依存問題対策を現場の取組から考える ③ 最終回

2019.09.07 / コラム

ヤンキーパンダです。

実例を紹介します。

これは16年前に「2000回まわして大当りしない。古くからのパチンコファンだがもう行かない。DMを勝手に送ってくる。止めて欲しい」とのお客様からの手紙に対して当時店長であった私が個人名で出したものです。

また、古い実例ですが今でも遜色ない実例であると、手前味噌ですが、そう自負しています。

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前略

田中(仮名)様
貴重なご意見、大変ありがとうございます。
お返事をお出しするかどうか迷っておりましたが田中様の悔しい思いを少しでも緩和できればと思い、出すことにいたしました。

田中様のご指摘どおり5月31日の156番はお客様にとって厳しいものでした。
私もプライベートでパチンコを嗜みますのでお客様の歯がゆい気持ちをお察し致します。
ご存知かも知れませんがパチンコはそれぞれの台で回転の都度、定められた確率で大当たりの抽選がされております。

例えばサイコロで1の目が大当たりとします。

6面のサイコロで1が出るのは6分の1の確率ですが稀に30回振っても1が出ない場合があります。
(はずれが減っていけば6回以内にあたりますが、はずれは減りません)フィーバー ザ・キングの場合、約1/350の確率ですから 今回田中様の2000回転は平均確率の約6倍辛かった事になります。
(1/350の遊技台で大当たりまで2000回以上かかるケースは計算では約0.33%、300回に1回程度です)

10回転で当たる場合もあれば今回のように2000回回して大当りしない事もあります。
やめた後に他のお客様が大当りを引かれて悔しい思いをされる方がおられますが、毎回同じ確率で抽選されている訳ですから続けてプレイされても大当りする保証は無いものとご理解ください。

お客様方がこの様なパチンコの仕組みを理解された上でご予算の範囲内で適度に遊んで頂ければと切に願っております。
ですからあまり深追いされない方が良いと思います。

10万円使って15万円勝つようなケースも稀にありますがそれはたまたまであり、毎回取り戻せるとは思わなれない方が良いです。台を移動されたり休憩を挟むなど工夫をされてみても良いかと思います。

私が遊技する場合、回しても確率の分母の値まで(2万円程度まで)を目安にしており、それまでに大当りしなければ諦めます。

また、ハネモノや、ジャグラー、シオラーなどAタイプスロットで遊んだりもします。
当日の155番台は千円あたり21回以上回ったかと思います。
遊技台が平均確率通りの波であればお客様方が遊びやすい全台調整とさせていただきましたが、結果は田中様のご期待にお応え出来ず大変残念に思っております。

次にDMの要・不要についてですが
右下に「不要な方は◯印をおつけください」との欄を設けていますがわかりにくく、誤解を招いたかと思います。今後は受付の際に必ず口頭でも確認するように改めたいと思います。

最後にこの度の田中様の思いを忘れる事なくサービスに努めていきたいと思います。もし、当店への信用が戻った場合には再度ご来店いただければ幸いです。

追伸、今回脱会の手続きを取らせていただきましたが何かございましたらいつでもお気軽にご連絡ください。私の携帯番号は090××××××です。
よろしくお願いいたします。

草々
ヤンキーパンダ
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その後、田中様から「店に行く回数は減ったが適度に深追いせずに遊び暇つぶしになっている」との電話がありました。

またDM復活を希望されました。

当時、全店平均アウト5万を維持しようと、その為にはたとえ1人であってもお客様を逃したくない。
返信した動機はそう言った店側の都合がまずあり、文中でも再来店をお願いしています。

動機は店側の都合ですが、もしパチンコの仕組みをわからないままならそれは残念な事です。仕組みを手紙で説明する事にしました。結果お客様の完全な 離反を防ぐ事になりました。

田中様はもともと趣味がパチンコだった訳ですから、完全に止める事よりものめり込まずに適度に向き合う道を私は推奨しようとしました。

また、実名の手紙なので単なる腹いせではありません。
特にそう言うお客様には丁寧にお応えするのが店舗管理者の責務ではと当時の私は考え実行したのです。

しかし田中様が依存症らしき状況だったとした場合、この手紙が田中様にとって、良かったのかどうかはわかりません。
また、お客様が実名で手紙を書かれたから顕在化し、返信出来たのです。

これは一例ですが、依存症が潜在的に進む中でもスタッフの丁寧な一言でのめり込みを予防するケースも多々あると私は考えています。

ただそれは因果関係を明確にできないため、スタッフ自身も気づきません。
片やスタッフがお客様を煽って深追いさせるケースもあり、それはそれで改善すべきでしょう。
私は日常的に全国のホールでやり取りされているお客様との問答をまずはありのまま集約する事を提案します。
お客様との問答を集約することが必ずしも依存問題対策に繋がる訳ではありませんが、全日遊連の要項案づくりの大きなヒントになることでしょう。

正しいか間違いかを決めつけたがる昨今の風潮ですが、正しいかどうか判らなくても取組の試行錯誤を繰り返す事でより良きものに成っていくと思います。

接客を通じたお客様情報や状況の把握は有識者に勝るとも劣らない現場スタッフは多いと思います。
そう言う現場スタッフが見識を高めてこそ、答えがさまざまな依存問題対策。一人一人に応じた答え。予防を含めての対策が果たされるのです。

それを実現する実例がホール現場にあると思います。
パチンコ営業を続ける限り依存問題対策にも終わりは無いのです。

おわり

追伸

文中で依存症と言う言葉を多用しました。
その定義ですが「ギャンブル等依存症対策基本法」第二条の【日常生活又は社会生活に支障が生じている状態】を念頭に用いました。

第二条 この法律において「ギャンブル等依存症」とは、ギャンブル等(法律の定めるところにより行われる公営競技、ぱちんこ屋に係る遊技その他の射幸行為をいう。第七条において同じ)にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態をいう。








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