スロッターたちの〝サードプレイス〟パチスロバーの魅力とは
2026.02.06 / その他メーカー主催イベント予選会場にも選出
可能性広がる「パチスロバー」が話題に
オーイズミが開催する「頃にスト選手権」(パチスロ最新作『うみねこのなく頃に2』のプロモーションの一環として、目押し力を競うユーザー参加型イベント)の予選会場に全国8箇所のパチンコ・パチスロバーが選ばれるなど、今話題の「パチスロバー」。ある一定の年代の人であれば、「パチスロバー」と聞けば、どこか胡散臭く、高額なギャンブルに興じる違法店をイメージするかもしれないが、目の前の光景はまるで違う。そこにあるのは、鉄火場の殺伐とした空気ではなく、スポーツバーのような健全な熱だ。
当然、ここには「景品交換」という概念はない。ギャンブルとしての機能を持たない、言わば「絶対に勝てない(リターンがない)パチスロ」に、なぜ多くの人が集まるのか。ホール営業が苦戦を強いられる昨今、この「景品交換なき繁盛」の裏側には、業界が見落としがちな「遊技の真価」が隠されているのではないか。
本稿では、なぜ今パチスロバーがスロッターたちの「サードプレイス」として選ばれているのか、その理由に迫ってみたい。
孤独な遊びから、共感する体験へ
なぜ今、パチスロバーなのか。
「好きなアニメコンテンツのパチスロ台が設置されている」、「昔懐かしい5号機や4号機が設置されている」。果たしてそれが理由なのか。
その背景をひも解くと、現代社会における消費マインドの劇的な変化が見えてくる。
©︎2006, 2010 広江礼威・小学館/BLACK LAGOON製作委員会 ©︎Spiky ©︎山田風太郎・せがわまさき・講談社/GONZO ©︎UNIVERSAL ENTERTAINMENT ©︎ELECO
キーワードは「コト消費」と「共感」
パチスロバーに訪れる人は20代~30代がメインだ。そして彼らは、モノを所有することよりも、その場限りの体験(コト)に価値を置くことを大事にする。またその体験をSNSやリアルな場で誰かとシェアし、「いいね」と言い合うことに喜びを感じる傾向が強い。彼らにとって、パチンコ・パチスロもまた、ギャンブル性を含んだ遊びである以前に、アニメやゲームと同じ「エンタメ・コンテンツ」なのだ。
しかし、既存のホール環境は、このニーズと逆行している側面がある。
通常のホールにおける遊技は、基本的に「お一人さま」だからである。隣の人がフリーズを引こうが、大連チャンしようが、そこにあるのは「羨望」か「嫉妬」だけ。会話が生まれることは稀であり、現代のホールは極めて孤独な遊び場(ときに戦場)と化している。「共感」を求める世代にとって、この殺伐とした空気は、あまり居心地が良いとは言えない。
しかしパチスロバーは、その「孤独」を排除する。もちろん一人でゆっくり楽しみたいという客層は一定数いるというが、それでも多くのお客さんにとって、「この演出あっつ~!」とか「そのビタ押し、痺れる~ぅ!」という仲間やスタッフの言葉が、何よりもの喜びだ。その一瞬の出来事に共感し、そして称賛してくれる。アルコールという潤滑油も手伝い、そこには一種の連帯感が生まれる。パチンコホールで押し殺していた感情を、ここでは自由に表現させることができるのだ。
また、「リスク回避志向」の高い現代人にとって、「安価」や「定額制(無料)」という安心感も大きな武器となる。
昨今のパチスロ機は投資スピードが速く、数万円が小1時間で溶けることも珍しくない。大当りの快感や見たい演出も見られず帰途に付くのも日常茶飯事。これはコスパにシビアな若者層にとっては高すぎるハードルだ。
しかし、多くのパチスロバーは「打ち放題」や「安価・定額制」といった料金体系を取っている。これは、「絶対に負けないギャンブル体験」であり、サブスクリプションに慣れた彼らにとって非常に心地よい「安価なレジャー」として機能している。金銭的リスクをきれいに排除したことで、純粋に大当たりの快感や演出を楽しむ余裕が生まれているのである。
【潜入取材】
パチスロバーを体験してみた
JR秋葉原駅の電気街口を出て、電脳アキバのメインストリートへ。可愛いメイドさんとアイラちゃんを横目に交差点を越えた先、お洒落なビルの9階に、そのお店はある。少し暗めな店内で、何よりも目に付くのが壁際でピカピカと光っているパチスロ機だ。
ここは「電脳シューティング&パチスロバーSENGOKU 193」。果たしてパチスロバーとは一体どんな場所なのか……。PiDEA編集部2名が実際にSENGOKUさんへお邪魔し、取材も兼ねてその魅力を体験してきた。
