2024年8月5日。東京証券取引所の日経平均株価は、ブラックマンデーを超える過去最大の下落に見舞われた。終値ベースで-4451円。三井住友フィナンシャルグループ、東京海上HD、ソフトバンクグループ、野村HD、伊藤忠商事など、日本を代表する大型株が次々とストップ安となり、東証プライム市場の99%(1625/1644銘柄)が値下がりする大惨事となった。
翌日以降は回復基調に戻りはしたものの、一週間が経過した今もボラティリティ(値動きの上下幅)は極めて大きく、落ち着きを取り戻したとは言えない。
暴落の日、パチンコ関連株も全体に巻き込まれる形で大幅下落となった。
特に円谷フィールズHDはストップ安まで売り込まれた。しかし直近は、好調な決算を出したメーカーを中心に株価を急回復させている。
SANKYOは8月5日の暴落分を帳消しにするどころか、上場来高値を狙える位置まで上昇。8月13日の取引では、前年同月比で+52.3%もの経常増益となった円谷フィールズHDはストップ高となった。
一方、厳しい決算内容となった藤商事やユニバーサルエンターテインメントは値を戻し切れていない。
SANKYOの急回復について、株式市場に詳しい関係者はこう分析する。
「第一四半期(8月7日発表)の経常利益は前年同期比9.8%の減益だったものの、これは前年の実績が極めて高かったことが要因であり、今年度の通期計画に対する進捗率は第1四半期で28.3%を達成。利益率の高い増産(パチスロ革命機ヴァルヴレイヴ・パチスロからくりサーカス・Lゴジラ対エヴァンゲリオン)で業績を伸ばし、かつホールからの引き合いは依然として強いことから、業績への安心感へつながった」
パチンコメーカーは適合状況やヒット作により業績が大きくブレるため、有力機種をコンスタントに販売へ導けることが株価へ大きな影響を与えてきた。逆にいえばこの点こそが、他業種と比べ回復の容易さにもつながっている。今回のような市場激変を受けても動揺することなく、各社の業績をチェックし、投資行動へつなげたいところだ。
最後に今回の大暴落の原因について言及しておこう。それは大きく分けて4つある。
1.日経平均株価は史上最高値を大きく更新していた
日経平均株価は7月にバブル超えとなる4万円台をつけており、そもそも高値警戒感があった。
2.政府自民党要人による日銀への圧力発言
岸田文雄総理大臣、河野太郎デジタル担当大臣、茂木敏充幹事長らが相次いで利上げ発言。本来独立している日本銀行に対し利上げ圧力を強めた。
3.利上げと日銀総裁のタカ派発言
日本は0%金利が続いていた。これを0.1%、0.25%へ引き上げたことで日米の金利差は縮小し、いわゆる円キャリートレード(円を借りてドルを買う)が逆回転。ドルは売られ、円が買われた。加え、植田日銀総裁が利上げを続ける発言を行ったことで急速に円高が進んだ。
4.アメリカの雇用統計悪化
非製造業雇用者数の伸びが鈍化。失業率も市場予想より悪化したことでアメリカの景気減速が鮮明になった。ドルは売られ円高はさらに進んだ。
円高は株安要因。7月に1ドル161円だった為替相場は141円台まで一気に大きく変動し、株の大暴落へつながる。161円の頃、日銀は円高への転換を狙い何度も為替介入をしており、市場のセンチメント(相場分析)は「これ以上の円安は難しい」との流れであった。そこへ上記4つの材料が重なったことで大きな下落となったのである。
2000年以降の市場暴落を見たとき、世界的な金融不安のリーマンショック、東日本大震災での全面安、そして未知の感染症によるコロナショックと、それぞれ先の見えぬ不安が株価を押し下げた。今回は下げの理由が明確であるため、企業業績への影響は一時的と言えるだろう。特に輸出産業ではないパチンコ業界は円高の影響を受けにくい。目の前の株価に一喜一憂する必要はなさそうだ。