【水曜】第98回パチンコ雑誌ライター喜納臭蔵の視点

2016.03.15 / 連載

第98回 もう5年なのか、まだ5年なのか

石原慎太郎元都知事による発言に象徴される震災後のパチンコバッシングは、業界人ならきっと記憶に残っているはず(その直後に発行された PiDEAの表紙も話題になりました)。思えば、あの日を境に業界を取り巻く状況も変わりました。それまでメインスポンサーじゃないかと思われていたほど溢れていたテレビ広告も一斉に自粛となり、さらには広告宣伝規制にのめり込み問題といった行政からのプレッシャーも強まることに。そしてファン人口は右肩下がりを続け(昨年には若干持ち直したという調査報告はありますが、実感している人はいないのではないでしょうか)、業界不況でも潰れないという神話があったメーカーでさえ倒産するという深刻なものになりました。

そもそも石原元都知事の発言は原発事故に伴う電力不足が発端であり、計画停電を強いられたパチンコ屋だけが相変わらずネオンをギラギラさせているという、半ば言いがかりに近いもの。それでも業界としては計画停電にあわせて消灯したりしていたのですが、それでも足並みをそろえない一部のホールがあったために世間的にもバッシングされる羽目になってしまったのではないでしょうか。その結果かどうかは分かりませんが、さすがに5年も経った 今では表立ったバッシングは少なくなったとはいえ、3.11当日の消灯は継続されていますし、マス媒体での機種広告も自粛を継続中と、できるだけ目立たずにやっていこうという萎縮とも思える空気が業界団体にはまだ残っています。

この原因が、すべて足並みをそろえなかった一部のホールのおかげではなかったとしても、筆者は震災後の街灯さえ消えていた時期に煌々と灯りを点けてい たホールは絶対に忘れませんし、やはりパチンコ・パチスロファンから見ても異様な光景であったと思います。石原都知事の発言はヒステリック過ぎるパフォーマンスだったとはいえ、好ましくない人も多い業界だからこそ、 同じようなことを考えた人が少なくないのは理解できます。「大衆娯楽」である以上、大衆からの支持がなくては存続できない業界です。照明のスイッチに手を伸ばす代わりに、その事実を思い出して欲しいものです。

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パチンコ・パチスロライター 喜納臭蔵(きなくさぞう)

学生時代にパチンコ・ パチスロの魅力に取りつかれて、はや30年以上。黎明期から始めたファン雑誌でのライター活動も20年を超え、このままずるずると続けるしかないなと (やっと)覚悟を決める。ファン側の立ち位置にこだわるが故に副収入は一切ないが、なけなしの財布から年1回のマカオ旅行も継続中。メールアドレス:kusazo@yahoo.co.jp

3.11, 【水曜】第98回パチンコ雑誌ライター喜納臭蔵の視点, 震災