2021年1月末に待ち受けている旧規則機の完全撤去まで、あと少しで残り1年になろうとしている。必須となる新規則機の入れ替えは、業界が生き残るために現在抱えている最大の課題といっていいだろう。
どんな機種から、どのタイミングで入れ替えていくべきか。入れ替えによって、どんな影響が発生するのか。また、今後はどんなスペックに期待が持てるのか。新規則機への完全移行にまつわる考察をシリーズとして追う。
2019年末、一時代を築いたパチスロ機たちが惜しまれつつその役目を終えた。
11月には初代の「まどか☆マギカ」が、12月には「バジリスク絆」「ハーデス」「モンハン月下」が、次々とホールから姿を消していった(一部地域ではまだ設置あり)。撤去からまだ日は浅いものの、すでにホール全体の運営にも影響が出ており、稼働率や利益率の減少は確実な情勢となっている。
このように、パチンコ・パチスロには定番機があり、現在の市場を支える大きな力となっている。しかし今後はさらにパチンコとパチスロの双方において、定番機が続々と撤去期限を迎える。そんな中で定番機には固定客が多くいるため、うまく新規則機へと移行していかないと固定客の離反を招き、大幅な稼働低下の要因となってしまう。
したがって2021年1月の旧規則機完全撤去に向けては、固定客の誘導をうまく図りながら計画的な入れ替えを遂行することが重要になってくる。
2020年 認定切れ撤去予定の定番・人気機種 | ||
パチンコ | 機種名 | 撤去予定日(東京都) |
CRスーパー海物語IN沖縄3 桜ライト | 3月16日 | |
CRA海物語アクアwith吉木りさ | 4月13日 | |
CRA花の慶次SP〜琉N-K | 5月11日 | |
CRデジハネ北斗の拳5慈母 | 5月11日 | |
CRギンギラパラダイス 強ミドル259バージョン | 7月27日 | |
CRぱちんこAKB48 バラの儀式 | 8月12日 | |
CRリング 運命の日FPWZ | 10月5日 | |
CRフィーバークィーン | 10月26日 | |
パチスロ | 機種名 | 撤去予定日(東京都) |
リング 呪いの7日間 | 3月30日 | |
沖ドキ! | 6月1日 | |
ニューアイムジャグラーEX-KT | 6月22日 | |
ニューキングハナハナ | 7月27日 | |
押忍!サラリーマン番長 | 8月10日 | |
黄門ちゃま 喝 | 10月5日 | |
ミリオンゴッド 神々の凱旋 | 11月16日 | |
ハナビ | 12月14日 | |
ゴーゴージャグラー | 12月21日 |
そんな定番分野のなかでも、もっとも注意しなければならないのが海物語シリーズだろう。
海物語シリーズ、特に甘海が顕著だが、1店舗の中でも島・コーナーを形成する機種ラインアップ数が豊富であり、市場残存ラインアップ数の多さがシリーズの特徴だ。そのため、他の定番分野であれば今後登場する新規則機の新台に入れ替えれば済むかもしれないが、甘海の場合はその時登場した一機種だけで現存するすべての台数を入れ替えるというわけにはいかない。
そんな理由ゆえ、特に甘海に関しては他の定番分野以上に細かな計画を立てながら入れ替えを推進すべきだ。
そのためにも、たとえば「〇〇の機種がどの時期にどのくらいの規模で出そう」などといった業界の情報やウワサにはアンテナを張っておいたほうがいいだろう。
その甘海だが、最近では「PA海物語3R2」、さらに「PAスーパー海物語IN地中海」とリリースが続いている。こちらについてもきちんと分析し、状況を把握しておきたい。
まず「海物語3R2」「地中海」が導入される前の時点で、旧規則の甘海の残存台数は約30万台で供給がまったく足りていない。
「海物語3R2」と「地中海」で台数がどのくらいになるのか、また「地中海」以降にどんな甘海が出るのかなど、今後は未知数なところがあるが、旧規則機の完全撤去期限までに果たして甘海の供給が追いつくのか、予断を許さない状況といえるだろう。
