岡野陽一のパチンコ人生訓 vol19 -キングオブコント2022を振り返る

2023.02.03 / その他情報

「借金芸人」岡野陽一が送るPiDEA新連載!
パチンコを打っていく中で岡野陽一がたどり着いた人生の境地を、月替わりの金言とともに語る。


今月の金言

キングオブコント

2022を振り返る

 

:岡野陽一 ※PiDEA Vol.195掲載分

きっかけは吉住からの「出ますか?」という問いかけでした。去年からキングオブコントではユニットが解禁になったので、何度か声をかけられていました。

その頃の僕といえば、クズ仕事に追われるような生活をしていましたから、自分からというわけではなく吉住の方から声をかけてもらった形です。実は去年も声をかけてもらっていたのですが、「うーん、まぁまぁねー」みたいな感じで返事を濁して逃げていました。
じゃあなんで今年は気が変わったのかといえば、声をかけてもらった時がピンになって初めてネタライブをやっていた時期だったので、自分自身もちょっとネタモードだったということもあって、「じゃあ(吉住の方で)勝手にエントリーしてくれておいたらいいよ」となり、出場が決まりました。

そんな受け身なスタンスでしたから、コンビ名に関しても向こうにお任せです。「岡住」とか「髭一重」とか提案を受けつつ、僕自身も思いつきで「最高の人間」という案を出させていただいて、一回戦のエントリー表を見て「あっ、この名前になったのね」と現場で初めて知った次第です。後で聞いたらちゃんとあみだくじをして決めたんだとか。

ここまででは、吉住の方が熱心に僕を誘った形ですが、どうやら人力舎の芸人さんかマネージャーさんかどなたかが、クズ仕事、いわばダークサイドに堕ちている僕を見かねて、「(岡野と)一緒に出てやってくんねーか」と吉住を動かしたようです。

実際僕自身、東京03さんのラジオに出させていただいて、「ネタやらないの?」と言われて、「自分ではもう動けません。誰かに強制的に会場とか日にち決めてもらえるならやりたいです」とお答えした記憶もあります。

ネタも嫌いではないけど、何よりネタを生み出すのって本当に苦しいですし、ずっとやっていない時期が続くと恥ずかしくてできないみたいな雰囲気がありまして、気持ちはあるけど自分では呼吸をできないみたいな状態でした。自分は環境に流していただいて出場したということです。

舞台に立った岡野陽一という
芸人を信用していたが……

そこからは事務所に詰める毎日でした。仕事がない日も、仕事が終わってからも。

僕らは7月からの動き出しでしたので、他の人が1年という時間をかけて臨むところを、3カ月に詰め込まないといけません。他のコンビはライブなどでネタをかけて、ある程度手応えを感じたものを大会に持ってくるものですが、僕らはそれもないので、なんとか大会前に緊急でライブを組んでもらって臨みました。一回戦は受かるとは思っていませんでしたけど、落ちたら恥ずいなとは思っていました。こちらは女王・吉住を擁立していますしね。

一回戦、二回戦、準々決勝、準決勝を勝ち進み、決勝大会です。決勝まで行くことが目的ではなく、優勝しなければ意味がないと思っていました。今でもそう思っています。番組をご覧になった方は気付いたと思いますが、本当に緊張しましたね。あんなに緊張したのは初めてかもしれません。もちろん今までにも緊張はしてきましたけど、それでもセリフを噛むようなことはなかったんです。その部分では、なんだかんだ舞台に立った時の岡野陽一という芸人を信用していましたが、まるで別人でした。やらかしましたね。

ネタは僕の一人語りから始まるのですが、明らかに噛んでしまった部分もあってそこでフォームを崩しましたね。そのほかにも甘噛みはたくさんありました。僕の役的にも、サイコパスかつ猟奇的な沼田を演じるのに、緊張というのは相性が良くない。プロの目線では、「明転した時の表情からしてもうおかしい」と厳しい指摘をいただいたりしました。

ネタが終わってから点数を発表されるまでに20秒くらい移動の時間があるのですが、終わった瞬間吉住に「ごめんなさい」って言いました。僕の最初の緊張がどこまで影響したのか分からないけど、「きてほしいところで思ったよりウケなかった」「会場にハマらなかった」というのがお互いに感じていたことです。

舞台裏で他のコンビの笑い声も聞こえていましたから、点数を見る前からあのウケじゃ無理かなという感覚で、むしろ高く点をつけてもらったなと思っています。吉住には僕が噛んだからダメだったと思われるのはシャクなので、「完璧なデキだとしてもダメだったかもな」と自己弁護しておきましたね。

他の人たちのネタは面白かったですが、テレビで見ているのとは違って出場者なので、どうしても戦略的に考えて見てしまいますね。そういう意味では今年は1本も笑えなかったかもしれません。でも、コットンのネタはあそこまで詰め込めるのはすげえなと思いましたね。

来年出るのかどうかというのは、まだ分かりません。とにかく今は終わったので「考えたくない」という思いです。これで仕事がバンバン増えるということもないですし、お笑いイップスになってしまったらどうしようと心配もしましたが、あれだけの緊張感を味わえたのでもう並大抵のことでは緊張しないと思いますね。

ただ、それでも久々に頑張りすぎてしまいました。僕は今回の大会を、「頑張ったらいいことあるよ」という話にはしたくないので、やっぱり楽に生きたいなと改めて実感した次第です。

どうやら人力舎のどなたかが、クズ仕事、
いわばダークサイドに堕ちている僕を見かねて、
「一緒に出てやってくんねーか」と吉住を動かしたようです
 
 
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