客は換金して当たり前という考え方では新規客は開拓できない

2019.12.02 / コラム

ヤフーとLINEの経営統合の裏にはIT業界には、競争に勝ったものが「総取り」という背景がある。今はスマホ決済の覇権争いが熾烈に行われている。

「ヤフーは若年層をつかんでいるLINEの顧客が欲しかった。スマホ決済で2位のLINEペイはスマホ決済の投資が嵩んで266億円の赤字に陥っていた。これでPay Payがスマホ決済の市場を奪うでしょう」(経済紙記者)

この競争に勝った者が総取りをパチンコ業界に当てはめると、かつては中小店舗の地域に大型店を出店して市場をかっさらう手法があった。実際、中小、零細店舗はその影響で廃業に追い込まれたケースもあった。

しかし、時代は移り変わり遊技人口そのものが減少すると大型店だからと言って成功する時代でもなくなった。最近は大型店の売却も行われている。

「パチンコ業界の場合は、メーカーにしろ、ホールにしろ1社だけが勝って総取りすることはできません。業界が活況を呈している頃なら出玉競争で分捕る戦略もよかったかも知れないが、パチンコの武器だったギャンブル性がそぎ落とされている時に客の奪い合いをしている場合ではない。牛丼業界も不毛な価格競争で勝者は誰もいませんでした。今は共存共栄の時代です」(同)

牛丼業界は価格競争の消耗戦の結果、味が落ちるという本末転倒の状況に落ち込んだ。牛丼各社は松屋のように牛丼以外のメニューを増やしたり、すき家を運営するゼンショーホールディングスは積極的に買収を進め、仕入れコストを下げるなど不毛な価格競争から脱却を図った。

経済紙記者はパチンコ業界についてこう問題提起する。

「ホール専業では思考が停止しています。異業種の新しい発想が活性化を生む。ユニクロ躍進の起爆剤はフリースやヒートテックなど世間から注目を浴びる商品を開発したからです。ブータン国王が来日した時に銀座のユニクロでヒートテックを買われています。作業服のワークマンは本来の機能性にデザイン性をプラスした結果、若い女性客やライダーの開拓に成功しています。パチンコの場合は一般の人から注目されるものがない。パチンコをする人がどんなものに興味を持っているか。パチンコと親和性の高い労働者が普段、何を買っているかを調べる発想もない。お客さんも業界人も換金思考では新しい発想は生まれません。客は換金して当たり前という考え方では新規客は開拓できません。生活に密着する景品を充実させる。そのためには貯玉も廃止した方がいい」

折しも、自民党関係者からはこんな話も出ている。

「消費税増によっても思ったほど税収は上がっていません。新たな税収としてまたパチンコ業界の話が出てきています。海外のオペレータもパチンコの税収を調べています。グレーだった3店方式をシロにする時代が来ています。禁煙化の波でパチンコの景品で一番出ていたタバコも減り、ますます換金需要が高まっています。換金率が高すぎるのに業界は何の努力もしていない。一般景品の比率を高めないと世論は許さない。いずれ、一般景品の比率を何割以上にしろ、と指導が入るかもしれません」

令和の時代は換金から本来の景品を獲得する遊技に原点回帰しろ、ということか。そのためには今の換金目的の客を一掃しろ、と。さらには異業種とのコラボで新しい発想を生め、ということのようだ。









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