1企業1VTuberの時代到来!? パチンコ業界×VTuberの可能性
2026.03.24 / ホールホールの情報発信は、いま転換点を迎えている。
折込広告、WEB、SNS運用—集客導線が多様化する中、新たな接点として浮上しているのが「VTuber」だ。先日ついにパチンコ業界からも、本格的なVTuberグループが誕生した。これは一過性の話題作りなのか。それとも、業界のコミュニケーション構造を変える兆しなのか。
本特集では、業界初の取り組みを軸に、「1企業1VTuber時代」の可能性を探る。
VTuber市場の最前線
なぜ今「VTuber」なのか
VTuber市場は、この数年で急速に拡大している。
矢野経済研究所の調査によれば、国内VTuber市場は2020年度の144億円から2023年度には約800億円へと急成長。さらに2025年度には1260億円規模に達する見込みとされている。
わずか数年で数倍規模に拡大したこの市場は、すでに日本のエンターテインメント産業の中でも無視できない存在になりつつあるのだ。
背景にあるのは、配信文化の定着だ。
YouTubeや配信プラットフォームの普及、スマートフォン視聴の一般化によって、「配信者とリアルタイムで交流する」というエンターテインメントが日常化した。
VTuberは、アニメのようなキャラクター性と、配信者としてのインフルエンサー性を併せ持つ存在だ。グッズ販売、イベント、企業タイアップなど、IPビジネスとしての展開も広がっており、いまや企業マーケティングにおいても重要な存在になりつつある。
重要なのは、VTuberが単なる「キャラクター」ではないという点だ。
VTuberの大きな特徴として、双方向コミュニケーションが可能であり、ファンコミュニティの形成力が非常に高いことが挙げられる。
パチンコ業界はこれまで、「来店動機を作る広告」には長けていた。しかし、「日常接点を持つブランド発信」は十分だっただろうか。
もしかするとVTuberというコンテンツは、パチンコホールと顧客の関係性を〝常時接続型のコミュニケーション〟へと変える可能性を秘めているかもしれない。
今回は、先月デビューが発表され大きな話題となった、パチンコ業界では初となる3人組VTuberを手がけた「株式会社玉越」担当者へのインタビューを交えながら、その可能性を探っていきたい。
特別インタビュー
パチンコホール企業×VTuberの先駆け。
玉越が仕掛ける「VTuber事業」の真意とは?
愛知県内を中心に8店舗のパチンコホールを展開する「株式会社玉越」は、2025年8月にパチンコ・パチスロをテーマにしたバーチャルタレントを募集する「Tamakoshi VTuber Project」の開始を発表した。
同プロジェクトへの応募者数は120名にものぼり、高倍率となったオーディションを経て3名のバーチャルタレントが選出された。
そして2026年2月15日、オーディションを勝ち抜いた3名による、パチンコ業界では初となるVTuberグループ「ミラクルゲート(MiracleGate)」のデビューが発表され、大きな話題となった。
今回はそんな株式会社玉越のVTuber事業を担当する一之瀬修取締役に話を聞いた。(以下、インタビュー)
きっかけは「社内合宿」から
PiDEA編集部(以下、編):本日はお忙しい中ありがとうございます。最近、玉越さんがVTuberグループを手掛けるということで話題となっていますが、ぜひその背景を取材させていただきたいと思いお声がけしました。まずは、VTuber事業を立ち上げたきっかけから教えていただけますか。
一之瀬氏(以下、一之瀬):こちらこそ、ありがとうございます。そもそもは、広告宣伝の規制が厳しくなる中で、自分たちの活動をどう発信していくべきかという悩みから始まりました。
編:業界全体が直面している課題ですね。
一之瀬:はい。弊社では年に1回、幹部たちが名古屋を離れて「会社の未来について話をする」という合宿のような機会を設けています。そのディスカッションの中で、自社独自の他がやっていない新しい広告宣伝はできないかという話になりました。
編:その場でVTuberのアイデアが出たのですか?
