清原賢二技術委員長と渡辺圭市技術担当理事が語る「通常時フラグ」と「4カテゴリ」/【前半:通常時フラグ編】
2026.10.16 / メーカーパチンコの通常時に新たな期待感を生み出す「通常時フラグ」。日工組が打ち出した新たな仕組みは、リーチ演出に頼りがちな通常時の単調さを変えられるのか。フラグの発動条件や具体的なゲーム性、対応機の登場時期まで、日工組の清原賢二技術委員長へのインタビューを中心に、その可能性を探った。
通常時の単調さを変える「フラグ」導入の狙い
通常時フラグの仕組みを理解する前に押さえておきたいのが、なぜ日工組がこの考え方を取り入れたのかという点である。その問いを向けると、清原技術委員長から返ってきた答えは明快だった。
「通常時フラグは、何よりも〝通常時の単調さを解消するため〟に導入しました。昨今のニーズに合わせて、ある程度まとまった出玉を実現しようとすると、どうしても大当り確率は遠くなりますよね。これまでは『当たるかもしれない』という期待感をリーチ演出などで補ってきましたが、演出だけに頼り続けるにも限界があります。そこで、通常時の中に実際に大当りへ近づく状態を適度に挟み、ちょうど良い刺激や感情の起伏を生み出すことで、単調さを払拭していこうと考えました。それを実現するための仕組みが通常時フラグです」
もっとも、今後すべてのパチンコ機が通常時フラグを搭載するわけではない。
「もちろん、今後のパチンコが必ずこの通常時フラグを使わなければならないわけではありません。シンプルな確変や時短だけで構成する機種も当然出てくるでしょう。そのあたりは、プレイヤーの皆さんが自分の好みに合わせて選び、楽しんでいただければと思っています」
パチンコは、パチスロに比べて仕組みが簡潔で、とっつきやすい点も魅力の一つだ。一方で、初当りまでの通常時が長く、そこに明確な変化が乏しいという課題もある。
一度RUSHやLTに入れば大きなリターンが期待できる現在の機種構成だからこそ、「そこに至るまでの通常時をどう面白くするか」。通常時フラグは、その課題に対する一つの答えといえそうだ。
通常時の中に状態をつくる「通常時フラグ」の基本構造
では、通常時フラグとは具体的にどのようなものなのか。清原技術委員長に分かりやすく説明してもらった。
「まず対象となるのは、名前のとおり通常時だけです。大当り中や右打ち中に影響するものではありません。その通常時の中で、フラグが立つ条件をあらかじめ設定しておきます。例えば『通常回転が100回転に到達したら』といったような条件をプレイヤーが満たすと、機械内部の状態が変化し、同じ通常時でありながら大当りに近づいた状態をつくることができる。そうした『いつもとは違う通常時』を設け、従来のパチンコにはなかったゲーム性を提供できるようにするのが、今回の通常時フラグの役割です」
ただし、フラグの条件は何でも自由に設定できるわけではなく、一定の制約が設けられている。
条件を無制限に積み上げれば、プレイヤーにとっては現在どの状態にいるのか分からないほど複雑になり、かえって混乱を招きかねないからだ。なお、何も作動していない通常時とは別に、フラグが作動した通常時の状態は「最大9つ」まで持つことができるという。ここに、従来にはなかった設計余地の大きさが表れている。
メーカー次第で姿を変える通常時フラグの具体的な使い方
ここからが、通常時フラグの面白さを理解するうえでの核心になる。実際にどのようなゲーム性を実現できるのか。具体例を挙げてもらった。
「具体的な使い方としては、例えばフラグ1が作動している状態をチャンスゾーンにして、その間に大当りすれば100%でRUSHに突入する、といった設計は可能です。また、フラグ2では、特定のハズレ変動、例えば液晶で『246』が表示されるような変動を一定回数重ねることで、大当りしやすいチャンスゾーンへ移行させることもできます。いわば、アツいリーチを外した後の〝お詫び〟のような使い方ですね」
さらに、こう続ける。
「ただ、その先の応用については本当に未知数です。実際に機械を作るのは各メーカーであり、プロフェッショナルである開発陣が通常時フラグにどんな条件を設定し、どんなバランスに仕上げるかによって、パチンコのゲーム性はガラリと変わるポテンシャルがあります。日工組としては、ルールを整備したうえで、自由度の高い受け皿を『フラグ』という形で用意した、という感覚に近いですね」
