Las Vegas Sands アデルソンCEO トランプ大統領に緊急電話~米中貿易戦争リスク懸念
2019.09.24 / カジノ【海外ニュース】
9月22日、Wall Street Journalは、Las Vegas Sandsの創業CEOであるSheldon Adelson氏が、ドナルド・トランプ米国大統領に緊急で電話し、米中貿易戦争(U.S.-China trade war)が、米国経済、および、2020大統領選(トランプ大統領の再選)に与える影響について警告した、と報じた。
Sheldon Adelson氏は、共和党への有力な献金者(2018年の中間選挙では、Adelson夫妻は1.23億ドル以上を献金。最大の献金者)であり、トランプ大統領の再選キャンペーンでも役割を担う見通し。
両者は、直近では、8月20日にホワイトハウスで面談した経緯がある。
Sheldon Adelson氏の意見は、
・米国の中国からの輸入に対する関税措置は有効。米中の貿易条件を均衡化し、ダメージは中国のほうが大きい
・一方、米国経済界、企業は、中国との貿易戦争によるリスクを懸念。早期の関係安定化を望む
Wall Street Journalは、マカオにおけるカジノ営業権が2022年6月に満期となり、その前に再入札が実施されることを指摘したうえで、米中貿易戦争が、米国3社, Las Vegas Sands, MGM Resorts International, Wynn Resortsの再入札結果に影響を与える可能性を示唆。
<参考>マカオ:政府,カジノ営業権満期に伴う再入札準備~21年実施予想も。日本営業に影響
5月11日、梁維特(Lionel Leong)・マカオ特別行政区経済財政庁長官は、記者団に対し、カジノ営業権(コンセッション)満期後の方針について言及。ポイントは、
・改めて、”更新(Renewal)”ではなく、”新規入札(New Public tender)”を実施する方針を強調
・政府は、現在、入札実施に向けた法的な準備を進めている(ゲーミング法および関連規制の改正など)
・入札、すなわち事業者選定では、マカオの観光レジャーセンター化への貢献、ノンゲーミング強化などに重点を置く
一方、5月に入り、マカオのゲーミング法専門家であるJorge Godinho氏(マカオ大学・法学部客員教授, リーガルコンサルタント)は、”新規入札”が2021年に実施されると予想。
背景には、4月19日に、崔世安(Fernando Chui Sai On)・マカオ特別行政区行政長官が、議会にて、再入札が現行コンセッション満期(2022年6月26日)前に実施されること、すなわち現行営業権の延長オプションを行使しない方針を明らかにしたことがある。
マカオのカジノ営業権の”新規入札”は、日本におけるIR区域整備計画の選定認定(国による都道府県等と事業者の決定)の時期と一致する可能性がある。その場合、マカオの現行カジノ営業権保有者は、その喪失リスクを抱えた中で、日本参入営業を展開せざるを得ない。
マカオでは、コンセッション保有者(または、コンセッション保有者とサービスアグリーメントを締結した事業者)のみが、カジノ運営を許可される。コンセッションは、権益であり、6社の企業価値を支える原動力である。
図表の通り、マカオでは、6社(中国系3社、米国系3社)がゲーミング・コンセッション(サブ・コンセッションを含む)を所有しており、すべて2022年6月26日に満期を迎える。
ゲーミング・コンセッションに関して、現行法、契約(政府-事業者間)が規定するポイントは以下の通り。
・現行コンセッション満期後、新規コンセッションは、フレッシュな入札プロセス(Public Tender)を通じて付与
(政府は、繰り返し、”更新”ではない点を強調)
・現行ゲーミング・コンセッションは、最大5年間の延長が可能
(2019年4月、政府は延長しない方針を表明)
・政府は、2017年より、現行ゲーミング・コンセッションを早期償還できる権利を持つ
(現在まで、政府は権利行使について言及なし)
・現行ゲーミング・コンセッション保有者は、それを喪失した場合、カジノ施設を、対価なしに、マカオ政府に移管する義務
(カジノ施設の喪失は、事業性の観点から、自動的に全施設の喪失を意味する)
2017年央、政府高官は、初めて、”新たな入札(New Tender)”という表現を用いた。その発言は、現コンセッション保有6事業者に激震を与えた。
それまで、政府関係者は、”更新(Renewal)”と表現し、6事業者はそこに満期後も現状維持のニュアンスを感じ取っていた。
政府が”新たな入札”と表現したことで、事業者再募集・選定、入れ替えのニュアンスを読み取ったわけだ。
図表:マカオ カジノ運営6事業者のコンセッション満期日
コンセッション満期日 | 事業者 | 証券取引所 | カジノ施設数 | 獲得順 |
---|---|---|---|---|
