【参院選まであと2カ月】国会にパチンコ族議員を送り出す意義とは?

2022.05.10 / 組合・行政

族議員と聞いてどんなイメージを持つだろうか。特定業界にのみ利益をもたらす〝腐敗政治家〟のイメージを持つ人は多い。実際は、精通した分野について省庁の政策決定に影響力を及ぼし、業界の利益を代弁する国会議員であり、今、我々がもっとも必要とする人材である。

参加総数5700万人!
日本最大のイベントとは

日本最大のイベントは何かと問われたら、多くの人はアーティストのコンサートやスポーツを思い浮かべるだろう。しかし、日本における最大のイベントは〝国政選挙〟だ。

昨年の衆議院議員選挙の小選挙区投票総数は5890万票。3年前の参議院議員選挙は5713万票だった。投票率によって上下するものの、国民の約半数が参加するイベントは選挙において他にない。日本の未来を決める重大事項であり、18歳以上の〝大人たち〟が熱狂する(人によっては冷めた目で見る)のだから凄まじい。当日はNHKから在京キー局、地方局にラジオ放送まで数時間に及ぶ特番を組み、日曜日の人気番組をすべてすっ飛ばす。普段なら砂嵐か通販番組になる深夜帯まで、有識者が喧々諤々の議論を交わすのはご存知のとおりだ。

まもなく、この日本最大イベントがやってくる。公示は6月22日、投開票は7月10日を予定。真夏の参議院議員選挙は、我々にとって〝雪辱戦〟である。3年前、尾立源幸氏を立て惜敗した、あの屈辱を晴らす時がやってきたのだ。既報の通り、パチンコ業界の政治団体・全日本遊技産業政治連盟(阿部恭久会長)は去る3月15日、自民党比例代表の公認候補、木村義雄氏を支援すると発表した。

「誰?」と感じた方も多かろうが、木村氏はかねてより「時代に適した風営法を求める議員連盟」(いわゆる議連・パチンコ議連)に属し、御年74歳の大ベテランである。政治経験に乏しいパチンコ業界にとって、衆議院議員を7期、参議院議員を1期務めた実力は頼もしい。

公示直前となったこの時期でも、選挙に白けた視線を送る業界人もいるだろう。何をそんなに熱くなっているのか、オレは政治なんて興味ないんだよと。しかし、その認識は甘い。警察官僚がパチンコ業の行く末を決める時代は過ぎ去り、すでに〝政治〟の時代となっているのだ。政治家を選ぶ〝選挙〟を軽んじる態度は、すなわち自分自身の職業を軽んじることにつながる。そもそも前述の通り、国政選挙は日本最大のイベントだ。白けたところで得することは何もなく、むしろこのムーブメントに乗る理由、熱くならねばならぬ明確な理由がある。

なぜ政治が重要なのか。なぜ族議員が必要なのか。なぜ我々は木村義雄を当選させねばならないのか。1つずつ見ていこう。

族議員を出すメリット
業界の〝突然死〟を避ける

そもそも国会議員とは、選挙により選ばれた国民の代表であり、国会の衆参両院において政治を審議する者をいう。国会は立法府とも呼ばれ、おなじみの風営法もここで審議され、可決して初めて効力を発揮する。もしも国会でパチンコを禁ずる決議が成された場合、我々はただちに失業の危機となる。

逆に、ホール経営の自由度を拡大する法改正が行われれば、今まで禁じられていたことも可能になる。ホール関係者なら日々の営業で「クソみたいな規制」と感じる事柄に出くわすことも多いだろう。そんな、パチンコの発展を阻む規制もすべて法に則っており、法を改正できるのは国会議員なのだ。

パチンコ業界は長らく警察だけを見てきた。生活安全局保安課長の言葉に耳をそばだて、課長補佐の講演を金科玉条のように扱ってきた。監督官庁に対する尊崇の念を超え、隷属に近い感覚を持つ人も多いだろう。しかし、警察行政のトップが誰なのかは意外と知られていない。生安はあくまで組織内の部局でしかなく、〝課長〟はその下だ。トップは県警本部長でもなければ警察庁長官ですらない。国家公安委員長、日本政府の大臣こそが警察行政のトップなのだ。

過去、国家公安委員長を努めた人間は基本的に国会議員である。彼らは選挙で選ばれる以上、選挙に興味を持てないのはパチンコ業界そのものに興味がないと言われても仕方ないといわれるゆえんだ。我々を苦しめた遊技機の大量撤去や〝遊技くぎ〟の問題は、2016年の国会答弁に端を発している。内閣委員会で「違法な機械が大量に出回っていた」と発言した主こそ、河野太郎国家公安委員長だ。もしも彼が徹底的なアンチパチンコであったなら、我々の業界は2016年で幕を閉じていた。

国会議員は全国民のために行動するが、人間である以上「当選させてくれた人」への恩義を感じ続ける。小選挙区ならば地元有権者、比例区ならば全国の支援者だ。いわゆる〝族議員〟とは、特定の業界団体の支援を受けて当選した議員であり、彼らは「当選させてくれた団体への恩義」を胸に活動する。族議員の有無は業界のすごしやすさに直結し、パチンコに対する正しい認識が国会内に広まれば、2016年のような悲劇は回避できるだろう。

木村氏の支援を打ち出す全日本遊技産業政治連盟のパンフレット。

 

なぜ参議院選? なぜ自民党?
なぜ自前の候補者じゃない?

前回選挙で尾立氏を担いだ際、なぜ衆議院選ではないのかと疑問の声が上がった。確かに衆議院には多くの〝優越〟があり、歴代総理大臣もほぼ衆議院議員だ。衆議院の任期は4年と、参議院の6年と比べ短く、しかも〝解散〟があるため民意を反映しやすい。ゆえに衆議院が格上となる。

一方、参議院は解散がないことで、落ち着いた政治活動を行える。3年ごとに半数ずつ改選されるものの、当選してしまえば6年間は議員の地位を維持できるため、参議院は〝良識の府〟とも呼ばれる。族議員として活躍してもらうことを考えた場合、任期4年の(しかも解散でもっと短くなる可能性のある)衆議院より、6年の参議院のほうが支援する側としてはありがたい。誤解を恐れずに言うならば〝コスパ〟に優れているのだ。

同じく前回の選挙では「自民党は支持できない」との声も多かった。安倍政権を批判し、自民党の一党独裁を危惧してきた人たちは断腸の思いだったと聞くが、自民党の候補者を応援するには理由がある。日本の戦後政治をひも解くと、自民党単独政権の時代が長かったため、企業や経営者は自民党支持、労働者は野党支持と、いわゆる55年体制が続いた。

現在も経営者団体の経団連は自民党、労働組合の連合は立憲民主党や国民民主党、連合と敵対する全労連は共産党を支持している。個別に労働環境の改善を訴えるならば野党側だろうが、業界としての未来を構築するならば、国会で法律を通さねばならないため、どうしても与党系になる。実際、立憲民主党の長老であった赤松広隆元農水大臣は、メーカーやホールから献金を受け続けたものの、パチンコ業界の要望を政策に落とし込まず政界を引退してしまった。つまり、明確な意思を持ってパチンコ業界を応援し、パチンコ業界に恩義を感じ、我々の要望に沿った政策を立案してくれる議員が必要なのだ。

<以下、PiDEA189号にて>

木村義雄, 尾立源幸, 参議院議員選挙, 7月10日, 全日本遊技産業政治連盟, 自民党比例代表, 時代に適した風営法を求める議員連盟, 族議員