岡野陽一のパチンコ人生訓 Vol.10「年末のオールナイトパチンコ学んだ『生きがい』」

2022.03.04 / 連載

「借金芸人」岡野陽一が送るPiDEA新連載!
パチンコを打っていく中で岡野陽一がたどり着いた人生の境地を、月替わりの金言とともに語る。


今月の金言

「年末のオールナイト

パチンコで学んだ『生きがい』」

 

:岡野陽一

 年末、1人で三重のオールナイトパチンコに行ってきました。30日に名古屋に前乗りして、31日の朝5時に起きたら雪が降っていたんです。僕はさながら死地に向かう侍。めちゃめちゃ雰囲気のある朝でした。8時半に入場抽選ボタンを押したら645番。並ばないのと同じじゃねーか。

 僕は一番好きなマクロスが打ちたかったけど、結局埋まってしまっていたので牙狼でスタートです。回して見るとまぁまぁ。想定内。

 オールナイトが楽しいのって夜中なんですよ。24時にカウントダウン的なものがあります。その時、僕はハナハナに行って、皆が「3、2…」とカウントダウンやっている時にレバー叩いていました。打ち納めと打ち始めをちゃんとやりたかったんです。

 深夜2時くらいになると、なんだか悪いことしているような絶妙な背徳感が込み上げてきてワクワクします。明け方になっても人はまったく減りません。地元の方に聞くと、「朝仕事に行く人がやめていくから8時とかが狙い目だよ」と教えてくれて、なるほどなと。結局、朝7時くらいで念願のマクロスに座ることができました。

 それでも夕方くらいになると疲れがどっと出てきます。夕方といっても閉店まであと8時間ある。体力もそうだけど、「僕はなんのためにこれをやってるんだろう?」と冷静になる時間帯がくるんです。疲れてるし眠たいので帰りたいと思ってるけど、帰れるんですよ、別に。打ち続けたからといって何かをもらえるわけでもない。家の近くで打っていたら帰れるし、1月1日の夜にはゆっくりできる。その事実に押しつぶされそうになる時間がありました。

 人間って意味のないことってなかなか頑張れないじゃないですか。途中寝ちゃったりしたけど、夜7時くらいに大当り89回のマクロスをみつけて、「この台を100回超えさせてみたい」とちょっとテンションが上がりました。何が目標か分かっていなかった僕に夢ができたんです。それを見つけた瞬間からめちゃめちゃ楽しくなって、無事閉店まで打ち切って、104回で終えることができました。

 結果は16万2000円負け。疲れと異常な右手の痛み以外、何も残らなかったオールナイトでしたが、「生きがい」を学びました。人間、意味がないことは本当に頑張れないことが分かったんです。誰にも頼まれてないですし、お金は減るし、正直ある程度の時間から勝つとも思ってないですし。マクロスを100回にするというしょうもない目標でもすごい楽しくなれた。

 これはまさに人生そのものです。何のために生きているか分からない。でも、なんとなく最後まで生きたい人ってたくさんいます。大人は夢や目標を持てと言うけれど、僕がマクロスを見つけたように、何のために生きている分からない人は三重に行けばすべてが分かるんじゃないでしょうか。少々、授業料は高いですけどね。

 ちなみに僕は打っている最中は今年1年というか、毎年何をやってるんだろうと考えていますね。仕事のことはまったく頭にありません。パチンコで人の台と比べることの愚かさを知ったので、「みんな今働いてんだろうな〜」みたいなことはまったく思わないんです。何も考えていないんですけど、僕にとってはそれがいい時間なんです。意識高い人がインドに行ってガンジス川を眺めるような感じと一緒で、多分、人生に必要ないんだけどいい時間なんです。

 

旧規則機とのサヨナラ岡野陽一はどう捉える?

 それはそうと、1月末で旧規則機とサヨナラになりますが、元も子もない話をしますけど、僕は必要だったのにお別れしなきゃいけないものなんてないと思っています。お別れしたということは必要じゃなかったんですよ。「あれさえあれば……」と考えちゃうことがもう間違いなんです。

 空気階段の鈴木もぐらは、大学の学費を4号機で稼いでいましたが、4号機がなくなって大学を退学することになりました。でも、もぐらって結果的にキングオブコントを優勝したんです。もし4号機がホールにあったら、あいつは今も4号機を打っていて優勝もしてないだろうし、僕も芸人にならずにずっと打ち続けていたと思います。すごい好きだったのにお別れしなきゃいけなかったというのはもしあったとしてもそう思わない方がいいです。

 恋愛でもあるんでしょうね。別れるしかなかったみたいなことが。昔はね、戦争に行かなきゃとかお別れがあったかもしれないけど、それって決まっていたことでどうしようもないことじゃないですか。だから麻雀の後付けみたいな感じで、後付けで中を持ってきて「あれで良かったんだ」と思えればそれでいいんです。

 パチスロ好きな方とかにとっては厳しい時代が続きますけど、パチンコはまったく心配していません。なぜならパチンコに関しては今が最高の時代としか思っていないからです。喫煙所とかで、「昔やっていたけどもうパチンコをやめたよ」という人がいます。それって大体4号機の爆裂時代を過ごして5号機になってやめた人。その人たちが今のパチンコをみたら戻って来るんじゃないかなと思うので、そういう人がいたら「今のパチンコは最高です」ということを伝えています。

何のために生きているのか分からない人は

三重に行けばすべてが分かるんじゃないでしょうか

 

岡野陽一, 岡野陽一のパチンコ人生訓