越県パチンコのトラブルは本当にあるのか? コロナ禍の状況を専業パチプロに聞いてみた

2020.04.29 / 新型コロナ

コロナウイルス感染拡大に伴い、パチンコ業界は連日、ワイドショーやネットニュースなどで批判の標的となっている。その中でも最近話題となっているのが「越県パチンコ」の問題である。「プロを含めたパチンコの愛好家たちが、営業中のホールを求めて県をまたいで移動しているのではないか? その移動がコロナウイルスの拡散を招いているのではないか?」そんな噂が人々の間でささやかれている。

 4月24日の昼下がり、専業スロプロのMさんがPiDEAの取材に応じてくれた。「自分にできる一番手っ取り早い、まとまったお金を稼ぐ方法」として、7,8年前ごろからスロプロとして生計を立て始めたという。「やり始めたのは、5号機の、『北斗転生』とか『蒼天の拳』があった時期ですかね」と自らの記憶を振り返って語った。

 普段Mさんは北関東を中心に、いくつかの店舗で台の情報を収集、4~5名の打ち子も雇いつつ、親である自らも現場へ出向くスタイルで、平均月間60~70万円ほどの利益を出していたという。子に給料を払ったあとの、Mさんの「手取り」となる金額である。

 もちろん、これは今年の3月までの話である。ある意味、コロナショックによる影響を最もダイレクトに受けたのが、Mさんのような人々なのかもしれない。主戦場としていたホールの多くが営業を中止しており、残った店舗においても他の専業たちと甘い台を抽選で奪い合っているといった状況。特定日を設けているような設定が入っているお店も限りなく少なくなり、打とうにもそもそもコロナを恐れて人手を集めることさえままならない。結果、Mさん個人の収入は「1月が30万円、2月が80万円、3月が50万円、……今月が-6万円」だと、包み隠さず答えてくれた。「もう、お店もやっていないのでお手上げです」

「越県パチンコ」の真相。トラブルはまったくない

 では、「越県パチンコ」についてはどう思っているのだろうか? Mさんは「遠征に一人で行くのは(収支的に)デメリットしかない」とあらかじめ説明した上で、「1都3県で自粛要請が出れば、それによって北関東に人が出ていくというのは予測できていたこと。それがメディアに出て叩かれるのは、……みんな生活がかかっていることなので、しょうがないことなのではないか。世の中目線で叩かれるのも、しょうがない」と述べた。世間では県外からの来訪者に対する差別的な言動などが報じられているが、Mさん本人が、他県に遠征した際などにトラブルに巻き込まれたことはまったくないという。

 「もうしょうがないから、5月6日までは自粛かな」と述べつつも、Mさんもこの感染症が数カ月で収まるといった楽観的な期待はしていない。「これまでにも、コロナとは関係なく、特定日などがなくなったとかで専業がすごい減った時期があった。そんな中でも自分は、食えてしまっていたので、変な話、これまでずるずる続けてきてしまったという面もあった。だからこそ、今は分岐点。引き時かな」休業明けには、ホールも自粛中の赤字を補填する必要があるため、玉を容易に出すとは思えない。それを考えると、今が引き際だと言えるのかもしれない。

 スロプロとしては、これまでまとまった金額を安定して稼いできたMさん。それを元手に、なにか新しい出発のプランなどはあるのか尋ねてみたら、「いまはない」との答えだった。いつまでも続けていられるものではないということはわかっているが、緊急事態宣言明けもしばらくはこの仕事を続けるつもりだという。

 最後に、「いま、一番欲しいものはなんですか?」という問いを投げかけてみたところ、Mさんはすこし困ったように首を傾げながら、「何も考えない時間ですかね」と答えてくれた。

 ひとりのプロが業界から去ろうとしている。それ自体は大きな問題ではないのかもしれないが、自粛明けの営業再開後に出玉にはさほど期待できない、というのは一般ユーザーも含めた空気感だろう。客がまた戻ってくるとは限らず、一度離れてしまった客を取り戻すのは難しい。営業できていなかったので経営的に苦しい局面ではあるが、休業明けに、安易に利益を追求するのは危険だ。ファンを呼び戻すために最大限の努力をする必要があるだろう。

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