2022年6月26日 | SJM Holdings | 香港証券取引所 | 22 | 1 |
2022年6月26日 | Wynn Macau | 香港証券取引所 | 2 | 2 |
2022年6月26日 | Galaxy Entertainment | 香港証券取引所 | 6 | 3 |
2022年6月26日 | Sands China | 香港証券取引所 | 5 | 4(サブ) |
2022年6月26日 | MGM China | 香港証券取引所 | 2 | 5(サブ) |
2022年6月26日 | Melco Resorts & Entertainment | NASDAQ | 4 | 6(サブ) |
注1:カジノ施設数は2018年12月末時点
注2:2019年3月15日、マカオ政府はSJM Holdingsのコンセッション(MGM China Holdingsのサブ・コンセッション)の満期日を、2020年3月31日から2022年6月26日に延長を承認
注3:(サブ)はサブコンセッション。Sands ChinaはGalaxy Entertainmentより、MGM ChinaはSJM Holdingsより、Melco Resorts & EntertainmentはWynn Macauより取得
Las Vegas Sands CEOアデルソン氏(85)がん治療中。治療後, 復帰見通し~Bloomberg
3月1日、Bloombergは、Las Vegas Sandsの創業CEOであるシェルドン・アデルソン氏(85)が、がん治療中であり、2018年12月から出勤していないとレポート。
Bloombergは、Las Vegas Sands広報担当の提供情報として以下を明らかにした。
– シェルドン・アデルソン氏(85)は、非ホジキンリンパ腫の治療中
– 現在は通常勤務ができない状態。 ただし、治療環境中でも、CEOの職務を遂行
– 治療の完了後に通常のスケジュールに戻れる見込み
Las Vegas Sands業績動向:19年度2Q 経常益7.7億ドル,YoY8%増 CEO健康回復 日本は大阪特化
7月24日、Las Vegas Sandsが2019年度2Q業績を発表。
経常利益(営業利益-ネット利払費用)は、2Q(4-6月)$768mn,YoY8%増, 2Q累計(1-6月)$1,618mn,YoY9%減。
2019年に入り、マカオ、シンガポール(Marina Bay Sands)とも前年から大きな変動がない。
現在、同社は、新規エリアの開発計画を持たない。主な既存エリアの拡張投資計画は、
・マカオのSands Cotai Centralエリアのリブランド(2018年11月発表)
– 2019年から2021年までのマカオへの投資計画(Londoner, Londoner Tower, Four Seasons Tower)は22億ドル
・Marina Bay Sands 第2期拡張(2019年4月3日にシンガポール政府と第2期拡張で合意)
– 投資額:33億米ドル(約3,700億円)
– 延べ床面積(Gross floor area, GFA)は50%拡張, 16.4万㎡, 最新アリーナ(15,000席), ホテルタワー(約1,000室)など
決算リリースにおける最高経営責任者(CEO)Sheldon Adelson氏のコメント
「新規開発機会では、日本、大阪をアグレッシブに追及」
コンファレンスコールでは最高執行責任者(COO)Robert Goldstein氏は、Sheldon Adelson氏の健康状態にコメント
「治療経過は良好。3Q発表時の10月のコールには参加するだろう」
なお、1Q発表時にはロバート・ゴールドスタインCOOが「大阪にフルコミット」と発言した。
2019年度2Q(4-6月):
・売上高$3,334mn,YoY1%増, 調整後プロパティEBITDAは$1,266mn,YoY3%増, 営業利益$894mn,YoY12%増, 株主帰属当期利益$954mn,YoY72%増
・調整後プロパティEBITDAの連結および地域別の四半期別の動向(2018年度2Q, 3Q, 4Q, 2019年度1Q, 2Q)
– 全社連結=$1,225mn, $1,282mn, $1,272mn, $1,452mn, $1,266mn(YoY3%増)
– マカオ(Sands China)=$750mn, $754mn, $786mn, $858mn, $765mn(YoY2%増)
– シンガポール(Marina Bay Sands)=$368mn, $419mn, $362mn, $423mn, $346mn(YoY6%減)
– 米国ラスベガス(Venetian, Palazzoなど)=$77mn, $76mn, $100mn, $138mn, $136mn(YoY77%増)
– 米国ペンシルバニア(Sands Bethlehem)=$30mn, $33mn, $24mn, $33mn, $19mn(YoY37%減)
