目に見える形の社会貢献「防災拠点ネットワーク」の取り組み(Part2)

2021.10.08 / ホール

Part1

目に見える形の社会貢献

「防災拠点ネットワークの取り組み」からの続き

 

「防災拠点ネットワーク」の活動目的のひとつに地域の防災自助率の向上がある。ホール自体の備蓄はもちろん、電池や防災用ウェットティッシュなど家庭用防災グッズを総付景品として扱う事は地域の防災自助力向上に大きく貢献する。


「配布」「提供」することで根付く防災意識

ホールでの防災備品の配布は直接的に地域のお客さまへ家庭備蓄を呼びかけることにもつながる。実際にそれらを持ち帰ってもらうことで地域全体の防災意識が高まり、地域自助力の底上げになる。現在は防災備蓄品を置いているパチンコ店も増えており、ローリングストック(日常的に非常食を食べ、食べたら買い足すという行為を繰り返すことで、家庭に常に新しい非常食を備蓄する方法)等を含めた地域への周知活動も同時に行っている店舗もあるという。

また、ユーザーが定期的に訪れるホールを活用する方法として「総付景品」の活用も効果的だ。コロナ禍以降、ユーザー以外がパチンコホールを見る目は厳しい。防災への取り組みはこれらを払拭するイメージアップの意味合いが大きい。そのためにはホールに来たユーザーに総付景品として防災グッズを配布し、今後の備蓄の第一歩としてもらうのだという。

「いま世間ではSDGsという単語がようやく浸透してきた時期です。これは2015年9月の国連総会で採択されたもので、未来に向けた都市の在り方についての努力目標を差します。貧困や飢餓、健康や教育、ジェンダーやエネルギーなどあらゆるジャンルの目標が設定されていますが、災害対策を含めた『11.住み続けられるまちづくりを』『13.気候変動に具体的な対策を』の項目は災害が多い日本では特に注目され重要視されている項目です。達成期限として設定されている2030年が近づくにつれ、より世間のSDGsへの関心や注目度は上がっていくものと推測されます。パチンコホールでの防災備品配布はこの世の中の動きに完全に合致したものであり、実際に国内で行われているSDGsの目標達成のための行動として、パチンコホールがこういったことをしています、というのがクローズアップされていくことが考えられます。このような努力が広く知られれば、それはこの業界で働くすべての人間にとって必ずプラスになると思います。何より、普段お店に来ていただいているお客さまの命、そしてご家族の安全などを守ることにもつながるので、積極的に活用していただきたいと思います」と大島理事長は語る。

防災用品は備蓄が前提のものであるが、どうしてもそれを面倒であるとか、もったいないと考える人もいる。総付景品を利用した防災備品の配布は、ホールがそれを渡すことで「備蓄」に対する意識的な壁を取り払う。一度意識が備蓄に向かい習慣化されると、その分地域自体の自助能力が向上していく。また、そうなると世間での「防災」と「パチンコホール」のイメージはどんどん近くなり、やがては「防災備品をもらいにパチンコホールへ行く」という新たな価値観が生まれるかもしれない。

 

総付景品のパッケージを利用して「家庭の備蓄率向上」の周知も行っている。公式キャラクターの名前は「ひにゃん」だ。

ホール自体が備蓄するにも意味がある

ユーザーのためにホール側で用意した総付景品などは、災害時にそのまま店舗が提供できる備蓄品としても活躍する。行政と組合との協力体制という意味ではトップランナーである佐賀県では、地域貢献活動の一環として組合加盟店舗およそ50店舗が、災害時に簡易トイレやアルミ製ブランケット、飲料水などの防災備蓄品を10月1日より無償提供すると発表した。この件はネットメディアのみならず地上波のニュースなどにも取り上げられ話題となったが、FNNの取材に対し県遊技業協同組合青年部会宋太賢副会長は「今回は防災活動への取り組みへの第一歩として、防災備蓄品をストックしておくという活動に踏み出しているが、この他にも我々遊技業業界にできることはないのだろうかと日々考えながらやっていきたい」との考えを示した。

佐賀県は今回の発表に先立ち、災害時にホールの駐車場を活用する協定を4月に締結していた。8月の大雨の際には実際にパチンコ店の立体駐車場の開放が行われ大きな注目を集めた。佐賀新聞によると、2年前に発生した佐賀豪雨に比べ8月の大雨では、日本自動車連盟(JAF)や自動車販売会社への水没に伴う救助要請が減少。ある自動車販売会社への取材では、水没の相談などへの対応件数が10分の1程度になっているとの記事が掲載された。佐賀、唐津、武雄市で開放された駐車スペースは約2600台分。そのうち実際に利用されたのは230台であった。

今回の発表では、災害時に実際に行われた実績がある駐車場開放だけではなく、それに付随して防災備蓄品の無償提供が行われることになり、より緊急避難場所としての利便性が高まる形になる。

この流れは防災備品の総付による地域の防災意識底上げや地域住民の自助力向上から、さらにもう一段進んだ形になる。災害時に無償で水を配布するとなれば、人はそこに集まり避難場所としての活用も自然なこととなる。通信インフラが不安定な際には、安否不明者を探す人にとってとても重要な場所となるだろう。佐賀県の発表は災害時にパチンコホールと地域住民が互いに助け合う「共助」の場を提供することにつながる。

パチンコホールで防災備品を取り扱うこと、総付として配布すること、そのために備蓄をすることは、地域に各種インフラを備えた強力な防災拠点を設置することと同義である。もちろん佐賀のみならず、このパチンコホールの「防災拠点化」の波は徐々に日本中に広がりをみせている。業界全体のイメージアップに大変重要な行動であり、今後の動きに注視していきたい。

 

実際に防災拠点ネットワークに参加しているホールではこのような運用がなされている。

 

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