「新規顧客」と一括りに考えているうちは見えないこと

2019.03.30 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(207) 新規客の獲得

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林秀樹です。先週の連載にて「稼働を上げる努力は短期的には効果が見えにくいが、長期的には必ず効果が表れる」ということをお伝えしました。

しかし現実的には、確かに今目の前の業績の低下が気になり、どうしても短期的、今すぐ効果を実感できる手法に頼ってしまいがちです。そしてその手法の代表的なものが「新台入替と広告宣伝」でした。ただ、新台入替も広告宣伝も昔ほどの効果は見られず、かといって今更やめる(または減らす)ともっと下がるのではないかと考えてしまい、結局これまでどおりのことを続けているのが現状です。

今回は「短期的な効果を得られる可能性が高くなる考え方」についてお伝えします。


新台入替や広告宣伝の目的は、低下している(しつつある)業績を上向かせるためです。そしてその対象は主に「新規顧客(休眠顧客、過去顧客を含める)」、つまり今来店されている既存顧客以外となります(なぜなら今来店されているお客様向けには広告宣伝よりも販売促進の方が、効果的に訴求ができるからです)。これら新規の、今来店していないお客様に自店を訴求することで客数を増やすために入替および広告宣伝を行っていることだと思います。

しかしこれらの手法を何度行っても効果が感じにくくなっていると思います。確かに現状の新機種はそのスペック面で魅力が薄れているのは事実ですが、それだけが理由ではありません。

「新規顧客」と一括りに考えてしまいがちですが。実は新規顧客は大きく2つに分けることが出来ます

まず一つ目は「新規客層の、新規」です。自店に来たことがなく、自店に興味を持たないか、または自店を敬遠している客層にいる人たちであり、こういった客層の人たちに自店を振り向かせるのは非常に難しいものです。なぜならこの客層は「現状の自店を否定している人たち」であり、来店していただくには自店を根本から変える必要があるからです。つまり商品構成、店舗の雰囲気、立地、設備、その他さまざまなことで自店に不満があるからこそ来店されていないのです。いま、何度新台入替と広告宣伝を行っても客数が増えないのは、この「新規客層の新規」への訴求になっているからです。

もう一つは「既存客層の、新規」です。今自店に来ている客層と同じ属性でまだ自店に来たことがない人たちであり、こういった客層には自店そのものを変えるのではなくアプローチ方法を変えることが有効です。なぜなら彼らは既存の顧客と同じような嗜好を持っている可能性が高く、そのためきっかけさえあれば自店に振り向く可能性が高いからです。そして、アプローチを変えることが有効だからこそ今の手法=新台入替と広告宣伝というアプローチ以外での訴求をすべきとなります。

上記をまとめると以下のようになります。
・新規客層の新規客に振り向いてもらうには、自店の営業そのものを変える必要がある
・既存客層の新規客に振り向いてもらうには、情報到達の手法、手段を変える必要がある
現状を根本から変えることにはリスクが伴います。また「どのように変えるべきか」もわかりません。しかし、「現状のままでアプローチを変える」ことは比較的容易にできます。

既存客だけをいくら囲い込んでも少しずつ離れていくものであり、だからこそ新規客の獲得は必須ですが、その新規客についは「既存客層の新規」を狙うと考えることで効果は必ず高まります。


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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

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