岡野陽一の今月の汁台「岡野陽一、おじさんの立ち回りを説く」

2026.03.13 / 連載

岡野陽一、おじさんの立ち回りを説く 

 年末に「空気階段の大踊り場」というイベントがありまして、その中に孤独なおじさん通称〝こどおじ〟をゴッドタレントのような形で発掘していく企画がありました。以前、「岡野陽一のオジスタグラム」というルポ企画もやっていたこともありまして、どうやらおじさんとの縁があるようです。これを機におじさんについて語っていきたいなと思います。

 年齢を重ねてくると、応対する相手が年下ばかりになってきますね。気づいたら周りが年下だらけ、という状況で、おじさんが一番やっちゃいけない振る舞いって何だと思いますか? これはね、私はちょっと持論がありまして、「本音を言わない」ということです。

 立場とかもあると思うけど、おじさんになると若い時には誰しも持っていた、「言いたいことを言う」という権利を失うタイミングがあります。正確には本音を言っても何一ついいことがないことに気付くんですね。おおむね30代後半くらいから。芸人なんかですと、後輩芸人と呑んでいる時に「あれダメだぞ」とかアドバイス的なことをすることがあります。自分が若い頃なら、そういうことを意見しても「そんなことはない」「それは違くないですか」と議論になっていたりしました。でもある程度おじさんになってくると、相手が反論してこなくなるんですねぇ。同世代の人に言われたらすっと入ることも、おじさんに言われると入ってこない。だから私にとって、口はついているけどないのと一緒なのです。

 本音を言うことは羨ましいことです。たった4回でもう終わってしまいましたが、私の冠番組である「岡野陽一の負けてもウマい飯」という番組がありました。競馬場やボートレース場近辺にある飲食店へ行くというグルメ番組です。そういうお店に行くと、人生の先輩である“師匠方”がいるんですね。師匠方でありがちなのが、上から目線でボケてきたり、言われてちょっと嫌なことを言って面白がったりするやつです。師匠方はそういう生き物なので、とても愛らしくて好きなのですが、一般社会の中でそういうことは面白がってもらえません。そもそもおじさんが会話の中でウケを取ろうとするなら、自分がどういう位置なのかを分っていかればウケるんだと思います。

 社会的には、おじさんってなんの魅力もないじゃないですか。足も遅いし、筋力も少ない、記憶力も悪い、何一ついいことはない。自分がいかに社会の中で下の位置にいるかが分かると、こんなスベリ方はしないのですが、とにかく人からどう見えているかがボケるなら重要かなと思います。私自身が本音なんて必要ないと思って日々を過ごしているので、だからこそ、本当に好きなことをやって、好きな飲み物を飲んで、好きな言葉を吐くおじさんたちが羨ましいなと思うことはあります。いずれはああなりたいなと思っています。

 私が思うに、我々おじさんが手に入れる武器っていうのは、生きやすく生きるということだけ。おじさんってみんな楽しそうじゃないですか、なんか分かんないけど(笑)。なんでこの人笑ってんのと。あれが最高系だなと思うんです。私はまだそこまで到達していませんが、着る服もそう。ジローラモよりもまったくファッションを気にしていないおじさんに憧れますけどね。人間のエネルギーが10あるとしたら、誰しも身だしなみには1くらい使っているんですが、それがゼロってことは、その分のエネルギーがどこかにいってるんですね。そういう人の方が見ていて面白いなと思います。おじさんになるということは世捨て人になること。世の中のことをあんまり考えない。自分を楽しくさせるプロ。これでいいんです。

 一方で、部下とかもいるサラリーマンのビジネス系おじさんも社会には山のようにいると思います。指導しなくてはいけないけど、若い人にはあまり声が届かない。難しいところです。こういう人は言い方を考えるくらいしかないです。高田純次さんのように常にふざけているスタイルは素晴らしいのですが、あのスタイルだと本当に伝えたいことが伝わらないというのが難点(笑)。「俺もできないことだけど〜」といった同調スタンスなら嫌われないと思いますけど、どうでしょうか。あるいは一ボケ入れられるといいですよね。例えば、「この書類はこの棚に置いちゃダメだぞ!」と叱った後にそこに置くとか。それで「ちょっとぉ!」と突っ込ませるとか。

 ただ、なんとなく思うのは、ビジネス系おじさんはあんまりボケない方がいいと思います。なぜかというと、ボケとツッコミではツッコミの方が社会では必要とされる、〝うまく回るスキル〟だからです。ロケとかで、自分が変なことを言って笑わせようとすると滑って変な空気になることもある。でも相手が言ったことに対してツッコミを入れてあげると笑いになることは多い。基本向こうを面白くしてあげるイメージの方が人付き合いはうまくいきます。

 ボケるおじさんって、基本そんなに求められてないですよ(笑)。自虐も一つの手段かもしれませんが、あれも悲壮感漂うようなことを言っても残念がられるだけなので、実は難しいですからね。おじさんは本音は隠して上手に突っ込めるようになりましょう。 

「この台は面白くて何度か挑戦しているのですが、まだラッシュ未体験で、最近はYouTubeでこの機種の動画ばっかりを見ています。ラッシュは絶対面白いはず。最近の台って入賞時を見る台が増えましたよね。牙狼にしても、マクロスにしても最後に1/2の一発をねじ込む。自分はつくづくそういうのが好きなんだなと思わされます。デジタル機だと図柄当たりした時しか最後の1/2にいけないけど、うまい棒とか沖ドキは何回もあれを味わえるんです。この時の汁がやばいですよね。玉が入るところを見て汁。入賞時汁を味わいたくて打っているようなものです」
岡野陽一, 岡野陽一の今月の汁台