【注目エリアレポート】ついにオープンした「楽園立川店」 強豪・大型店ひしめく激戦地の勢力図【東京・立川市】(後編)

2021.09.15 / ホール

「ハイパージアス」「プレゴ」「D'STATION」と1000台規模の大型店がひしめく立川駅周辺。大型店競争から撤退した「メガアイオン立川」を昨年買収した楽園がついに7月、立川店をオープンした。地域ナンバーワン店をめぐる争いは〝大本命〟の出店でますます熾烈になる一方で、市場全体の活性化や商圏の拡大も期待されている。

変則的な多層階を生かすさまざまな仕掛け(楽園立川店/1552台)

お盆商戦前の8月7日の土曜日にグランドオープンした「楽園立川店」。旧「メガアイオン立川店(1550台)」からの居抜きで、昨年3月から改装休業に入り、コロナ情勢・旧規則機撤去状況を睨みながら準備を進めてきた。

「楽園」も競合他店同様ペデストリアンデッキからの2階入店がメインになるが、1552台という台数規模からすると入り口の間口は狭く、かつフロアへは階段を数段降りる必要があるなどややクセのある構造となっている。

取材当日は、マイクを付けたスタッフのお出迎えで存在感を高めつつ、「段差注意」の声掛けを行っていた。

楽園はこれまでにも「大宮店」や「渋谷道玄坂店」など変則的な多層階店での営業を多くこなしている実績があり、初めての来店でも店内で遊技客が迷わないよう「標識系」のサイン掲出は参考になる点が多い。

通路幅を広く設け、アクセント的な曲線島でフロアの奥に誘因したり、狭いトイレが多い中で1カ所だけ広いトイレを設けることでマイナス要素を〝上書き〟するなど、細かな工夫もみどころだ。

駅前競合3店舗が多層階構造を生かして「フロア分煙」を採用しているのに対してオーソドックスな「フロア全席禁煙」は、差別化という見方もできるが、楽園他系列店でもフロア分煙店がないことを考慮すると法人としての方針でもある可能性は高い。もちろん、「分煙を採用しない」方向はあってしかるべきだが、ピーク時の利用状況を見ると屋外喫煙不可で、各フロアに喫煙ルームが1~2カ所では単純に数が足りていないように思える。

 

入店しやすい動線と高い営業感度が強み(ハイパージアス立川店/983台)

JR立川駅の南北自由通路南側、ペデストリアンデッキ真正面に見える商業施設「アレアレア」の1~3階に店舗を構えるのが「ハイパージアス立川店」(983台)である。

メインルートはペデストリアンデッキから3階パチンコフロアへの入店となるが、旧繁華街的位置づけのWINS方面と駅を行き来する際に利用されるペデストリアンデッキへのエスカレーターが目の前で人の流れはあり、地上からの1階・2階への入店もしやすい。1階と2階は加熱式タバコOKのフロア分煙を採用し、3階にも喫煙BOXを多く設けるなど喫煙者に配慮された作りとなっている。

ペデストリアンデッキからの入店は3階のパチンコ4円貸しフロアで、「玉積み」を生かした出玉感で来店客を圧倒する。台数規模的に実客数では「楽園」に譲るものの、海・ジャグラーなどの固定層からの支持も厚く、「とある魔術の禁書目録」などのアニメ版権でコーナーづくりした〝あにぱち〟も反応が良い。トイレ空き情報・セルフカウンターなど、都内繁盛店の良い点を積極的に取り入れる営業の感度の高さが強みといえる。

最重要旗艦店として巻き返しを図る(Super D’STATION立川店/1000台

駅前商圏唯一の北口側にある店舗である。モノレールの立川北駅の最寄りになるが、乗り換え動線上からわずかに外れやや視認し難い。加えて、ペデストリアンデッキからは2階エントランス内エスカレーターで下って遊技フロアにインするグランドフロアを持たない店舗で、ポテンシャル発揮にはパワーを要するロケーションになっている。

地上から入店しやすい地下1階(海系・デジハネ・パチンコ低貸)は禁煙フロアで、1階(パチンコ4円貸し・パチンコ低貸)、地下2階(パチスロ46枚貸・パチスロ2.5円貸)は加熱式タバコOKのフロア分煙を採用している。

店内には「最重要旗艦店 8月13日始動」と楽園オープンに対抗して分かりやすくファイティングポーズを示している。島工事を伴う大幅な配置変更を実施し、以降の施策には「最重要旗艦店」の冠付きとなっている。

好調な「錦糸町店」とセットで「東京には負けられない戦いがある‼」の謳い文句にも店舗の意気込みがうかがえる。

差別化を意識した施策も競合大手に同質化される(P-PORT PREGO立川店/1005台)

モノレール立川南駅の目の前ではあるものの、JR立川駅からは「ジアス」と「楽園」を通り過ぎて行く必要がある。

ペデストリアンデッキからは2階のパチンコ4円貸しフロアにつながる。1段上の3階はデジハネ4円貸し+パチンコ低貸とパチスロ低貸、1階はパチスロ46枚貸しという構成で、1階パチスロフロアのみが「加熱式タバコOK」というフロア分煙を採用している。

主軸機では優位に立つことが難しい商圏支持状況もあって、同店では他店に先んじて立川のロケーションをアニメのモデルとした「とある魔術の禁書目録」を1BOX導入。機種装飾やラッピング自販機・聖地巡礼マップなどのアイデアで差別化を目指した。  しかし、その後は「ジアス」や「楽園」にミート(同質化)されている状況がある。どこの地域でも言えるが、地域一番店でない場合、〝良い施策はオマージュされる〟を前提に〝真似され難いやり方〟や〝上書き・進化させる〟など、常に「施策を無効化されない工夫」が重要となってくる。

総括/6号機でも広域集客は可能。パチスロ営業のヒントに

ペデストリアンデッキ沿いにメガ店舗が4店舗(4540台)集結するホットスポット立川駅前商圏。既存店3店舗および多層階営業の経験が多い「楽園」の動線づくりには一日の長を感じる。

M&A取得段階から分かっていたことだが、楽園は頭一つ抜けた商圏最大規模1552台でオープンした。2番目に大きい「PREGO」と比較しても1.54倍差で圧倒しているが、多層階店舗の場合、「台数規模差がそのまま競争力に反映されない」こともままあるので、単純に「規模が大きいから有利」と決めつけるのは早計である。

元々の立川駅前商圏は、駅前立地ながらパチスロ客数が突出しているわけではなく、「モノレールやバス路線のマイホーム層に支えられている」状況がうかがえていた。それでも、楽園は強気の駅前型パチスロ構成比でオープン。多層階店でキッチリ内装を仕上げると後々のパチンコ・パチスロ比率の変更が簡単ではないことから、相当な覚悟があってのことだろう。確かに、立川駅周辺および中央線沿線は若年・単身割合が高く、中央線沿線に積極的に出店する「メッセ」がここの層を上手く取り込み広域集客している状況を見れば、特化していくシナリオも理解できる。

事実として、立川駅前は繁忙期が明けてもパチスロ先行で盛り上がりを維持し、楽園が集客している分丸ごと増客となっている。それが「射幸性が下がってもパチスロは広域集客可能」というワクワクする可能性をみせてくれている。楽園・ジアスの出玉の後押しは相当なものだが、その後のパチスロ客数・品ぞろえ・採算性に注目して、機会があればぜひ足を運んでみてほしい。そこからこれからのパチスロ営業のヒントが得られるのではないだろうか。

 

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