マーケッターの森岡毅氏ならパチンコ業界を如何に再生させるか

2019.08.15 / コラム

異業種ながら業績がV字回復したとなれば、如何にすればそんなことが実現できるのか気になるところだ。

教材となるのは讃岐うどんチェーンの丸亀製麺だ。2000年にセルフうどんの1号店を兵庫県加古川市でスタートしたのが始まりで、店舗数は国内外で1000店舗を数える。創業から18年で達成したこの店舗数は、急成長の手本のようなものだ。

290円の低価格をウリに店舗数を増やしていけば、売り上げは拡大するものだが、既存店の客数が16カ月連続で前年割れするなど、客離れの傾向が顕著に表れていた。

その原因の一つが値上げと言われていた。値上げにより客単価は上がったが、その分、客数の減少が顕著になった。

客離れの打開策として季節限定メニューを投入すると共にテレビCM攻勢をかけた。「うま辛坦々うどん」や「牡蠣づくしたまごあんかけ」などがそれで、高くても売れる、と自信を覗かせたが、新規客の獲得にはつながらないどころか、既存客まで逃してしまった。

同社の栗田社長が助けを求めたのがマーケッターの森岡毅氏だった。ホール関係者が忌み嫌うコンサルではなくマーケッター、というところがミソだ。

森岡氏は経営難に陥っていたUSJの業績を劇的にV字回復させた立役者として有名で、現在は独立してマーケティング会社である「刀」のCEOに就任している。

丸亀製麺の再建を託された森岡氏は、客目線での気づきを探るために、連日客として店を訪れ、お客さんを見ると共に、従業員の動きにも注力を払った。

例えば、てんぷらを揚げても、従業員はただバットに並べるだけだったが、「揚げたてができあがりました」とお客に声を掛けることなどをアドバイス。気づきを従業員で共有すれば、顧客満足にもつながり、まだ伸びしろのある会社であることが分かった。

調査から見えてきたものは、「こだわりゆえの非効率」だった。丸亀製麺は国産小麦にこだわり、すべての店舗に製麺機を備え付け、手間暇をかけてうどんを作っていた。

うどんのシコシコ感を出すために打ち立てを提供する、というやり方は効率が悪かった。

この店舗数の規模ともなると各地にセントラルキッチンを作って、まとめて作った方が原価は安くなる。これこそがスケールメリットである。チェーンストア理論なら、各店舗でうどんを作る非効率さを止めさせ、セントラルキッチン方式に変えることを勧めるところだ。

ところが森岡氏の考えは違った。

国産小麦にこだわり、各店舗でコシのあるうどんを提供していることはブランドの価値であり、丸亀製麺の優位性を感じた。

ところが、消費者は丸亀製麺が各店舗で粉からうどんを打っていることを認知しているのは3割程度だった。従って季節限定メニューは既存客にしか訴求することができていなかった。

そこで森岡氏が打って出たのが、手作りのこだわりと魅力を伝える「丸亀食感」を訴えるテレビCMだった。



「ここのうどんは生きている」をキャッチフレーズに、すべての店で粉からうどんを作り、作り置きもしない、出来立てしか出さない噛み心地をアピールした。

本来、丸亀製麺が持っていた優位性を消費者に伝えていなかったことに気づいた森岡氏は、こうしてV字回復に成功した。

で、森岡氏に白羽の矢を立てるホール企業が登場することを期待したい。森岡氏だったらどんな方法でホールを再生するのか? 考えただけでワクワクする。






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