画、また店の売上げを公開するという経営者目線の動画と、まさに自身をキャラクターとして表も裏も見せた。売上げは4倍近くにまで高まり、ファンの間でひげ紳士という名前も一気に有名になった。

その結果、地方からもファンが来店するようになったうえ、差し入れで休憩コーナーはパチンコ・パチスログッズであふれかえるようになっていった。オーナーという立場でありながら「経費を抑えなければなりませんから」と表回りをするひげ紳士氏は、ファンとのコミュニケーションをいとわず、その真摯な対応から懐かしい機械を打ちたいという目的のファンだけではなく、ひげ紳士氏と話したいというファンも急増。オーナーとファンが笑顔で話をする光景は幸手チャレンジャーの名物であり、大手ではできないことをやろうというひげ紳士氏の理想が形になった姿であるともいえるだろう。

「休業は本当に無念ですよ。でも、これだけみなし機があったら仕方ありませんから」。5年前にオーナーになった時からほとんど入れ替えを行わなかった設置機種は、これまで幸手チャレンジャーの大きなセールスポイントだった。しかし規則改正という荒波は、避けられない現実としてひげ紳士を襲うことになってしまう。

1月31日。15時で通常営業を終え、カウンターで景品交換を行うひげ紳士氏に来店したファンから次々と「再開を待っています」との声がかけられていた。「ホントにありがたいです。改めてファンから支えられていると実感できましたし、再開へむけての力になりました」とひげ紳士氏が話すように、みなし機撤去は「廃業」ではなくあくまで「休業」に過ぎない。もちろん廃業という選択も頭の片隅をよぎったかもしれないが、ファンの思いを真摯に受け止めたひげ紳士氏は、一旦の休業という道を選んだ。今後、設置台数を縮小しながらも機種を大幅に入れ替え、春のリニューアルオープンを目指している。

「どのような形になるかはまだ確定していませんが、ファンが集まる場としての幸手チャレンジャーという形は変えるつもりはありません」と最後に語り、再びマイクパフォーマンスへ戻ったひげ紳士氏。その姿を見つけたファンからは、惜しむことのない激励の声がかけられていた。

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