店長から社長へ異世界転生した株式会社ピーアーク東京「イシカク社長」に託された次なるミッション

2024.12.18 / ホール

「イシカクどこいった?」

 

 イシカク店長といえば、SNSでも営業でも、東京のパチスロシーンを牽引するような店長の1人だった。そんな人物が、ピーアークグループの東京支社である株式会社ピーアーク東京の代表取締役に就任した。支社とはいえ、8店舗を経営する企業の社長である。
 
 また、店長から社長に出世するケースは業界的には非常に珍しい。イシカク社長に託されたミッションや、どこまでの決定権があるのか。また、株式会社ピーアーク東京をどのような企業にしていくのか。店長が社長になることによる、世界線の違いを本人が感じている言葉で表現してもらう。

 一般的に店長の次のポストといえば、企業によって呼び方は異なれど、エリア長やブロック長、部長といったところが順当であろう。しかし、店長から次のポストが社長というのは全国的に見ても珍しい事例だ。
 
 「イシカク店長」の名でXを運用することで知られていたピーアーク北千住とピーアーク北千住SSS(以下トリエス)の2店舗を任されていた石原圭太(以下イシカク)氏は、自身が運用するXで以下のような投稿をした。
 
 「10月2日をもちまして北千住エリア店長としての業務を終了とし、退任することとなりました」
 
 唐突なXでの長文発表に、都内のパチンコ・パチスロユーザーは驚きを隠せなかったことだろう。続けて、「今後はピーアーク東京を牽引すべく、裏方で後方支援に徹したいと思います」と今後の活動内容を示唆した。ポストでは具体的な次の役職についての言及はなかったが、ピーアーク公式HPには株式会社ピーアーク東京の代表取締役として、その名が記載されていた。
 
 
 
 店長から一気に社長へという昇進は、まさに異世界転生ともいうべき大躍進なように見えるが、実はこのようなケースはピーアークグループでは順当なステップアップなのである。というのも、ピーアークホールディングスを主体として、その傘下に3社のホール経営事業会社があり、東京エリア8店舗を経営する株式会社ピーアーク東京、埼玉エリア8店舗を経営する株式会社ピーアーク埼玉、千葉・神奈川エリア6店舗を経営する株式会社ピーアーク千葉・神奈川と各社にそれぞれ社長がいることになるからだ。イシカク氏は社長として、この東京エリアの事業会社を託された。
 
 イシカク氏の店長としてのキャリアは今から6年前、春日部店から始まった。1年で業績を上げ、その手腕を買われて、2020年6月にトリエスのグランドオープンに指名。コロナ禍まっただ中の新店で、なおかつ5号機から6号機へ徐々にホールのスタンスが移り変わっていく中で、時代の流れは完全にパチンコだった。イシカク氏本人も「僕の店長歴の中で一番苦労したと思います。6号機の一番きつい時期で、広告宣伝規制も強くなってきていてお店としての表現もできない。その反面、パチンコはどんどん良くなっていった時期。みんな併設店にばっかり行ってしまうわけですから」と、当時を振り返る。
 
 しかし、その逆境の中で考えていたのは、「お客さまを楽しませたい」ということだった。営業面のテクニックもあっただろうが、イシカク氏がもっとも大切にしているのがこのホール運営感であった。
 
 「一番はGiver側で在りたいということを常に意識しています。最初から予算や利益など、そちらから物事を考えるとどうしても面白みがなくなります。そうではなくお客さま中心で物事を考え、何を求めているかを注意深く考えるようにしています。最優先は『お客さまを楽しませたい』という想い。これを大事にしています。その想いが設定や機種レイアウトなどに反映され、お客さまに感じ取ってもらえているものになっていたのだと思います。ホールはそうした細かいこだわりの集合体です。ありがたいことに、自分のやり方を気に入ってファンになってもらえる方が増えたから今の自分があるのかなと思います。そこに対するこだわりは人一倍強い方です」(イシカク氏)
 
 
 
 この考えでトリエスを成功させ、次はピーアーク三田を任されることになる。ここも成功させ、店長としての最終のキャリアはピーアーク北千住とトリエスの兼任店長だった。
 
 「トリエスを1年半やった後に三田で1年。そこで結果が出始めた頃にスマスロが登場しました。『今だったら石原、トリエスもっといけるんじゃないか』ということで、トリエスと北千住もセットで両方を任せてもらい、それから1年半ほどで現在の昇進に至りました」(イシカク氏)
 
 店舗の業績を上げたことを説明するためには、エンタープライズのホール稼働率ランキングが一番分かりやすい。三田に関しては都内370店舗中220位だったが1年で90位くらいまで引き上げた。トリエスも戻ってきた時は130位ほどだったが、今では20~30位の上位につけている。「本人はたまたま運が良かっただけ」と謙遜するがIN枚数なら1年でざっくり2倍だ。
 
