崖の上のよっしー ~生き残るか落ちるのかの正念場~ パチンコ業界族議員は本当に誕生するのか?

2022.07.04 / 組合・行政

7月10日に投開票日を迎える第26回参議院議員選挙。オールパチンコ業界で、自民党の公認候補・木村よしお氏を全面的に支援していくことを力強く表明したのは、今年の3月15日のことだった。あれから3カ月半。投開票日まで余すところ1週間。当の木村よしお氏は当落線上の崖っぷちに立っていると言われている。果たして、パチンコ業界初の族議員は誕生するのか。それとも-

当落分岐の投票数は何票なのか?

まずは当選・落選の分岐となる得票数はどれほどなのか。参議院選挙の全国比例は、選挙システムがややこしく、まずは投票結果に応じて各政党に「当選者数」が割り当てられる。その上で「候補者名」が書かれた投票数を集計し、政党内順位が確定し、当選者が決まる。

まず今回の参議院選挙で自民党が獲得する全国比例の議席数は「19議席±1議席」というのが大方の見方であるし、これはほぼ間違いないと言われている。ちなみに2016年、2019年の参議院選挙の際も自民党の全国比例獲得議席数は「19」である。その上で、木村氏が当選するためには、自民党全国比例立候補者33名の中で、18番目~19番目の得票数でなくてはならない。

では次に、19位になるためには、どれくらいの得票数が必要なのか。

2016年の自民党19位は、園田修光氏の101,154票。

2019年の自民党19位は、赤池誠章氏の131,727票。 

今から3年前、2019年の参院選・全国比例の当選ライン。
23番手に尾立氏、24番手に木村よしお氏がつけるも落選した(引用:NHK選挙WEB/2019参院選)

読者の皆さんも最近よく耳にするであろう「2枚目の投票用紙には候補者名を※」という言葉がより広範に浸透していくことにより、同じ「19位」でもその得票数は増加傾向にあり、今回の参議院選挙での19位の得票数は15万票を超えると言われている。全日本遊技産業政治連盟(全遊政連)の幹部が、「当選には18万票が必要」というのは、多少の煽りがあるにしても、大げさな数字ではないのだ。

※【参考:候補者名を書いた投票比率】

2016年 自民党総得票20,114,788票、候補者得票数4,875,159票、候補者名記入率24.2%

2019年 自民党総得票17,712,373票、候補者得票数4,999,848票、候補者名記入率28.2%

木村よしお氏の現在地は?

では木村よしお氏は、今回の参議院選挙で「15万票」の壁を越えることが出来るのか?まず「パチンコ業界票」以外の数字について考えてみる。

木村氏が落選した前回の参議院選挙での得票数は92,419票。これにパチンコ業界票が6万票加われば15万票達成するだろうと思えるのだが、ことはそう単純ではない。木村氏陣営の関係者の言葉によれば、(パチンコ業界票を除く)木村氏の基礎票は3万票~4万票だと言う。その理由として推測されるのは、木村氏の年齢の問題や、地場である香川県における自民党支持率の低下はもとより、木村氏自身が政治活動や選挙運動の多くの時間をパチンコ業界に割いていることから、基礎票は半減以下となる可能性は高い。結論から言えば、パチンコ業界票は最低でも11万票が必要だ。では、パチンコ業界はこの11万票を作ることが出来るのか?

3年前、パチンコ業界が尾立源幸氏を支援し、初めて族議員を国政に送り出そうとした際、パチンコ業界票は6万票~7万票あったと言われている。単純に基礎票3.5万票+業界票6.5万票であった場合、それでも5万票ほど足らない状況だ。

15万票を達成するための業界の取組み

「木村15万票」を達成するために、パチンコ業界も無策ではない。初めて国政選挙に取り組んだ3年前の参議院選挙の時と比べ、様々な点で密度ある活動を展開している。

何よりも3年前と違うのは、全日本遊技産業政治連盟という活動主体を全面に押し出し、業界13団体がワンチームで取り組んでいる点。少なくとも3年前は、日工組や日遊協は表向き、政治活動や選挙運動に参加しておらず、活動の主体も時に曖昧であり、どこか散発的な印象を拭えなかった。しかし今回は、全遊政連の幹部や事務局が一体となり、木村氏の活動を全面的に支えている点や、HP、YouTubeチャンネル、Twitterのオウンドメディアを展開し、幅広い支持を取り付けるべく積極的な情報発信を展開している。

また前回と大きく変わっているのは、この3年の間にパチンコ業界が、全国18道県に自民党の職域支部を設立していることだ。自民党の職域支部というのは、特定の業界内における自民党の支部(活動拠点)のことで、パチンコ業界の18の職域支部では現在4500人以上の自民党員を抱えている。この職域支部が各地域での政治活動、選挙運動の拠点となっていることで、3年前以上の票の掘り起こしが可能となっている。

パチンコホール従業者約20万人にメーカーや販社等の従業者も併せて25万人以上いる業界関係者の協力をどれだけ得ることが出来るのか。取材に行く先々のホールでは選挙の話になる。身近に聞く話に限られるが、3年前には投票に行かなかった人たちが、今回は期日前投票に行ってきましたと言う。「崖っぷちのよっしー」を国政に引き戻すのか、それとも崖下に突き落とすのか。その「決定権」は、業界関係者一人ひとりが握っている。

 

願わくば、パチンコ業界の歴史の新しい1ページを見てみたいと思う。

本稿がその一助となれば幸いである。

木村よしお, 族議員, 参議院議員選挙