3年通ってわかった。米ジャグラープロジェクトは「地域と共生する物語」だった
2025.10.15 / メーカーPiDEA編集部のコガワです。米(マイ)ジャグラープロジェクトの取材を始めて、今年で3年目になります。田植えも稲刈りも取材しているので、年に2〜3回はいわき市へ足を運ぶようになりました。最初は「企業活動の一環」という認識でしたが、通うたびにこの土地の空気や人の温かさに触れ、いまではすっかり“いわきファン”の一人になっています。

さて、10月4日、福島県いわき市で北電子による「米ジャグラープロジェクト」第8期の稲刈り体験が行われました。いわき市内で子どもたちに対する各種サポートを行う、「はまどおりサポートちるどれん」を通じて集まった20名の子どもたちや、J2リーグで戦ういわきFCからブワニカ啓太選手、坂岸寛大選手が参加。今年も黄金色に実った稲を鎌やコンバインに乗り込んで刈っていきます。
当日の天気は雲がやや多め。ときおり差し込む陽射しが夏を思わせる暑さを残していました。日陰に入ると涼しく、田んぼからは秋の香りが漂う。畦道の向こうに見える田園風景はまだ紅葉前ですが、色づいた稲が収穫の季節を感じさせていました。

この米ジャグラープロジェクトですが、始まりは2018年。今年で8期目を迎えます。私は第6期から取材を続けていますが、現場ののほほんとした柔らかい空気感は毎年ほとんど変わりません。むしろ“変わらないこと”が、このプロジェクトの良さでもあります。田んぼの風景も、子どもたちの笑顔も、北電子のスタッフの姿勢も、どれもが安定していて、私はそこにジャグラーらしい「継続の力」を強く感じます。

プロジェクトの耕作地を管理する地元農家の白石さんによると、今年のお米の仕上がりは上々だったそうです。
白石さん「暑い時期に水を掛け流して地面を冷やしたことで、高温障害を防ぐことができました。今回のプロジェクトによる食米コシヒカリの収穫量は約600キロです」
葉の色もつややかで、例年よりもやや黄金色が映えているような感じがします。白石さんが鎌を使って稲刈りのコツをいわきFCの選手たちにレクチャーしていきます。その後、コンバインに乗り込みザクザクと稲を刈っていきます。その音を聞いていると、手作業との違いを体感でき、「昔は全部手で刈り取っていたのか」と大変さを思わず想像してしまいます。

このプロジェクトでは、食用米に加えて酒米も栽培されており、焼酎やウオッカなどへの加工・アップサイクルも行われています。単なる社会貢献活動に留まらず、プロジェクトの広がりを見せている点は、取材をしていてとてもワクワクさせられますね。
印象的なのは、子どもたちの成長です。2年前に見かけた子が、背丈も伸びてすっかり頼もしくなっていました。いわきFCの選手と一緒に作業するのを楽しみにしている子も多く、バスで帰っていく時の姿を見送るときの手の振り方も、少し大人びて見えます。活動そのものが地域の季節行事として根づいているのを実感します。
はまどおりサポートちるどれんの渡邉代表理事は、「毎年、春の田植えと秋の稲刈りにご招待いただいて、子どもたちの成長を見ていただいています。子どもたちも収穫したお米をいただいて、自分たちで作って食べるという、すごい良い食育体験をさせてもらっています」とプロジェクトのありがたみを語りました。

その言葉を聞いた瞬間、活動の意義は説明するまでもないと感じました。“人と人が食を通してつながる場”として機能している。
私にとって米ジャグラープロジェクトは、いわきを好きにさせてくれたきっかけです。いわきはお米も野菜も魚も本当に美味しい。「美味しい」と感じることは、人の営みの根っこにある喜びだと思います。その原点に“米ジャグラー”が関わっていることが、この活動の価値を物語っています。

震災からの風評被害を乗り越えようと始まったこのプロジェクトは、いまや支援というより共生。子どもたちの笑顔と稲の成長が重なる光景は、その象徴です。
お米の価格が上がり、食のあり方が問われる時代にあって、米ジャグラーは、地域とともに育ち、未来へと実るプロジェクトだなと感じました。
(文・PiDEA編集部コガワ)