去年4月に入社した新入社員が、今年1月突然無断欠勤した。
後日、弁護士から店長宛に1本の電話が入った。
「〇〇さんへのパワハラ問題で私が交渉窓口になりました。書類は今日届くと思います」
突然の電話に店長は腰を抜かした。
店長自身、突然パワハラと言われても思い当たる節がなかったが、新入社員がパワハラだと訴えたのはこんなケースだった。
終礼で当該社員に対して「ゴミ箱にゴミを投げ入れないでください。お客様が見ると気分が良くないので、皆さんもよろしくお願いします」と注意した。
これを新入社員は「皆の前で注意を受けて恥をかかされた。精神的にショックを受けた。これはパワハラに当たる」と弁護士を介して訴えてきた。
パワハラは言った本人にその意識がなくても、受け取った側がパワハラと感じれば、パワハラになってしまう。
ホールとしてもこんなことで訴えられたのは初めてのケースだった。
ホールも弁護士を入れて相談した結果、「辞めてもらってもいい」という結論に達した。
その後は精神的ショックを受けたことに対する賠償金ということになる。それは慰労金という名目で支払われたが、たいした額ではなかった。
大手ホールともなるとパワハラ、セクハラ、モラハラ研修を役職者に対して行っているが、数店舗しかない当該店舗では実施していなかった。
パワハラ防止を企業に義務付ける法律が、2020年6月に施行された。そもそもパワハラとは、立場的に優位に立つ者の言動の中で、業務上必要な範囲を超えたものを指す。
パワハラ防止法では、こうした言動に対して「雇用管理上必要な措置を講じること」を義務付けている。2022年4月までに中小企業を含めてパワハラ防止策を講ずることが義務付けられている。
■職場におけるパワハラの定義
・優越的な関係を背景とした言動
・業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
・労働者の就業環境が害されるもの
これらの3つの条件が全てそろった場合、パワハラとみなされる。 同じ職場で働く者が対象のため、正社員だけではなく、契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなど全ての雇用形態の人が該当する。なお、 客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲だと判断される適正な業務指示、指導はパワハラには当たらない。
では、今回の件がパワハラに当たるかと言えば、誰がどう見てもパワハラには該当しない、と思われる。
こんなことで訴える社員には、辞めてもらった方が会社のためにもなる。
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