泥に足をとられながら、笑った日──8年目の「米(マイ)ジャグラープロジェクト」が今年もいわきに春を運んだ

2025.05.28 / メーカー

2025年5月24日、福島県いわき市小川町。北電子が東日本大震災で被害に遭われた地元農家を応援する取り組みとして、2018年から展開している体験型稲作プロジェクト「米(マイ)ジャグラープロジェクト」の一環として、今年も田植え体験イベントが開催された。 

会場となったのは、地元農家・ファーム白石代表白石長利さんの田んぼだ。この日は、地元の子どもたち約20人に加え、地元のJリーグチーム(J2リーグ)のいわきFCからブワニカ啓太選手と加藤悠馬選手らが参加した。


この日植えたのは、福島県の酒米「夢の香(ゆめのかおり)」。田植え前に、子どもたちを集め、農家の白石さんが苗の持ち方や植え方のレクチャーをしていく。子どもたちは真剣に耳を傾けつつも、白石さんが田植え機に乗り込むと我先にと追いかけていく。 

まずは、子どもたちを田植え機に乗せて、田んぼの大半を植え進めていく。田植え機で田んぼの大半を植えた後、残った一列は、いわきFCの選手やスタッフ、子どもたちが一緒になって手植えで仕上げた。

 

写真左が加藤悠馬選手、右がブワニカ啓太選手

いわきFCのFWブワニカ啓太選手は、「初めての田植えで少し緊張しましたが、やってみると楽しかったです。こうした活動は、クラブとしても続けていくべきだと感じました」と話した。小学校訪問などで子どもたちと接する機会もあり、自分自身も子どもを持つ親として、この日のような地域との関わりは、特別なものだと語る。

一方、兵庫県出身のMF加藤悠馬選手は、「田んぼに入った瞬間に子どもの頃の記憶がよみがえりました。スタジアムで声をかけてくれる子どもたちの存在も大きいですが、こうした場所でも元気をもらえます」と話す。初対面でも自然と打ち解ける子どもたちの姿に、選手たちも肩の力が抜けていったようだった。

田んぼに入るや否や、泥に足を取られて転びそうになる子もいたが、そのたびに歓声と笑顔が広がっていた。その姿を見てこの日子どもたちを引率した、いわき市内で子どもたちのサポートを行う「はまどおりサポートちるどれん」代表の田子恵子さんはこう語る。 

「2カ月くらい前から、選手は誰が来るのかを予想したりして、みんな楽しみにしていたんです。いわきFCの試合を見に行った子もいるほど。田植えの経験を通じて、お米に対する意識も変わってきたと感じます。無駄にしなくなったり、食育にもつながっています」

今年で8年目となるこの活動について、イベントに参加した北電子の小河光弘取締役にも話を聞いた。

 

「昨年と変わらず、ご参加いただいた地元お子さまと関係者の皆様、いわきFCの皆様に、私たちの活動へのご協力をいただき感謝したいと思います。また、ケガ等もなく無事に終えることができてよかったです。

 昨今、お米不足や値段の高騰がメディア等でも叫ばれ、自身も実感している中でしたので、今までより一層、ひと苗ひと苗を植えていくことに重みも感じました。例年にも増して、秋の収穫時期が楽しみです。

 ここから少し北に行くだけで、最近ようやく立ち入ることができるようになったところや、いまだ帰還困難区域になっているところも広大にあると聞いております。まだまだ復興への道は半ばであると、ここに来てみると改めて思わされます。一方で、今年もこのようにいわきで田植えを行うことができているというのは自分にとっても嬉しいことです。

 田植えして稲刈りしてそのお米を食べてという、日本ならではのある意味幸せなサイクルに、この地域で直接関わり発信することは、関係する方々と一緒に地域の今をお伝えできると思っております。継続してきたからこそ時系列で見られるというところもあります。

 私自身、今年もこちらに来たことで、この地域の情報をアップデートできましたし、発信し続け、知ってもらうことのお手伝いができるのは大事なことだと考えております」


一見すると小さなイベントかもしれない。だが、そこには地域との関わりを大切にする企業姿勢と、それを支える人々の努力が確かにある。

子どもたちのまっすぐな目線、選手たちの自然な笑顔、そして泥にまみれながらの作業。そのすべてが、地域との「関係性」を少しずつ、確かに積み重ねている。 

 

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