ゴープラ朝川社長が描く、 〝パチンコ文化〟を 再設計する挑戦

2026.03.24 / ホール

パチンコ業界は、長期的なユーザー減少という課題に直面している。その中で、あえて「1円パチンコ専門」という道を選び、しかもそれを「攻めの戦略」として磨き続けている企業がある。低貸し専門店「ゴープラ」を展開する株式会社USEIの朝川康誠社長に話を聞いた。

 

低玉は「価格戦略」ではない。「遊び方のウイング」を広げる選択

なぜ、1円パチンコ専門というポジションを貫くのか。

「一言で言えば、〝パチンコ文化の可能性〟を信じているからです」

朝川社長はそう切り出す。

勝ち負けの遊技としてではなく、日本が生んだエンタメとして、次の世代へどう手渡すか。

インタビューを通じて浮かび上がったのは、低玉を安い遊びとしてではなく、パチンコというコンテンツの届け方を再設計する発想だった。 「新規開店は、開けた瞬間がゴールじゃない。うちにとっては、そこから1年間がプレオープンなのです」

新店は「1年がかりのプレオープン」。4円はライバルではなく「戦友」。そして、あえて「逃げ道を断つ」経営。そんな朝川社長の象徴的な言葉をたどりながら、その考え方をひも解く。

これまでの業界は、「勝つか負けるか」というギャンブル性に偏りすぎていたのではないか。結果として、ついてこられないユーザーが増え、遊技人口が減っていった。——それが朝川氏の見立てだ。だからこそ、その入口を広げたいという。

「遊び方を色々と提供するのが業界側の役割だと思っています。それをユーザーがどう受け取って遊びにするかを大事にしたい」

低玉は〝勝負の縮小版〟ではない。

パチンコやパチスロは、漫画やアニメ、ゲームと並ぶ日本発の「クールコンテンツ」だと朝川社長は言う。メーカーが作り上げた演出や機械の特性は、本来、じっくり味わう素材でもある。

「遊びのウイング(幅)を広げたいんです。高額な勝負としてだけでなく、演出をゆっくり見たり、仲間と遊ぶためのクッション材にしたり。低価格ならまず触れてもらえる。そこから先は、お客さまの自由な選択肢であっていい」

そしてもう一つ、低玉には大きな意味がある。

「10万、20万と負けては遊びと言えません。でも1パチなら、『今日は負けたよ』と笑って言える範囲に収められます」

それは単にリスクを下げるという話ではない。

「笑って帰れる遊び」として成立させることが、文化を長く残す条件だという考え方だ。

「1円では不要なサービスやコストが必ずある。それを一つずつ削減していくんです」

 

半径2〜2.5kmの「範囲の経済」。新店は「1年がかりのプレオープン」

ゴープラのビジネスモデルは、広域集客型ではない。

「私たちは、半径2kmから2.5kmの範囲の経済でやっています」

4円パチンコであれば、「勝ちやすさ」を求めて遠方から客が来る。しかし1円パチンコには、交通費をかけてまで遠征するインセンティブがない。だからこそ、地域住民に日常の選択肢として認められる必要がある。

しかし、オープン当初の現実は厳しい。

「最初はね、地域の方から〝何か怪しいものが来た〟という偏見で見られます(笑)」

朝川社長が続ける。

「だから実質のオープンは1年後だと考えています。最初の1年間はプレオープンなのです」

この出店哲学を、彼は「果樹園」に例える。

「畑を耕して、肥料をやって、水をまいて、種を植える。実りが出るまで時間がかかる。1パチの店づくりも同じです」

最初の来店は様子見。斜に構えた目で店を測りに来る。そこから月1回が2回、3回へと変わるまで、半年〜1年はかかる。だから、最初の1年は「プレオープン」。短期の集客ではなく、信頼の土を耕す期間だという。

「地域の方と一緒に畑を耕していく感覚です。『味見はいかがですか?』って対話しながら、地域に合う店に育てていくんです」

目指すのは、派手な営業ではない。

1年かけて、「少なくとも敵ではない」「あってもいいお店だ」と認めてもらうこと。その地点に到達して初めて、本当のスタートラインに立つという。

売上は4分の1だからこそ「因数分解」と実験を続ける

1円パチンコは、4円の4分の1の売上構造だ。しかし家賃も人件費も機械代も変わらない。

「当然、不安はありますし、常に工夫が必要です」

そこで朝川社長が使うのが「因数分解」という言葉だ。

「パチンコビジネスを徹底的に因数分解します。4円では必要でも、1円では不要なサービスやコストが必ずある。それを一つずつ消し込み(削減)していくんです」

しかも、それは完成形ではない。「今でもずっと実験中です」

その消し込みを支えるのがAIや機械化だ。「可能な限り人に頼らない運営」を追求し、浮いたリソースを地域のニーズの深掘りに回す。だが、合理化だけではない。意思決定の軸は、全国的なマスデータではなく「半径2kmのデータ」である。

