知らないと損する確定申告のキホン①【FP王子の知っトクお金の秘密】

2020.03.11 / 連載

年金問題に消費増税。膨らみ続ける金融不安や悩みなど〝お金のアレコレ〟に人気ファイナンシャルプランナー高橋成壽が斬りこむ!

税金を知らないと損する
年末調整と確定申告の知識

【前編】

自営業だろうと会社勤めだろうとも毎年やってくるのが確定申告。会社員であれば自分で手続きを行うケースは少ないが、その代わりに年末調整という形で会社から申告書類を書かされることがほとんど。
会社から提出を求められて仕方なく記入している人が多い一方、所得税の還付や節税効果を期待して楽しく記入する人もいます。

その差は税金の知識があるかどうか。
あなたはどちらですか?

 

いざというときの税金を減らすための仕組み


パチンコホール関係者である本コラムの読者さま方の多くは会社員の立場であると思います。
年収2000万円以上の方や、副業収入がある方などの一部の方は自身での確定申告が必要となりますが、その他一般的な会社員の方は基本的に会社から求められる年末調整の書類に記入すれば完了です。

しかし、年末調整だけでは控除の対象にならないものがあります。これらに関しては会社の年末調整とは別に、個人で確定申告を行うことで税金が還付される場合があります。

 

●医療費控除

1年間の医療費が一定額を超える場合には、税金計算の対象となる所得額を下げる効果、つまり控除があります。
一般的な会社員の方であれば、年間の医療費総額が10万円を超える場合は医療費控除の対象です。自分自身だけでなく扶養家族の医療費も対象となるため、出産に伴う医療費や歯科治療が高額になった場合などは医療費控除を利用するチャンスかも。

所属する会社や健康保険組合によっては年間の世帯医療費を通知してくれる場合もありますが、気になる方は一度チェックしてみると良いでしょう。もしかしたら10万円を超えていて税金が還付されるかもしれません。

医療費控除の対象については一定の条件がありますので、詳しくは国税庁のページを確認ください。
参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

例えば、歯列矯正については対象となる場合・ならない場合があります。
必要以上に高価な治療だった場合などは医療費控除の対象外です。また、子供の歯列矯正は対象となるケースが多いですが、一方で大人になってから見栄えをよくするために行った歯列矯正は控除の対象外となることがあるようです。
詳しくは治療を実施する歯科医に確認したうえで、税務署にも確認した方がよいでしょう。

 

●雑損控除

災害や盗難によって資産に損害がでたときは、一定額の所得控除を受けることができます。
地震、台風、洪水、大雪、落雷、火災、害虫などの自然災害はもちろん、盗難と横領の犯罪被害によって発生した損害が対象です。ただし詐欺や恐喝の場合は対象外となります。

最近は地球温暖化の影響により、年に複数回単位で大規模な自然災害が発生しています。そんな地球環境の変化により誰しもが被害に遭う可能性がある中、被災した人はこの雑損控除の存在を知っているかどうかで納税額に大きく差が出る可能性があります。

雑損控除の金額は①(損失額)―(総所得金額の10%)、②(災害関連支出の金額)―5万円、のいずれか多い方の数字となります。損失が大きく、その年の所得から控除しきれない場合は翌年以降3年を限度に繰り越して所得金額を減らすことができます。ただし、保険金の受け取りがある場合は控除額が減ります。

 

●寄付金控除

特定の団体に寄付を行った場合に、寄付金額に応じて所得控除が適用されます。
対象が広範囲となるため、すべての団体をここに列挙できませんが、寄付金控除の対象となるかなどの詳しい情報は各団体のホームページや案内などに明示されています。控除の対象となるか、また寄付の証明となる領収書の受け取り方法などが不明な場合は事前に確認してください。

ちなみに寄付金控除の金額は、①寄付金の総額、②総所得の40%、のいずれか低い金額から2千円を差し引いた額となります。
最近話題のふるさと納税もこの仕組みの対象となります。

 

今回紹介した控除制度は年末調整に含まれず、確定申告を自己で行うことで対象となるものです。流行りにのってふるさと納税を試した方や、一般の方でも医療費控除なんかは知らず知らずのうちに対象になっていることもあるでしょう。今一度見直して確定申告にチャレンジしてみるのも良いかもしれません。

また今回紹介したもの以外に年末調整に含まれている生命保険や地震保険料の控除などもあります。しかし、これら保険料の控除や扶養家族の追加などは会社への書類提出・申告を忘れていれば年末調整で処理されず、別途自身での確定申告をしなければ還付されませんのでご注意ください。

次回の後編では生命保険控除をはじめとした所得控除の活用についてお伝えします。


著者プロフィール

高橋成壽

慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、金融系のキャリアを経て2007年にFP事務所を設立。2020年より東海大学湘南キャンパスで非常勤講師としてお金の授業を担当。
超富裕層向けの資産保全サービスを提供する寿FPコンサルティング、富裕層向けの資産運用サービスを提供する寿アセットマネジメント、現役世代を応援するライフデザインセンターを経営。無料のライフプラン相談サイト「ライフプランの窓口」、無料のマイホーム相談サービス「住もうよ!マイホーム」、保険見直しサービスの「保険チョイス」を運営している。

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