「ME TOKYO」の新調査機関が明かす 「Z世代女子」の感情データ

2026.05.26 / ホール

パチンコが若い女性から選ばれない理由も判明!?

マルハン東日本カンパニーが展開するアミューズメント施設「ME TOKYO」から、Z世代女性の感情や消費傾向を分析する「ME TOKYO EMOTION RESEARCH」が誕生した。開業から約3年で累計700万人超を集めた同施設が蓄積してきた〝感情データ〟は、パチンコ業界が長年抱えてきた若年女性の課題にも、鮮明な光を当てている。


3年・700万人が証明した 女性が集まる〝場〟の力

マルハン東日本カンパニーが新宿に「ME TOKYO」の1号店を開いたのは2022年12月。パチンコホールの跡地に誕生したこの施設は、クレーンゲームやプリントシール機、コスプレレンタルを組み合わせた体験型アミューズメントだ。その後、2024年8月に池袋、同年10月には期間限定で渋谷にも出店し、累計来場者数は700万人を超えた。

マルハン東日本カンパニーが展開するアミューズメント施設でクレーンゲームやプリントシール機、コスプレレンタルなどを行う(※写真は新宿店)。

注目すべきはその客層だ。来場者の約75%を女性が占め、いわゆる〝アラウンド20〟と呼ばれる24歳以下が約60%を占める。パチンコホールが長年取り込めずにいた層が、ここには自然な形で集まっている。この事実を土台に、同施設は新たなリサーチ機関「ME「TOKYO」EMOTION RESEARCH」(以下、MTER)を立ち上げた。

店舗運営を含む事業を統括しているL&A営業部部長の高原安未氏はその狙いをこう語る。

「お客さまたちの〝声にならない声〟、空気感というものが、まさにこの時代を表すものになっていくんじゃないかと感じました。その声を形にして発信することで、感情のスイッチを押して世界をもっと面白くしていきたいという思いを、場(施設)以外の形でも広げることができると考えたんです」 

ME TOKYO運営を担当するL&A営業部部長の高原安未氏。今回のアンケート結果により「Z世代女子の感情データが鮮明になった」と言い、今後の継続調査にも意欲を示した。

2026年2月、新宿店の来館顧客を対象に実施したアンケートは、わずか3日間で701件の有効回答を集めた。

この「場」が持つ集客力と顧客の質こそが、リサーチ機関としての最大の強みだといえるだろう。


4年前に終わっていた 「映え」の時代

今回、同社が発表した調査が描き出したZ世代女性の姿は、従来のイメージとは少し異なる。

2026年の時代のムードについて尋ねた設問では、74%が「攻め・チャレンジ」を選び、「守り・安定」の26%を大きく上回った。ムードを形成するキーワードの上位は〝ワクワク感〟(35.2%)と〝解放感〟(24.8%)。閉塞感を打ち破り、ポジティブに発散できるエネルギーをこの世代は求めている。

2026年3月に公開されたME TOKYO EMOTION RESEARCHによる来店顧客アンケート分析報告書の一部。店舗来場のコア層である18歳〜24歳の女性をターゲットにした感情にまつわる質問への回答をまとめている。

ただし、消費行動は現実的だ。貯金意識があると答えた割合は63.8%にのぼり、気分の高揚と財布の慎重さが共存している。消費の優先順位はファッション(55.3%)、美容(39.7%)、推し活(32.4%)の順。また、59%が「モノよりも体験にお金を使いたい」と回答しており、コト・トキ消費への傾倒が鮮明だ。高原氏はこの傾向を「衣装を買って満足するというよりも、着てお友達と動画を撮る、TikTokでダンスをして、その動画が唯一無二になっている。それがまさに体験という意味だと思います」と分析する。

SNSの価値観にも大きな変化が起きている。コンテンツで重視することとして「共感」を挙げた回答者は36.9%、「リアル」が25.4%にのぼり、かつての〝映え重視〟から軸が移っていることが数字として示された。

