「その制服、ただの作業着じゃない」ホールの美意識は、スーツから始まる。広島県333の事例

2025.04.17 / ホール

かつて“白シャツにネクタイ”が当たり前だったホールの制服に、今変化の兆しがある。広島・福山市の高稼働店「333」では、作業着でありながらスーツに見える「ワークウェアスーツ」を導入。見た目を変えることは、ホールの文化を変える第一歩だった。 

Point1
見た目のスマートさによるブランドイメージ向上
白シャツ・ネクタイからの脱却により、清潔感や洗練された印象を与え、役職者が〝憧れられる存在〟になるという社内外へのメッセージにつながっている。これにより、意識の向上など内面からくる自信のようなものも磨かれていく。

Point2
スタッフの意識変化と身だしなみへの配慮の促進
テーラードジャケットは22,000円(税込)、9分丈のアンクルストレートパンツは15,400円(税込)と、1着あたりのコストは一般的な白シャツよりも少々値がはるものの、綺麗なジャケットだからこそ、それ以外の部分の身だしなみにも配慮がなされる。

Point3
高機能素材による実用性とメンテナンス性の高さ
耐久性・撥水性に優れ、破れにくく、シワにもなりにくくハードな現場に適している。役職者に支給されたスーツの管理は、個人に任されているが、なんといっても家庭用洗濯機で洗えるため清潔感を保ちやすい。

Point4
動きやすく暑さに対応できる設計
一般的な背広とネクタイのスタイルでは、前屈みになった時、ネクタイが垂れてくるなど動きづらく、なおかつ働いていて暑いという問題があったが、ワークウェアスーツはTシャツの上から羽織るスタイルで動きやすく快適。巡回や接客に向いている。


ワークウェアスーツが切り拓く
パチンコの新しい文化

 かつては白シャツにネクタイ、鍵束を腰に下げたスタイルがホールスタッフの定番だった。だが今、ユニフォームが静かに進化を遂げている。制服は単なる服装ではなく、ホールの意志を象徴する存在になっているのだ。

 広島県福山市の高稼働店「333(スリースリー)」では、2020年から役職者に「ワークウェアスーツ」と呼ばれるユニフォームを導入している。ワークウェアスーツは、2018年にそのブランドが誕生し、世界初のスーツ型作業着としてプロモーションが展開された。

 外見はスマートなスーツ。くるぶし丈のスリムなパンツ、白Tシャツに羽織るジャケットではあるが、実態は作業着だ。動きやすさもありなおかつ耐久性と撥水性に優れ、洗濯も自宅で可能という実用性を持ち合わせている。 

 第一印象は「シュッとしてる」。その絶妙なバランスが、今までのパチンコホールのユニフォームスタイルとは違って洗練された印象がある。

 333がこのワークウェアスーツを導入した背景には、「役職者は憧れられる存在であるべきだ」という価値観がある。経営企画室の長鋪毅輔室長が入社した当時、その思いを形にするために、まずグループ店の999(スリーナイン)やPlus-3といった店舗で導入を開始。333ではそれに続くかたちで2カ月遅れで採用された。

 実際にスーツを着てホールに立つことで、スタッフ自身の意識も変わる。「最初は照れくさかったけど、お客さまから『制服変わってかっこよくなったね』と言われたとき、やってよかったと思った」と、同店の建元孝剛店長は語る。 

株式会社 一富士興業
店長 建元孝剛氏

建元孝剛店長は、2003年に入社し、現在は広島県福山市の高稼働店「333」で8年間にわたり店長を務めているベテラン。かつては白シャツにネクタイ、鍵束を腰に下げるスタイルを「かっこいい」と思っていた世代だが、令和の時代に合わせて、ワークウェアスーツの導入によるイメージ刷新を高く評価する。「最初は照れくさかったが、これを味わってしまうともうネクタイを締めている時代には戻れないですね(笑)」。333では店長を含め、8人のスタッフがワークウェアスーツを着て働いている。

 この変化は「プラスを増やす」ためというより、「マイナスを徹底的になくす」という同店の姿勢の延長線上にある。333では、身だしなみ、あいさつ、トラブル対応、清掃面といった基本的な部分において高いレベルを維持することを何より徹底してきた。「当たり前のことを当たり前に行う」。それがパチンコホールにとってのスタートラインという考え方だ。つまり、制服の刷新とは、文化の最前線ではなく、土台を築くための基礎練習。だがその積み重ねが、結果的に333のブランドを高め、高稼働に結びついている。

 2005年にオオキ建築事務所によってデザインされた同店は、島間、台間にもゆとりがある。グランドオープン当時はいかに台数を増やすかということに多くのホールが躍起になっていたが、空間の心地よさを取る選択をした。それから20年経った今でも支持され、全国レベルでも非常に高い稼働率を誇っているのは、そのようなスタイルが受け入れられているからであろう。

 「私はもう古い人間です。私が入社した当時は、白シャツにネクタイに鍵ジャラジャラなスタイルがかっこいいと思っていました。ただ、昭和、平成を経て令和になった今、あの時会社がした判断は時代をとらえていたんでしょうね」(建元店長) 

 時代が変われば、ホールの「当たり前」も変わる。昭和・平成の「ザ・パチンコ屋」的イメージから脱却し、令和のパチンコはどうあるべきか。333のような高稼働店が率先して動いていることも、それを理解するのに重要なポイントだ。スーツ1つで、スタッフも来店客も、ホールという場所を少し誇らしく思える。パチンコをもっと文化的に。その一歩は、見た目から始まるのだ。

333, ワークウェアスーツ, ユニフォーム