一之瀬:そうなんです。ある店舗マネージャーが「VTuberとか面白くないですか?」と提案したのが最初の一歩でした。そこに社長も同席していて、「それ面白いね」と即決に近い形で話が進んだのが、このプロジェクトの始まりです。
広告規制の壁と「新規事業」へのシフト
編:VTuberという、新しいチャレンジを行うとなった時の社内での反応はいかがでしたか? 順風満帆だったのでしょうか。
一之瀬:いえ、最初はやはり「規制に引っかかるのではないか」というリスク面を心配する声が上がりました。昨今の広告宣伝規制において、実在しないキャラクターをどう扱うのか、来店取材などの既存の枠組みに当てはめようとすると多くの壁がありました。
編:難しい問題ですね。その壁をどう乗り越えたのでしょうか。
一之瀬:社内で議論を重ねていく中で、「パチンコ営業に直結させるのではなく、まったく新しい『VTuber事業』という形として立ち上げよう」とシフトチェンジしたんです。単なるホールの広告塔ではなく、一つの独立したエンターテインメント事業として、お客さまに楽しみを提供していく形を目指しました。
編:なるほど。ブランディングの強化や新規事業としての側面を強めたということですね。
一之瀬:その通りです。他のホールさんもパチンコ以外の事業を展開されていますが、私たちもその一環として、VTuber事業には可能性があると確信して進めました。
ターゲットは「スマホ世代」の若年層
編:VTuber事業の可能性を確信されている、ということですが、具体的なターゲットはどのあたりを設定されているのでしょうか。
一之瀬:世代でいうと10代や20代を中心とした、スマホを当たり前に使う世代です。パチンコ業界全体として若年層のユーザー離れが課題になっていますが、そんな若年層にVTuberを通じてまずはパチンコというものに触れる機会を作りたいと考えています。
編:業界全体のプラスになれば、という視点ですね。
一之瀬:はい。社長がよくおっしゃっているのですが、自社だけでなく業界全体が盛り上がるきっかけになれば嬉しいですね。
編:ユーザーに向けて、というよりは新規ユーザー獲得のため、という狙いの方が大きいということでしょうか。
一之瀬:そうですね。とは言っても、うちはパチンコ・パチスロをテーマとするVTuberたちなので、オーディションに応募していただいた方々全員、本当にパチンコ・パチスロへの愛と知識が深かったんです。実際に最終オーディションには私も参加したのですが、パチンコ会社で働いている私ですらも途中からついていけないくらい、とにかく皆さん詳しいんですよ(笑)。そんな中から選ばれた3名なので、パチンコ・パチスロユーザーが配信を見ても満足して楽しめる内容をお届けできるんじゃないかなと思っています。実際に現在コメントをいただいているフォロワーの方は、パチンコ・パチスロが好きな方も多いようです。パチンコ・パチスロの魅力を、ユーザーにもノンユーザーにも広くアプローチしていくのが狙いです。こうやって言うと少し欲張りのように聞こえるかもしれませんが、VTuberというコンテンツにはそれを叶えられるぐらいの可能性があると私たち考えています。
ファンとの結びつきと
未来の展望
編:立ち上げにあたっては、専門のパートナー企業とも組まれたとか。
一之瀬:そうなんです。しっかりとしたVTuberのエビデンスを持つ企業と協力しています。また、キャラクターのデザインもVTuber業界で有名な方にお願いして制作していただきました。やっぱり、パチンコ・パチスロ業界への新規ユーザー獲得も目的としているので、これからユーザーになっていただける可能性のある、元々VTuberを追っている層の人たちから「おっ」って思ってもらえるクオリティーを目指したいじゃないですか。そこはかなり気合いが入っています。
編:となると、ぶっちゃけた話……始動するにあたってかなり費用がかかったのではないですか。
一之瀬:実は案外そうでもないんです(笑)。例えば有名な方にデザインをお願いしたりですとか、もちろんお金がかかっているところもありますけど、始動だけで考えたらあとは機材(カメラ、マイク等)代くらいで、おそらく皆さんが想像するような膨大な費用感ではないのかな、と。
編:そうだったんですね! そういった点も含めて、今後他法人に向けてVTuber事業はおすすめできますか。
