SANKYOなど各メーカーの業績回復が顕著に

2022.11.15

 上場遊技機メーカー各社の2023年3月期第2四半期決算(以下、中間決算)出そろった。前年までの不振が嘘のような好業績となる銘柄もあり、非常に興味深い内容となった。以下、順を追って見ていこう。

 業績好調メーカーそれぞれの要因

 まずはすでに上方修正を行った円谷フィールズホールディングス<2767>から。

 売上高422億3000万円(前年同期比13.1%増)、営業利益35億3400万円(885.9%増)、経常利益37億5300万円(528.4%増)、最終利益25億3600万円(702.7%増)だった。本業の儲けを示す営業利益は10倍近く増え、年初に461円まで下落した株価は半年で1000円を突破。10月には2000円を突破し、直近11月10日には一時4号機最終年の2007年以来となる2300円をつけた。

 特にマーチャンダイジング事業は目を見張る活躍を示しており、円谷プロダクションが手掛ける「ウルトラマン」は中国で一大ブームを巻き起こしている。また、デジタル・フロンティア事業においてもNetflixとのVFX映像制作が好調を維持し、前年同期比56.3%増の営業利益2億1600万円を稼ぎ出した。もちろん遊技機部門は絶好調で営業利益19億3300万円と、前年の▲4億6900万円から見事な黒字転換を果たしている。

 続いて、こちらも上方修正を行ったSANKYO<6417>も絶好調だ。

 売上高699億6300万円(前年同期比149.3%増)、営業利益264億1500万円(同806.4%増)、経常利益268億4200万円(同687.3%増)、最終利益213億600万円(同365.7%増)と、営業利益は前年同期比の9倍を記録している。

 同社のパチンコは初代シンフォギア以降、安定した稼働を示すようになり、ガンダムユニコーンとエヴァンゲリオンで大きく花開いた。販売する機械はホールから強い引き合いを得ており、他社に比べ強じんな供給力を確保したことで好業績へ結びついたと言えよう。3000円を切っていた株価は一時5000円台の大台に乗った。

 直近は稼働面でホールの期待を裏切る機械も散見されるようになっているが、積み上げた信頼を武器にゴジラ対エヴァンゲリオンでは商品価格の値上げに成功しており(ホールサイドとしては複雑な思いもあるが)業績面での不安は小さい。

 平和<6412>の中間決算もまた凄まじかった。売上高709億3000万円(前年同期比20.7%増)、営業利益153億3700万円(同224.0%増)、経常利益は151億3600万円(212.4%増)、純利益は107億9800万円(324.5%増)と、売上の伸びに比べ利益の伸びは3倍増4倍増と際立っている。

 遊技機事業はパチンコが戦国乙女LEGEND BATTLE、黄門ちゃま神盛2といった定番機種が販売台数に寄与し、前年同期比9000台増の3万8000台を記録。パチスロは黄門ちゃま喝2とBIG島唄30の販売で、前年同期と比べ倍増の2万台を記録した。また、前期実施した希望退職制度による人件費圧縮効果もあり、売上高営業利益率は前年の8.1%から21.6%へ改善。「稼げる会社」へと脱皮した。

 藤商事<6257>もまた業績を急回復させている。

 売上高171億5600万円(前年同期比119.3%増)、営業利益25億4300万円(黒字転換)、経常利益は26億6900万円(黒字転換)、純利益は24億6900万円(黒字転換)と、ようやく赤字から脱却した。その主要因はパチンコ遊技機の絶好調である。前年同期比+1万2700台となる3万8200台に達し、特にサラリーマン金太郎は計画を上回る1万8500台を販売し業績を大きく引き上げた。パチスロにおいてもFAIRY TALE2を5000台販売し、黒字転換に貢献している。

 ユニバーサルエンターテインメント<6425>は決算期が他社と異なり12月である。

 さらに、11月発表予定の第3四半期決算は12月へと提出期限を変更され、遅れていた第2四半期決算が11月14日に発表された。事実上3カ月遅れの発表ではあるが、業績の急回復をうかがえる内容となった。

 売上高563億2300万円(前年同期比96.8%増)、営業利益8億3300万円(黒字転換)、経常利益は134億2800万円(黒字転換)、純利益は67億6800万円(黒字転換)と、見事に黒字へ返り咲いている。営業利益に比して経常利益が大きいのは、円安ドル高の進行により年初からの半年で117億7300万円もの為替差益を得たためだ。カジノは円ではなくドル収入なので、ドル高は同社にとって追い風となる。

 業界最大の話題であるスマスロにおいてユニバーサルエンターテインメントは主役の一角になると見られており、1300円まで売り込まれていた株価は今決算発表翌日に一時2300円を回復する急上昇を見せた。

内製化にこだわり安定供給に努めたSANKYO

 一方、厳しい決算となったのがセガサミーホールディングス<6460>だ。

 売上高は1500億9500万円(前年同期比11.3%増)と増加したものの、営業利益は95億7400万円(同34.8%減)、経常利益も123億円(同16.6%減)。純利益は96億1900万円(同19.9%減)と減益で着地した。

 不信の原因はエンタテインメント・コンテンツ事業(いわゆるゲーム事業)。逆に、これまで足を引っ張ってきた遊技機事業は黒字転換している。特にサミー初の6.5号機「パチスロ甲鉄城のカバネリ」は販売面でも稼働面でも好調に推移し、同社の企画開発力の確かさを証明してみせた。リゾート事業は引き続き新型コロナウイルスの影響が見られるものの、政府の観光需要喚起策が寄与して赤字幅を縮小させている。

 オーイズミ<6428>の業績もまた不振であった。

 売上高73億2700万円(前年同期比26.8%増)、営業利益4億9400万円(同19.1%減)、経常利益4億9500万円(同25.7%減)。純利益は2億2100万円(同47.4%減)と増収減益で着地している。
 同社は遊技機だけでなく、不動産、電気、コンテンツ、食品等、事業を広く拡大しているが、柱はあくまでもパチスロ。ひぐらしのなく頃に祭2カケラ遊び編、閃乱カグラBURST UPで2億9800万円の利益を出したものの、世界的な半導体不足や原材料価格の高騰、ロシアのウクライナ侵攻などは業界内外共通の経営リスクとなっており、供給力に劣るメーカーは引き続き厳しい状況にさらされている。

 今回の決算で注目すべきはやはりSANKYOであろう。フィールズも上方修正しているが、遊技機部門の原動力はエヴァンゲリオンであり、つまるところSANKYOの影響が大きい。多くのメーカーが電子部品を確保できず供給不全に陥る中、第1四半期では、ダンまち、蒼穹のファフナー3に加え、ガンダムユニコーンの増産要請にも応え約6万3000台を販売。今第2四半期では、からくりサーカス、シンフォギア3他、約8万1000台を生産してみせた。

 SANKYOといえばかつて最後まで内製化にこだわったメーカーとして有名であり、こと供給面では現在も一日の長がある。ホール側から見れば新台の稼働はもちろん重要だが、そもそも供給されなければ新台入替もできない。今回の好業績は、製造メーカーとして安定供給に努めたSANKYOの経営姿勢の勝利といえよう。

  全体的に好転してきたメーカーの業績。今の安定供給が可能となった際には、ホールにも好業績が及ぶように機械代の引き下げや高稼働の追求を期待したいところだ。

 

 

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