また、甘海は多彩なラインアップだということはすでに触れたが、「3R2」と「地中海」とでは機種の性質が大きく異なる。
甘海は現在までのところ、スペック面では「ST」と「確変ループ」、演出面では「シンプル」と「にぎやか」という2軸・2属性で分類できる。「3R2」は【シンプルな確変ループ】であり、「地中海」は【にぎやかなST】と位置づけられ、プレイヤーの遊技傾向も異なると見たほうが良いだろう。
「地中海」の特徴としては、約10年前に登場した「CRAスーパー海物語IN地中海SAF」の復刻という位置づけになる。ただ「復刻」シリーズではあるものの、市場にはほぼ残存していないことに加え、新規演出も多数搭載しており、復刻機のデメリットとなる「新鮮味のなさ」は軽減されそうだ。
また、「復刻」シリーズは今回発表された「地中海」で最後という話もあり、その場合「復刻」シリーズのメリットである「安価」を享受できる最後のチャンス。
言い換えればなるべくコストをかけずに新規則機へと入れ替える最後のチャンスとなる。
「地中海」のスペックは「PAスーパー海物語INジャパン2 with太鼓の達人」から続く、ヘソ賞球3個で出玉性能が強化されたタイプ。
またゲーム性は、甘海としては「CRAプレミアム海物語 ぼのぼのが遊びに来たよ!」以来となる突破型で、ST20回+時短80回「地中海チャンス」の継続率は甘海史上最高となる約78%と、かなり特徴的。
PAスーパー海物語IN地中海 | |
大当り確率 | 約1/89.8(高確率:約1/32.5) |
賞球数 | 3&2&12&4&3 |
ラウンド(カウント) | 10R or 6R or 4R(7C) |
ST(20回転)突入率 | 100% |
地中海チャンス(ST20+時短80)突入期待値 | 約49.8%(残保留4個含む) |
地中海チャンス継続期待値 | 約78.1% |
とはいえ「地中海チャンス」への突入率は約1/2と突破のハードルは高くなく、海らしい安心感と継続率を両立したバランスタイプといえるだろう。
約10年前に登場した初代「地中海」の甘デジと同様の大当り確率1/89も相まって、プレイヤーは手を出しやすいはずだ。
さらに詳しいスペックについては機種サイトを参照してほしい。https://www.sanyobussan.co.jp/products/pk_rechichukai/
「地中海」は総じて、他の海とは差別化を図れる唯一無二の性能を有しており、他の海を遊技しているプレイヤーに新たな選択肢を提供し、甘海の島を強化・活性化できる機種といえるだろう。
こうした状況を踏まえたうえで、自店には入れ替え対象となる旧規則機の甘海がどのくらい残存しているのか。そして「地中海」は自店に必要なのかどうか。必要なのであればその台数はどのくらいなのかを考慮して計画を立てなければいけない。
冒頭でも記した通り、完全新規則移行に向けた今年2020年は多数の旧規則機が撤去され、定番分野の旧新入れ替えが重要になる。もし旧新移行をうまく行えなければ、1年後に向けて徐々に定番分野の稼働が失われていくことになりかねない。
定番分野の中でも特に「中高年層中心」「若年層中心」など、いわゆる【濃い客層】が存在する機種や、歴史の深いシリーズなどは固定ファンを失うという意味でも影響が大きい。そのため、ウワサや情勢から計画をたて、定番分野のシェア縮小を最小限に止めていくのが得策だ。
ただ、今年1年は注意しなければいけないことも多い。周知の通り、7月からは東京オリンピック・パラリンピックが開催される。国をあげた一大イベントとなれば慣習のように「入替自粛」も行われると考えられる。
さらにオリンピックだけではない。昨年末に起きた議員逮捕など、直接的でないにしろ業界を取り巻く〝周辺環境〟が大きく動くこともある。業界のウワサだけではなく、経済・政治も含めた多角的な視野、情報感度を持って先を見通していかなければいけない1年になるだろう。