一之瀬:そうですね。YouTubeでもスーパーチャット(視聴者が配信者へ金銭を直接送る「投げ銭」機能)のランキングは軒並みVTuberに占拠されているくらい、VTuberの勢いは凄まじいですし、特にパチンコ系のVTuberというのはまだ少ないので、先行してスタートさせるメリットは大きいと思います。何より、VTuberのファンの方って、とても高い熱量を持っている方が多いんです。ファンとVTuberとの強い結びつきが生まれやすいので、遠方であっても構わず会いに来てくれたりですとか、推しに対して時間やお金、労力をかけていただける方が多いのではないかと感じております。やっぱり熱量の高いファンをたくさん獲得できるということは、ビジネス面で見ても、パチンコ業界への新規獲得という面で見ても相当メリットがあると思いますね。
編:昨今のパチンコ業界において、会社所属のインフルエンサーが、人気を獲得し独立していくことが度々話題になっていますが、VTuberを企業ブランディングとして運用するにあたり、独立などのリスクは考えていますか。
一之瀬:難しいですよね。ただ、VTuberのガワ(アバター、キャラクターデザイン)の権利は会社にありますので、もし「独立します」となっても持っていくことはできないよ、ということになっています。これは人によるインフルエンサーとの大きな違いですね。リスクという点でいうと、パチンコ・パチスロをテーマとしているので、ルールですとかそういったところの知識も身につけてもらえるように、本人たちにも講習を受けてもらったりなど、活動の継続性はとにかく大切にしています。
編:ありがとうございます。最後に今後のVTuber事業の展望を教えてください。
一之瀬:今はまだ配信活動がメインですが、将来的にはフォロワー数などの影響力を見ながら、ルールに沿ったかたちでイベントなども含めた幅広い活動を検討していきたいです。それから、今後事業として成功すれば、所属人数を増やしていく余地は十分にありますね。最終的な目標として、パチンコ業界のみに留まらず、弊社の拠点とする愛知・名古屋エリアを盛り上げる取り組みを、VTuberを活用して行っていけるくらいにまで成長できればと考えています。
●七穂 にじは(ななほ にじは)
座右の銘「勝つまで打てば勝ち!!」
好きな台「Pにゃんこ大戦争~多様性のネコ~M4」
●虹咲 きらり(にじさき きらり)
座右の銘「挑まぬものに、勝利無し!」
好きな台「スマスロ ゴッドイーターリザレクション」
●神玻璃 ぱいりん(かみはり ぱいりん)
座右の銘「今日の負けは明日の万枚」
好きな台「ハナハナとジャグラー」
1企業1VTuber時代は来るのか
人が辞める時代に、キャラクターを育てるという選択
多くの企業が現在直面している課題の一つが人材の流動化だ。人手不足や働き方の変化により、社員が長く同じ企業に勤め続けることは以前ほど当たり前ではなくなった。さらに、最近のパチンコホール企業では社内インフルエンサーとして数字を持った社員が、退社・独立を選択するケースが後を絶たない。現場スタッフや広報担当者が入れ替われば、企業の発信やブランドの継続性にも影響が出る。企業の〝顔〟となる存在を人に依存することは、これからの時代、決して安定した戦略とは言えないのかもしれない。
そうした環境の中で注目したいのが、キャラクターやIPを活用したコミュニケーションだ。VTuberはその象徴的な存在と言える。キャラクターは人とは異なり、異動や退職によっていなくなることはない。長期的に育てていくことで企業の象徴となり、ブランドの人格としてユーザーとの関係を築くことができるだろう。
実際、VTuberの世界ではキャラクターそのものがファンコミュニティーの中心となり、長い時間をかけて支持を集めていくケースが少なくない。ホール企業にとっては、短期的な広告施策とは異なり、時間をかけて価値を育てていくブランド資産のような存在だ。
もちろん、キャラクターを作ればすぐに成功するわけではない。継続的なコンテンツ制作やコミュニティーとの関係づくりが欠かせない。しかしそれでも、企業の個性を表現し、ユーザーとの接点を日常へと広げていく存在として、キャラクターやVTuberが持つ可能性は決して小さくないと言えるだろう。
人が辞める時代に、キャラクターを育てるという選択が、パチンコホール企業内で当たり前となる時代はそう遠くないのかもしれない。
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