従業員を守れ!パチンコホールを蝕む「カスハラ」に、どう対処すべきか
2025.06.17 / ホール近年、急速に広まっている「カスタマーハラスメント」(カスハラ)という言葉。従業員の負担を増大させる深刻な問題だが、パチンコホールにおいても、実際にこの「カスハラ」に悩まされているところは多いのではないだろうか。今回はそのカスハラの実態と、それにどう対処すべきなのか、考えてみる。

「お客さまは神様です」サービス業種に携わったことのある人たちならば、よく耳にしたことだろう。このフレーズは、三波 春夫が舞台を神聖な場所と捉え、雑念を払って観客と向き合う、いわゆるそのパフォーマンスに対する言葉であった。
やがてこのフレーズが次第に歪められ、顧客が主役の「お客さま第一主義」という、行き過ぎた考え方や解釈へと変化してしまった。
その代償として消費者の地位向上、企業への不信感増大、過剰なサービスによる期待などを挙げることができるだろう。
後にこれらの行為行動は「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が増加する背景と考えられ、2020年厚生労働省の「パワハラ指針」において、顧客からの迷惑行為による就業環境の害を防止することが企業義務となった。やがてメディアでも取り上げられ、その対策を求める声も高まり、直近でも各自治体でカスハラ防止条例が制定され、国会でも法制化に向けて動いている。
パチンコホールも、当然顧客商売として例外ではない。では、一体どのようなカスハラが存在しているのだろうか?
おもな事例として、以下(図1)のようなことが挙げられる。

カスハラにより、従業員は疲弊してしまい、短期間でも退職してしまうケースが多い。ホールの時給が高いのは、ひと昔前ならば玉箱の上げ下げの重労働などがあったが、いまや自動化になっても顧客からの罵詈雑言があるからだろう。
ここで考えてほしいのは、これら事例は「クレーム」か「カスハラ」なのか、ということだ。もっといえば「その人はお客さま(顧客)なのか?」を振り分けられるように観察しないといけない。それぞれの意味を理解し、従業員が見極める必要がある。
顧客とは、「その組織が求めるお客さまとして正しく行動をしてくれる人」のこと。つまり「提供している商品やサービスを適正に利用してくれる人」といえる。しかしその中には、そうでない「非顧客」も隠れていることを忘れてはいけない。
クレームとは「商品の不具合やサービスの不手際などに対し、返品や交換、対応の改善を要求すること」である。一方でカスハラは、「商品の不具合に対して購入金額以上の金銭を要求したり、サービスの不手際に対して従業員に暴力的・侮辱的な態度をとり、度を超えた謝罪を強要したりすること。または、従業員への嫌がらせを目的にしたものも含まれる」である。
クレームとカスハラは、同じようなものと混同されがちであるが、実は両者の本質は大きく異なる。
では、どうすればカスハラに振り回されずに済むようになるのか。企業や店舗でその対策をまとめる必要がある。
まずはその「専門的な知識」を学ぶ。学びながら、対策の必要な理由や決めなければならない事項など洗い出しをしておく。その後は、現場で発生しているカスハラの実態を把握するために「データを収集」し、「ガイドラインやマニュアルを作成」して全従業員に浸透させる。そして、「当社(当店)はカスハラ行為に対し、このように対応する」と宣言(方針の明確化)することだ。宣言があれば、会社が従業員を守ってくれるという安心感につながるのだ。
もし、クレームやカスハラの事象に遭遇したらどうすればいいのか?
簡単にまとめると、まずは「お詫び」をする。ただし、何に対してのお詫びなのかを明確にする必要がある。その後は「傾聴」に徹し、お客さまの話を積極的に聴く姿勢を持つことである。お客さまは「何を求め、何に対して怒っているのか」などその目的、原因、状況、要望などを把握し、事実確認を行う。そこでクレーム、勘違い、カスハラなどを適切に仕分けて判断をする。判断ができれば、その事象について対応が「できる」か「できない」を明確に伝え、再度お詫びを伝えて終了する。
それでもクレームやカスハラでこじれるような場合は、法人や店舗で決めたルールに則り、厳正に対処する。その対応は可能であれば複数が望ましく、もし何らかの危機を感じたら躊躇することなく、警察対応もやむを得ない。
カスハラをする人は自身の価値観、プライド、思い込みなどが脅かされたと感じると、怒ってそれを守ろうとする。しかし、それがクレームの域を超えた時、従業員がその怒りの受け皿となる必要などないのだ。カスハラ対策をする意義、それはカスハラから従業員を守ることである。
