[WEB小説]とあるパチンコホールオーナーの夜の遊び方(第一夜)

2023.10.25 / コラム

「さてこれから第二の人生を始めよう」。仕事はデキるが、幸か不幸かバツイチになり、金と時間を持て余してしまった40代の某パチンコホールオーナー木村哲司(仮名)は、今日も夜会を求めて街を彷徨う。実在する人物の実体験をベースにしたファクション新連載。(原案・木村哲司 文・PiDEA X編集部)


木村哲司。40代中盤。愛読書は雑誌の「東京カレンダー」。現在複数店舗のパチンコホールのオーナーを務めている。

前妻との間にすでに独立した娘が2人。独り身となった今は、日中は仕事に従事しつつ、夜はマッチングアプリで一期一会を楽しんでいる。

私の年齢に対して20代の若い女性とマッチングすることを、世間では〝パパ活〟と呼ぶ。たしかに傍目から見れば、私と若い女性の年齢差による違和感は拭い去ることはできないが、今はパートナーと出会う手段としては、婚活パーティーよりも、街角ナンパよりも、結婚相談所よりも、合コンよりもマッチングアプリの方が上だ。

ある調査ではパートナーがいる人5000人以上へのアンケートで、全体の7.4%がマッチングアプリで出会ったというほど、若い人たちには浸透している。

 

仕事をしているだけでは生活に潤いがないということで、私もスマホを通して若い女性と出会っている。マッチングアプリは若い女性がいいとなった時に重宝するし、視点を変えれば、若い女性が年上かつ収入の高い男性との出会いに興味があるとなった時は、どうしてもリアルの機会でそのような場は少なく、アプリを使わざるを得ないのだ。

そんなわけで、ある程度お金に余裕があり、それなりに時間も持て余しているとあるパチンコホールオーナーの夜の遊び方を赤裸々に語っていきたい。第1回目のテーマは「パパ活アプリを活用して出会うこと」だ。

 

「顔合わせ」という名の有料の儀式

パパ活をしたことのない人にとっては「まずは食事から」と思いがちだろうが、いきなりあって飯を食ってというのは大失敗する可能性が高い。なぜなら、相手も写真加工をしているからアプリ上で見た本人が出てくるとも限らないし、女の子側からしても「まったく会話ができない無口で不気味なコミュ障オヤジ」みたいなこともある。

お互いよく思っていないのに食事の時間を共有するのは本当に苦痛なのだ。逆に、ヤリたいだけで金の話しかしないオヤジも嫌われるので、最初はカフェでお茶を飲んでお話をする「顔合わせ」というものをするのが通例となっている。

アプリ内のチャット機能でやり取りしていると、1、2回チャットをやり取りした後、以下のように条件を提示されるのが常である。

顔合わせ0.5〜1
食事1~3
大人4〜10

コロナ前はもう少し安かったが、今は相場が上がっている。内容は皆さんのご想像の通りだ。実際に会っておしゃべりをしてから、次もまた会いたいとなればLINEを交換してその日はバイバイ。これでいい。

自慢じゃないが、日々店長・部長たちとバチバチに議論を繰り広げている私のトーク力にかかれば、LINEの交換率は100%。かれこれパパ活歴5年ほどで通算200人と出会っているが、こちらからLINE交換を求めて断られたことがない。

ただ、恥ずかしいのが、「顔合わせ」でもお金を渡さないといけないこと。想像してみてほしい。カフェで20代の若い女性と親子ほどの年齢差のある男が、絶妙な距離感で〝心理戦〟を交えたトークをしているのだ。そして最後にはお金を渡す。これはもう一撃でパパ活としか言いようがない光景だ。

店内にいるのは全員関係ない他人とはいえ、これを見透かされるのは小っ恥ずかしいものだ。

だから私はいろんな渡し方を試した。あらかじめ封筒に用意してさっと手渡すこともしたが、封筒の物々しさは現金以上の存在感を放ってしまい失敗。

ある時は、「お金渡すからちょっとトイレの方来て」と言って隠れて渡そうとしたこともあったが、トイレの方向に一緒に来ることを求めるのは相手に対する心理的な警戒心も拭えない。

最終的には、手の中に万札を仕込んでおいて、コーヒーを飲みながらパッと金が見えずに渡せるようなスキルを身につけ、その方法で落ち着いている。

 

だがこれはまだまだほんの序の口。パパ活で楽しいのはこれからなのである。(続く)

とあるパチンコホールオーナーの夜の遊び方, 木村哲司