日本は元々、バラ色のギャンブル大国ではない

2020.06.30 / コラム

日報はかなり記事を書き溜めている。その中でのカジノ関連で未掲載の記事が10本近くある。後回しになる理由は、緊急性のものを優先するので、開業が5年先以上も後のカジノ問題となると先送りした結果である。

コロナショックでカジノ大手のラスベガス・サンズが日本のIRから撤退表明したのが、5月13日のことだった。日本で3カ所できるうちの大本命だっただけに、IRを誘致したい横浜市はさぞかしショックだったろう。

撤退理由については「日本におけるIR開発の枠組みでは私たちの目標達成は困難で、今後、日本以外での成長機会に注力する予定」とした。

このまま、世界の景気が戻らなければ他のカジノオペレーターの投資意欲も冷え込む。

以下のエントリーは2019年9月28日に書いていたものが先送りされていたものだ。

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IR整備法では、IR事業者が納める納付金 =カジノ税は収入の30%に決まった。これを国と地方で折半する。カジノの収入が3000億円を超える場合は累進課税方式も導入される予定で、例えば4000億円なら40%、5000億円なら50%という具合だ。

ちなみに、ラスベガスでは20%、シンガポールでは30%となっている。実際、開業してみなければどれぐらい収入になるのか分からないが、一番熱心な大阪の場合、年間の来場者を1500万人、経済波及効果を6900億円、と試算している。

こうした予測は得てして当たらないものだが、仮に成功してその数字通りになれば累進課税方式にはそのうち不満が出そうだ。

「一部のカジノオペレーターからは今でも不満は出ていますよ。パチンコも結果的には換金ができるギャンブルなのだからギャンブル税を取るべきだと」(自民党関係者)

日本進出を目指す海外オペレーターは、ギャンブル大国の日本市場がバラ色に映っているが、パチンコや公営ギャンブル共に、年々売り上げは下がり続けているのが実情だ。競馬やボートレースはイメージ広告を積極的に展開しているが、減少傾向に歯止めがかからない。

ちなみに、公営競技の納付金は平成3年の613億円をピークに下がり続け、平成25年には31億円まで下がっている。各競技の施行者からは納付金の廃止要望まで出ている。

消費税も上がり景気はさらに落ち込むことが予想されている。消費が下がれば、会社の業績は下がり、働き方改革で残業がなくなり、サラリーマンの給料は下がる一方だろう。給料が上がらなければ可処分所得も減り、娯楽費に回すおカネはますます削られて行く。

最後の止めを刺すのが文科省の動きだ。ギャンブル依存症を予防するための教育・指導が高校で取り入れられることになった。



教える教科は保健体育だ。

文科省のホームページには次のように記されている。

アルコール、薬物などの物質への依存症に加えて、ギャンブル等への過剰な参加は習慣化すると嗜癖(しへき)行動になる危険性があり、日常生活にも悪影響を及ぼすことに触れるようにする。」と記載され、精神疾患の一つとしてギャンブル等依存症を含めた依存症について取り上げることになりました。
 
本資料では、学習指導要領を踏まえつつ、学校教育において依存症(行動嗜癖)に関する指導を行う教員の理解を深めることを目的に、「依存症とは」、「嗜癖行動について」、「行動嗜癖への対応」について解説しています。
 

資料の中でギャンブル依存症に罹った大学生の体験談が掲載されているが、そのきっかけがパチンコだった。

結びに次のように記されている。

「あっという間に自分の人生を一変させてしまうギャンブル。手を出すことは簡単ですが、一度依存症になると回復までの道は決してたやすくはなく、沢山のものを失います。そのことをみんなに知ってもらいたいと思っています」

学校教育の現場でギャンブル依存症が取り上げられるようになれば、パチンコはもちろんのこと、カジノだって行こうとは思わなくなる。

デフレスパイラルから抜け出せない日本経済に加え、教育現場では「ギャンブルはやるな」と指導されるわけだから、外資が思うほどバラ色のギャンブル大国ではないということだ。

カジノ経営が思ったように進まなければ、オペレーター側からパチンコ潰しのために、パチンコ税を取れとかの話が“外圧”によって具体的に出てくるのだろうか?








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