「映えが意識されていたのは、正直もう4年前ぐらいのこと。今は〝なんかいい、かわいい〟と他者にも思ってもらえることの方が大事で、うちの新宿店の何の変哲もない階段に女の子が佇んでいる姿がSNSで投稿され、それが共感を呼ぶ。エモいという感覚に近いかもしれません」と高原氏は言う。

調査ではZ世代の言語感覚を映す結果も出た。「流行りそうな言葉」の自由回答で1位になったのが「滅(めつ)」。「好きすぎて死ぬ」という強い感情を漢字一文字に圧縮したこの言葉は、ヒット曲よりも先にZ世代の日常会話の中で生まれていたという。

若い女性が考える流行りそうなワード1位になったのは「滅」。この他にも「メロい」や「爆裂」など、感情を表現する言葉が複数ランクインしている。

「彼女たちって言語の意味よりも〝音感〟や〝画の強さ〟を重視する。うまく言語化できない感情を一言で表すのが本当に上手だなと、勉強になりました」と高原氏は語る。

こうした〝感情の表現の仕方〟や〝共感重視の価値観〟は、エンターテインメントの受け取られ方にも直結する。

では、この世代にとって、パチンコはどのように映っているのか。機種名やキャッチコピーにおいても、長い説明文よりも「一瞬で刺さる強いビジュアル」が響く世代であることは、ホール側のコンテンツ発信を考えるうえでも押さえておきたい視点だ。


黄色を選んだ理由 ピンクにしなかった理由

ME TOKYOが既存のゲームセンターともっとも異なるのは、「誰かをターゲットにしている空気を出さない」という設計思想だ。来場者の約75%が女性でありながら、ブランドカラーに黄色を選んだのはその象徴といえる。

「女性を本当に狙うならピンクにすればよかったかもしれませんが、それは違う。女性カモンとピンクピンクにされても、多分女性はターゲットにされていると感じて嫌なんですよ。女性って、女性扱いされたくない生き物でもあるので」と高原氏は語る。

男女ともにドライヤーやヘアアイロンを備えたジェンダーレスのトイレ、過度な装飾を排した余白のある内装。こうした細部の積み重ねが、特定の誰かを狙っていない空気を生み出している。  その姿勢が女性に伝わり、3階のプリントシール・コスプレレンタルフロアが施設の象徴的な場所へと育った。開業から2.5年目ごろから口コミで認知が広がり、昨年のハロウィンには午前10時のオープン前に200人以上が店頭に並ぶほどの盛況ぶりとなった。

「お客さま自らが拡散を続けてくださって、お客さまがお客さまを呼ぶ状態になっていきました」(高原氏)。

こうした自然な拡散の裏側には、SNSへの独特な向き合い方がある。ME TOKYOは投稿を促す派手な仕掛けをほとんど設けていない。意識してやっていることはただひとつ、お客さまの投稿を丁寧に探し出してリポストするという地道な活動だ。

「当初はハッシュタグも何もついていないので探すのが必死でしたが、見つけてリポストすることを繰り返していくうちに、だんだん投稿が増えてきた。お店の人が気づいてくれたという感覚が、嫌味のない拡散につながっていると思います」(高原氏)。

強制しない、でも見ている。その姿勢がZ世代の自己承認欲求と噛み合い、自然な口コミの連鎖を生み出している。


0.1秒の壁〟を越えた先に 感情が動く

ME TOKYOという施設において、体験設計の核心として高原氏が挙げるのが〝0.1秒の壁〟という概念だ。

「入った瞬間の0.1秒ぐらいで、彼女たちは自分の居場所かどうかを感じ取っています。言葉にも態度にも出さないんですが、なんとなく嫌だったらすっと出ていく。その壁を越えて、〝ここは私の居場所っぽい〟と思ってもらう。それが一番の肝です」。

「ここは私の場所」という感覚を生み出すために、スタッフが日々「彼女たちがダサいと感じるもの」を排除し続ける。こうした地道な活動の積み重ねが、ME TOKYOの空気を作っているという。


