パチンコホールと雀荘(法律上は「まあじやん屋」と表記)は、同じ風俗営業適正化法第4号によって営業のあり方が決められている、いわば兄弟のような業態である。ファン層も重なり合うところが多いと思われるが、業界同士の交流はこれまで多くはなかった。
そこで今回は、全国麻雀業組合総連合会(全雀連=ゼンジャンレン)の策定した「マージャン店営業等における新型コロナウイルス感染症の拡大予防ガイドライン」と、パチンコ業界の「パチンコ・パチスロ店営業における新型コロナウイルス感染症の拡大予防ガイドライン」を取り上げ、コロナ対策の基準となるガイドラインに見られる、ふたつの業界の相違点をまとめてみた。
1.客同士の対人距離
マージャン店のガイドラインでは「できるだけ2m(最低1m)を目安に確保」、パチンコ店のガイドラインでは「周囲(側面及び背面も含めて)2メートル程度 (遊技機1台おき)」となっているものの、どちらも、遊技中の客間距離を2m確保できない場合のオプションとして、アクリル板や透明ビニールシート等での遮蔽を認めている。
さらにマージャン店では「他の利用客との間隔が2m以上となるよう、使用するマージャン卓を一台おきにするなどの対応」を求めているが、「商売を考えると現実的ではない」と関係者は語る。マージャン店ではお客一人1時間あたりの料金に法律で上限が課されている。
2.備品の消毒
マージャン業界においては、マージャン牌・点棒の消毒は「3時間に1回」としている。一方、パチンコ業界では遊技機周辺の設備の消毒は「遊技客の入替わり時」とし、どのお客も消毒済みでない遊技機で遊技することがないようにする、というところに対策の主眼を置いている。また、トイレ・手すり・精算機などの共用部分については、パチンコ業界では「1時間毎を目安として定期的に消毒する」としている。
3.新型コロナ対策の告知
マージャン業界のガイドラインにおいては特に記載はないが、パチンコ業界のガイドラインにおいては店頭掲示のポスターやWebサイト等を利用して、自店が行なっている感染防止の取り組みを情報共有するように求めている。
新型コロナ禍においてパチンコ店は世間からひどいバッシングを受けた。遊技客や地域に暮らす人々に店舗の安全を知らせることが、パチンコ業界にとってはより重要となっている。
4.クラスター対策
マージャン業界のガイドラインでは「万が一感染が発生した場合に備え、個人情報の取り扱いに十分注意しながら来店客名簿を作成し、最低でも1カ月間は保管する」といった対応をマージャン店に求めている。これによってクラスター追跡が容易になる、有効な対策だといえるが、マージャン店の業態であるから可能な施策であり、パチンコホールに同様の対策を求めるのは難しいだろう。
マージャン業界では、このガイドラインの一部を営業の実態に即したものに改定できるよう、関連当局に働きかけているという。