 社長に就任してから取材時点で1カ月。現在イシカク氏は、各店の現状を知るところから始めている。
 
 「三田・北千住は直近で経験してますが、北綾瀬は約7年前に勤務、竹ノ塚にいたっては勤務経験がない土地です。地域の情報がなかったり古いままでは正確な指示や良い協議はできません。ですので、まずはインプットから始めています。社長になったから急に大きい顔することもなく、僕は謙虚に変わらずにいたいなと思います」(イシカク氏)
 
 ホール企業にあるあるだが、現場はこう思っているのに、現場感のない経営者の声が大きいということで軋轢が生まれたりすることもある。この現役ホヤホヤの人材に社長を任せるというピーアークのスタイルを生み出したのは、ホールディングスの庄司眞社長だ。イシカク氏のホール運営感のベースとなっている「お客さまを楽しませる」という考えも、大元をたどればホールディングスとしての意向が反映されている。ホールの主役は店長と考え、その店長に多くの決定権を与え各店が現場でそれを表現していく。イシカク氏も、「店長だった頃から自分の権限の範囲の中で動けていたので、息苦しく感じたことはほぼありません」と答える。
 

現役ホヤホヤの人材が 社長を務める最大の利点

 
 店長を上がりたての人が社長をやるという珍しいスタイルをイシカク氏本人はどうとらえているか。
 
 「僕個人はこのやり方にすごい賛成です。経営陣がお客さまのことをしっかり考えて会社を経営することができますし、お客さまに一番近くて支持があった人が社長になれるということは、その社長はお客さまがどんなことで喜ぶかを分かって会社を導いていけますから。そういうところに敏感な人が経営をやれば、ホールも変わってくると思うんです。もちろん経営者として営業面以外の課題など多岐にわたって対応する必要があります。僕はそこをこれから学ばないといけないところだと思っています」
 
 
 
 イシカク氏は毎日投稿し続けたXアカウントを後任のエリア長に託した。個人として運用していたXアカウントを別の人物に託すということは、時として「イシカクの時とは違うな」などと拒絶反応を引き起こしてしまうことがある。だからこそ、イシカク氏がそのまま社長としてXを運用する未来もあったのではないかと質問をぶつけた。
 
 「正直これは最後まで悩みました。自分がやりたい気持ちはもちろんありましたし、現場を一番見て分かっている責任者を主とすべきという考えもあります。ですが、このまま僕が発言をしていては店長が主役ではなくなってしまう、それに各店長が僕のようにお客さまとやり取りできるようになればもっと楽しい店舗が増えると思い引継ぎを決断しました」(イシカク氏)
 
 現在は、誰にも教えていない匿名かつプライベートなアカウントで、見る専門として情報収集だけを行っているという。イシカク氏にとってはホール営業と同じくらいXにも力を入れてきただけに、後任にはどのようなアドバイスをしたのだろうか。
 
 「引き継いだ直後にガンガンやると、ハレーションは出てしまうので、今はあえて脱イシカクの期間です。そこに関しては全然急いでなくて、時が来た時に次のエリア長の色を出していこうと思っています。アイコンもよく見てください。エリア長の卵はまだ割れていないんです。そもそも自分の運用について過信はしていなくて、やっぱり店長にやってほしい思いもあります。僕よりお客さまを楽しませることができる人はたくさんいるでしょうから、僕が持っている考え方をどんど店長に話してあげたいと思っていますし、そうすれば会社は勝手に強くなっていきますから」(イシカク氏)
 
 
 
 今はまだ雌伏の時かもしれない。しかし、いつかは情報収集段階を終え、自身の色を発揮するだろう。この点について、「僕自身のアイデンティティーがピーアーク東京のアイデンティティーになると思っています。それは楽しませることの追求。そこに関してはブレたくない」と、本人が意図していたかはさておき、記者からすると自信を覗かせる瞬間も垣間見れた。
 
 今はまだ、期中ということでイシカク氏の色が出始めるのはもう少し先だろうか。ユーザーにとっての面白い展開を、社長という最奥からどのようにコントロールしてくるのか楽しみである。

株式会社ピーアーク東京/代表取締役
石原圭太
2005年にピーアークに入社。勤続13年にして初めて春日部店で店長を務める。春日部店の業績を1年半かけて上げた後に、2020年6月、ピーアーク北千住SSS(以下トリエス)のグランドオープンに抜擢される。トリエスを1年担当し、次は三田店へ異動。三田店で1年勤め、トリエスと北千住店のドミナント2店舗の兼任店長へ。1年半勤めた後、株式会社ピーアーク東京の代表へ。
イシカク, 株式会社ピーアーク東京