パチンコが女性に 選ばれるために何が必要か

パチンコ業界はここ数年、Z世代の若者、とりわけ若い女性の取り込みに腐心してきた。しかし成果は限定的なままだ。本来、パチンコ・パチスロも感情が動く娯楽のひとつだ。大当りへの期待、演出中の緊張、当否が決まる瞬間の高揚や落胆—。遊技経験者ならその感情の振れ幅を知っている。しかしその体験価値が、未経験の若年層にはほとんど伝わっていない。感情が動く娯楽であることが認知されていないまま、入口で敬遠されているのが現状だ。MTERが蓄積する感情データは、そうしたパチンコ業界が抱える構造的な課題をも映し出す。高原氏はその核心をこう言語化する。

「パチンコが感情の動くものだということを、多分多くの若い女性は理解していないと思うんです。外から見ると無表情で、何をしているか分かりづらい。音がうるさかったり、台が詰め詰めで隣との距離が近かったり。まだまだ改善できるところがたくさんあるにも関わらず、何かと理由をつけてやれていないことが多いのがパチンコ業界だと思っています。まだまだ変われますし、打つ手はあるはずなんです」

若い女性に選ばれる施設に必要な要素として高原氏が挙げるのは、まず「入りやすさ」だ。好きなIPキャラクターや推しとの感情的な接点が生まれるのは、足を踏み入れてもらった先の話だからだ。そしてひとたび入ってもらえれば、あとは感情をどう動かすかの設計次第だと高原氏は言う。

「感情が動くかどうか、それだけですね。ポジティブな感情が最終的に勝つように設計すること。負があるからこそ(景品が)取れた時に嬉しい。そのバランスが重要です」。

これはクレーンゲームの話ではあるが、同時にパチンコの本質ともいえるのではないだろうか。

もともと若い女性をターゲットにした店舗というわけではなかったが、結果として、若い女性たちから支持を集めることになったME TOKYO。若い女性を取り込みたいパチンコ業界も見習うべきところがあるはずだ。

MTERは今後、自主調査の継続とともに、外部企業からのリサーチ受託も想定している。3日間で700名超のコアな声を集められる「場」を持つ強みを生かし、若年女性の感情データを必要とする企業のニーズに応えていく考えだ。

「世の中でこの時代の空気をつかみづらいと思っている方々のお役に立てれば。そこが伝わることによって、若者たちがより過ごしやすい場所が増えていけばいいなという思いがあります」(高原氏)。

今回の調査が実施されたのは新宿店のみだが、高原氏は「池袋で取ると結果が気持ち変わるかもしれない」と言う。

こうした調査から得た知見はすぐさま店舗サービスへの反映も検討していく方針だ。「お客さまってこんなの求めてるんだっていうところも、一つのきっかけにしながら、そこを掘ってみる、研究してみるっていうことを積極的に進めるべきかなと思っています」と高原氏は語る。

若い女性をどう集客するか-その答えを長年模索してきたパチンコ業界にとって、MTERが蓄積するZ世代女性の感情データは、ひとつの具体的な手がかりになり得るかもしれない。リサーチを依頼するという選択肢も含め、この調査機関の存在は業界にとって注目に値する。

またME TOKYOは今後、東京以外の国内主要都市への出店を進めながら、将来的な海外展開も視野に入れている。

「誰から見ても一等地という場所にこだわりを持って、博多、札幌など誰もが知る真ん中のところへの出店を検討しています。日本の主要都市にあるブランドとして認知されてからでないと、海外に出る意味はないと思っていますので、まずは足場を固めながら、世界からお声がかかればいつでも行けるように段取りを進めていきたいです」(高原氏)

ME TOKYOが今後、全国主要都市や海外進出を実現すれば、より多くの感情データが蓄積できるようになるはず。調査の厚みが増すほど、その知見はより精度の高いものになっていくだろう。

ME TOKYOという「場」だからこそ集まるリアルな声が、施設運営の改善にとどまらず、パチンコ業界が若年女性と向き合う上での道標になる日も、そう遠くはないかもしれない。


取材協力

マルハン東日本カンパニーL&A営業部部長 高原安未氏:店舗経験、新卒採用、人事企画を経て、2021年6月よりL&A営業部部長に就任。新文芸坐のリニューアルやME TOKYO立ち上げなど、新しい発想で事業を躍進中。

 

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