「全国的には不人気でも、その地域の特定のお客さまが熱心に打って稼働が上がっているなら、それは残すべき台なんです」

範囲の経済とは、スローガンではなく、現場での判断基準そのものなのだ。

4円はライバルではない。本当の敵は「忘れ去られること」

ゴープラはしばしば「4円の客を奪うライバル」として見られる。しかし朝川社長は、それを否定する。

「今日どうしても伝えたいのは、4円店舗がライバルではないということです。本当のライバルは〝他の産業〟なのです」

ここで落語家・六代目三遊亭円楽の言葉を引用した。

「落語家の誰が好きかって言われているうちはいい。でも観る価値がないと言われたら終わり。落語なんて明日なくなったって誰も困らないんだ。それを悟られたらお終いなんだ」

パチンコも同じ、と朝川社長は言う。

「一番怖いのは、他産業にユーザーが流れて『生活必需ではない文化なんだから、パチンコなんて意味がない』と思われることです」

だから4円店は敵ではない。4円が「高級百貨店」なら、1円は「100円ショップ」。価格帯が違うだけで、業界のウイングを広げる戦友なのだという。

「逃げ道がない」その覚悟が〝強み〟になる

ゴープラのもう一つの特徴は、4円という「逃げ道」をあえて作らないことだ。

「何かあったら4円に頼る、という選択肢を断っています。まさに背水の陣ですね」

逃げ道がないからこそ、1円で成立させるための知恵が磨かれ、工夫が生まれる。因数分解も、AI活用も、地域密着も、すべてはその覚悟から生まれている。

そして、この姿勢は採用にも影響しているという。

「『パチンコは好きだけど、お客さまが負けすぎるのを見るのは辛い』という人たちが、うちのビジョンに共感して入社してくれます」

パチンコが好きでホールに就職したものの、高い射幸性を追い求める営業に違和感を持った人材が、1円パチンコを通じで新しい価値観を見出す。

つまり低玉は、顧客のためだけでなく、働く側が誇れる娯楽設計でもある。

写真左/1パチ専門チェーン店のゴープラは最新の人気機種を含め機種ぞろえが豊富。ユーザー層も高齢層から若年層まで幅広い。写真右/「1パチなのにファーストクラス」を掲げる新店舗・深谷店。昨年の12月下旬のオープンから約2カ月。現在は地域の人と一緒に育成している最中だ。

 

深谷店という挑戦「1円パチンコのファーストクラス」

2025年12月下旬、ゴープラの10店舗目となる低貸専門店・深谷店(総台数555台)がグランドオープンした。プレオープンの3日間は無料パチンコ・パチスロを実施。深谷市は2021年に亡くなった先代の生まれた場所でもあり、その縁のある土地で新たな挑戦が始まった。

「地域の方々には〝1円パチンコのファーストクラス〟という伝え方をしました」

低価格=LCC(格安航空会社)のイメージを逆手に取り、あえてギャップのあるキャッチフレーズを打ち出した。

最大級の大空間を用意し、体験価値に資源を振る。ミスマッチが記憶に残ると考えたからだ。

それは単なる店舗コンセプトではない。低玉貸でも「上質」を提供できるという宣言でもある。

文化を縮小させないために「まだ見ぬパチンコの形」へ

未来について問うと、朝川社長は断言よりも「問い」を語る。

「まだ見ぬパチンコがあるのではないか、と悩みながら実験し続ける方が面白いのではないでしょうか」

ユニクロがファストファッションという新しい文化を作ったように、70年以上の歴史を持つパチンコにも、別の形があっていいはずだという。

「これからもお客さまというパートナーと一緒に畑を耕し、『味見はいかがでしたか?』と常に対話しながら、新しい形を模索し続けたい」

低玉専門は、守りの選択ではない。

それは、勝負の強度を下げることでコンテンツの幅を広げ、体験人口を増やし、文化を忘れ去られない存在にするための再設計だ。

半径2kmの畑を耕しながら、業界全体のウイングを広げる。その試みは地味で、時間がかかる。だが、その積み重ねこそが「文化を残す」という営みなのかもしれない。

朝川社長の言葉は、パチンコを「射幸性の産業」としてではなく、「日本発のエンターテインメント」としてどう未来へ渡すかという問いを、改めて投げかけていた。

PROFILE/朝川康誠(あさかわ・やすなり)

新卒後、銀行本店に勤務するも保守的な体質に失望し退職。その後、オーストラリアで生活していたが、父親に請われて帰国。パチンコホール大手某社へ就職し、パチンコビジネスの基礎を学ぶ。その後、父親の創業した株式会社USEIへ。2008年より代表取締役に就任、現在に至る。2012年に立教大学大学院でMBA取得。

 

 

 

 

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