全日本学生遊技連盟アンバサダー ひなたさん
写真 右:
電脳シューティング&パチスロバーSENGOKU 193
店長 白井拓海さん
佐藤ちゃん:SENGOKUさんではシューティングゲームも楽しめるのが魅力的でした! パチスロ好きが集まるということもあって、ゲームにはなんとスロット「GOD」の要素を取り入れた特別モードも搭載。シューティングでもパチスロの演出が楽しめてテンションが上がりました♪
コミュニティーとコンテンツが牽引する新たな客層
特筆すべきは、客層の劇的な変化だ。
パチスロバーの店内には往年のパチスロファンである40代〜50代よりも、当時を知らないはずの20代~30の若者の姿が目立つ。
今回取材させていただいたSENGOKUの店長である白井さんによると、彼らの多くはパチスロ好きの友人同士で来店し、お酒を飲みながらの遊技することはもちろん、友人同士で隣り合い、同時にスタートして点数を競い合うなどといった普段パチンコホールではなかなか味わえないパチスロバーならではの遊び方を楽しんでいるという。友人同士でコミュニケーションをとりながら好きなパチスロ機を心ゆくまで楽しめるというのは、パチスロバーの最大の魅力といってもいいだろう。
また、1人で来店した場合でも、周りのお客さんが共通して「パチスロ好き」であることが入り口となって交流が生まれ、その日のうちに一緒にパチスロを打ったりお酒を飲んで盛り上がる仲へと発展するケースが多いという。
さらに、SENGOKUでは週末のみではなく、平日の夜にいたっても仕事終わりのサラリーマンで賑わうようだ。
彼らは1日頑張った自分へのご褒美として、お酒を飲みながらしっぽりとパチスロを楽しんだり、種類豊富なお酒やフードと、大人数でも楽しめるバーならではの利点から、飲み会終わりに二次会で利用するケースも多いのだとか。
また、SENGOKUのスタッフでもあり、全日本学生遊技連盟アンバサダーでもある、ひなたさんによると、来店目的の1つとしてスタッフとの交流を楽しみに来店するお客さんも多いという。これはひなたさんを含めSENGOKUではパチンコ・パチスロに精通したスタッフがそろっており、他の場所ではなかなか叶わない「パチスロの話題で盛り上がりたい」というお客さんのニーズに応えることができるのが大きな要因と言えるだろう。さらに接客の一環として、お客さんから声がかかれば、スタッフも一緒に店内で並び打ちをして盛り上げることもよくあるという。そういったパチスロバーならではの「パチスロ好きなスタッフ」による楽しませ方もお客さんの心をつかむ一手になっているのは確実だ。
規制やスペックの壁を超え
純粋にパチスロの楽しみたい若者たち
パチスロバーを訪れる若年層にとって、パチスロはギャンブル性のある遊びの対象である以前に、「推しのコンテンツ」だと言えるのではないだろうか。
「あの名シーンの演出を自力で出したい」、「この演出を、同じ熱量を持つ仲間と共有したい」。彼らはギャンブルをしに来ているのではない。愛するパチスロ機の世界観に浸り、語り合うために集っているのではないだろうか。
その光景は、パチンコ店というよりも、アニメの「コラボカフェ」や、eスポーツの「パブリックビューイング」の文脈に近い。ここにあるのは、射幸心よりも純粋な「パチスロ愛」や「コンテンツへ愛」だ。
パチスロバーは、規制やスペックの壁を超え、その愛を存分に発散できる、極めて現代的な受け皿として機能していると言えるのではないか。
パチスロバーは文化のリレーポイント
パチスロバーの流行は、パチンコ業界にとって脅威ではなく、むしろ希望だ。
それは、金銭のやり取りがなくとも、パチスロという遊技そのものに「人を熱狂させる本質的な面白さ」があることを証明しているからだ。
業界全体が縮小傾向にある中、話題機やかつての名機たちが廃棄されずに稼働し、そこで新たなコミュニティーが生まれている。
パチスロバーは、単なる趣味の場所を超え、遊技機の持つエンターテインメント性を次世代に継承する「文化のリレーポイント」としての業界的な意義を帯び始めている。
射幸性という劇薬がなくとも、人はリールの出目に一喜一憂し、仲間と語らい、楽しめる。この原点に立ち返った場所にこそ、これからの遊技業界が生き残るためのヒントが隠されているのかもしれない。
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