つまり、通常時フラグは「こういう機械を作るための機能」と用途が決められているわけではない。日工組が用意したのは、新たなゲーム性を組み立てるための土台であり、その上に何を築くかはメーカーの発想次第だ。
過去を振り返れば、パチンコにも通常時に変化を持たせた機種は存在した。
藤商事の『CRヴァンヘルシング』やサンセイR&Dの『eパリピ孔明』では、単なる見せかけの演出ではなく、実際に大当りへ近づくチャンスルートがゲームフローに組み込まれていた。
また、特定のハズレ変動を周期的に発生させる考え方は、ビスティの『e東京喰種 超デカ超一撃ver.』でも採用され、通常時の倦怠感を和らげる工夫となっている。
こうした仕組みを、より自然に、しかも設計上の選択肢として組み込みやすくするのが通常時フラグの強みといえる。
ここから先は想像を含むが、可能性を考えるだけでも興味深い。
例えば、フラグ1で「大当りしやすいチャンスゾーン」をつくり、フラグ2で「その状態中に当たればLT最上位へ直行」という役割を持たせれば、パチスロにおける自力突破型の上位特化ゾーンを思わせるゲーム性も考えられる。
さらに、特定変動を規定回数成立させることで次のチャンスゾーンへ移行するなど、通常時の中で期待区間が次々と訪れる構成も想像できる。もちろん、実際にどこまで組み合わせられるか、どのような出玉設計が可能かは試験やルールの範囲内で決まる。
重要なのは、出玉性能そのものを単純に引き上げることではなく、同じ性能の枠内で〝どう期待させ、どう遊ばせるか〟の選択肢が増える点だ。
「フラグ」という呼び名はなぜ採用されたのか
一方で、「フラグ」という名称には少し違和感を覚える人もいるだろう。実際の働きを聞くと、むしろ「モード」や「状態」に近い印象もある。なぜ、あえてフラグという呼び方を採用したのか。その由来を聞いた。
清原技術委員長はこう話す。
「例えば『アツいリーチを3回外したらチャンスゾーンへ入る』という使い方をするとします。この場合、内部ではアツいリーチを外した回数をカウントしていて、3回目に到達すると『アツいリーチのカウントが3回に達した』というフラグが立つ。技術的にはそういう考え方になりますので、『フラグ』と呼んでも差し支えないだろうという判断です」
ただし、「確率変動」のように厳密に定義された用語ではないという。
「ですから、ファンの皆さんが別の呼び方をしても構いませんし、それこそ業界誌や専門誌の方々が、より万人に伝わりやすい表現を生み出していただいてもいいと思っています」
名称を日工組が強く固定するのではなく、実際に市場へ出た後の広がり方も楽しんでほしいという姿勢だ。象徴的なヒット機が登場すれば、その機種名を冠した「○○タイプ」という呼び方が広がる可能性もあるだろう。
では、通常時フラグ対応機は今後どの程度のペースで市場へ出てくるのか。現時点で見えている導入スケジュールについて聞いた。
清原技術委員長「まず、通常時フラグを実装した『e牙狼13 ハガネを継ぐ者』と『eゴジラ対エヴァンゲリオン~WIND BURST~』が順調に進めば、年内の12月から設置されていく見込みです。その先については現時点では未定ですね。実機の開発にはどうしても時間がかかりますし、通常時フラグに対する市場の反応を見ながら修正や対応を重ねることも考えられます。そう考えると、来年の夏あたりから徐々に加速してくるのではないでしょうか。各メーカーの頑張りに期待しています」
一般に、液晶演出を搭載したデジパチは企画から市場投入まで1〜2年程度を要するとされる。通常時フラグを企画初期から前提に据えた機種が本格的にそろうまでには、相応の時間が必要だろう。
しかも、自由度が高い仕組みだからこそ、単に搭載するだけではなく「何に使うか」「どこまで分かりやすくするか」という試行錯誤も欠かせない。
普及のスピードだけを追うより、メーカーごとに異なる回答がどのような形で現れるかを見ることの方が重要になりそうだ。
※【後編】4カテゴリ編へ続く
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