TAOYA志摩に学ぶホール再生のヒント

2020.08.29 / コラム

営業不振ホテルの立て直しは星野リゾートの専売特許ではなかった。スーパー銭湯のイメージが強い大江戸温泉物語グループも、どこがトライしても匙を投げる不採算ホテルの立て直しに成功している事例がテレビで紹介されていた。

稼働率は連日90%で、業種は違えどもパチンコホールにも立て直しにも大いに参考になる。

そのホテルとは2019年4月にリニューアルオープンした三重県鳥羽市の「TAOYA志摩」だ。前身はセゾングループの堤清二の肝いりで1992年にオープンした旧タラサ志摩ホテル&リゾート(122室)だった。風光明媚な鳥羽湾を借景に、バブルの余韻を残す高級リゾートホテルだった。

2001年、負債総額191億円で民事再生法の適用を申請。同年アールビバンが買収して全日空ホテルに運営を委託する。同社はクリスチャン・ラッセンなどの絵画を販売する画商でホテル経営は門外漢だった。

ある程度ホテル運営のノウハウをつかんだところで、2003年全日空ホテルとの契約を解消。同年アールビバンが直接運営する。

しかし、うまくいかなかったのか2009年にはホテル再生のプロである星野リゾートに運営委託契約を結ぶも、2011年には星野リゾートとの契約を解消。同年ザ・レジェンド・ホテルズ&トラストに運営契約を結ぶ。しかし、2012年には運営方針を巡って三度契約を解消している。

紆余曲折を経て、2018年大江戸温泉物語グループへ15億3000万円で売却される。そんないわくつきのホテルだった。

では、大江戸温泉がどのような改革で再生させたのか?

ホテルと言えども和室も完備していた。和室には部屋担当の仲居さんがついて身の回りのお世話をする。部屋に食事を運び、布団の上げ下げをする。

まず、大江戸温泉では人件費のかかる仲居さんを廃止した。部屋に置かれている浴衣を揃えるのも仲居さんの仕事だったが、フロントに色々なデザインとサイズを揃えて、浴衣選びを楽しいイベントに変えた。

和室の布団は押し入れではなく、部屋に出しっぱなしにした。客側からも「誰も入ってこない方がいい」という意見もあったからだ。仲居さんがいないことで心づけをする必要もない。

仲居さんの人件費を削減して部屋代を下げる努力をした。全室オーシャンビューの部屋が4人で泊まれば半額の9980円になる。高級リゾートホテルとしては破格の値段だ。

集客の目玉は、それまでプールだったスペースを露天風呂に改装した。日本人にとって必要なのはプールではなく、充実した温浴施設だ。

仲居さんを廃止したことで部屋食も廃止になり、バイキングに切り替えた。シェフが目の前で料理を提供するライブキッチンで、熱々の状態で料理が並ぶ。個別に盛り付けた前菜の数々はインスタ映えする工夫が施されている。女子には大うけだ。

風呂上がりの生ビールが飲み放題、夜食のそばが食べ放題はお父さんには嬉しいサービスだ。

こうしてリニューアルオープン以来90%の稼働を誇っている。

ホテルと言えばサービス業だが、その要である仲居さんを廃止する発想はなかなか生まれるものではない。そこを断行して宿泊料を思い切って下げる。部屋と食と温浴は最高のものを提供すればお客さんは自然と集まるというものだ。

ホールもサービス業という概念を捨て、「最高の出玉」を提供すれば自ずと再生するのではないだろうか。客が求める満足する出玉をいかにすれば提供できるかにかかっている。









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