2019年度2Q累計(4-6月):
・売上高$6,980mn,YoY1%増, 調整後プロパティEBITDAは$2,718mn,YoYフラット, 営業利益$1,865mn,YoY5%減, 株主帰属当期利益$1,536mn,YoY24%減
<新規開発方針>
・注力エリアは、マカオ、シンガポール、日本、韓国
・開発ポリシー&ターゲット
– ROIC(Return on total invested capital)は、20%以上
– 総プロジェクト・コストの25-35%はエクイティ、残り65‐75%はプロジェクトファイナンス(負債)
利益構成比 – マスが収益ドライバーに:
・マカオ、シンガポールとも利益はマス主体の構造に
・過去12ヵ月間の部門利益の構成比
– マカオ=マスゲーミング63%(テーブル56%+スロット7%), VIPゲーミング7%, ノンゲーミング30%
– シンガポール=マスゲーミング54%(テーブル34%+スロット20%), VIPゲーミング16%, ノンゲーミング30%
Las Vegas Sands 日本における活動
Las Vegas Sands 東京, 横浜に焦点, 大阪見送り~横浜の決断で方針見直し
・8月22日、ラスベガス・サンズ社は、横浜市の林文子・市長の記者会見(IR誘致取組決断)後、日本のエリア戦略の見直しを発表
・大阪府市を見送り、東京都と横浜市の開発機会に注力へ
・リリースは、会長CEOであるシェルドン・アデルソン氏のステートメント
誘致レース(733)横浜市=林市長 記者会見”IR実現に向けて”~7月末,誘致取組決断
Las Vegas Sands 舞洲SUMMER SONIC 2019協賛~PR協賛に参戦, 大阪特化
・8月13日、ラスベガス・サンズ社は、大阪・舞洲「SUMMER SONIC 2019」にメインスポンサー協賛すると発表
・「SUMMER SONIC 2019」は、舞洲SONIC PARKにて、8月16日(金)から8月18日(日)の3日間で開催
・同イベントの主催は、クリエイティブマンプロダクション。毎年、日本、米国などアーティストが参加し、東京と大阪で計10万人以上を動員
・ラスベガス・サンズ社ジョージ・タナシェヴィッチ氏(グローバル開発担当MD,Marina Bay Sands CEO)コメント
「当社は、大阪のIRのエンターテイメント会場やイベントの提案を熱意をもって検討中」
「音楽は、当社がIRで提供している代表的なエンターテイメント」
「当社が大阪で観光客と地域住民の両方に魅力あるイベントを計画する中、SUMMERSONICは理想的」
「当社のグローバルなネットワークやエンターテイメントの知見を大阪と共有し、地元のアーティストやイベントをサポートし、大阪の音楽とエンターテイメント産業に長期的に貢献したい」
「当社がその機会を得られれば、大阪IRに世界最高レベルのパフォーマンス会場を組み込みたい」
・クリエイティブマンプロダクション 代表取締役社長 清水直樹氏コメント
「ラスベガス・サンズは、音楽とエンターテイメントにおいて非常に豊富でダイナミックな歴史がある」
「私たちはラスベガス・サンズが描く大阪のビジョンを楽しみにしている」
Las Vegas Sands 開発担当トップ「大阪に一本化。横浜, 東京はチャンスなし」
・6月18日、産経新聞社は、Las Vegas Sandsのジョージ・タナシェヴィッチ氏(日本・国際開発責任者, マリーナ・ベイ・サンズCEO)のインタビューを配信
・事実上、ターゲットを大阪に一本化考えをアピール。依然は、横浜市、東京都も重視する姿勢であったが、事実上、大阪以外の選択肢を排除
「大阪府市への進出計画を、独占的に優先」
「大阪府市は、行政のIRへの要求が極めて明確」
「現時点では横浜市、東京都ともチャンスがないとみている」
「横浜市は、世論調査でIR誘致への支持が示されていない」
「東京都は、五輪準備で多忙」
大阪府市IR推進局 RFC参加登録者 海外業者中心に7者
・6月4日、大阪府市IR推進局は、「(仮称)大阪・夢洲地区特定複合観光施設設置運営事業の事業コンセプト募集」(Request for Concept, RFC)」の参加登録結果を公表
・参加登録者数は7者(五十音順)
– ウィン・リゾーツ・リミテッド
– MGMリゾーツ・インターナショナル/オリックス株式会社
– ゲンティン・シンガポール・リミテッド
– メルコリゾーツ&エンターテインメント リミテッド
– ラスベガス・サンズ・コーポレーション
– 2者は名称非公表を希望
・RFCの位置付け
– RFCへの参加は、RFP(事業者選定。国の基本方針公表後)参加のための条件ではない
– RFCへの応募実績は、RFP(事業者選定。国の基本方針公表後)において評価の対象となるものではない
・大阪府市RFCの詳細は以下を参照
誘致レース(668)大阪府市=RFC参加登録者公表~海外業者中心に7者。RFPとは分離
Las Vegas Sands アデルソンCEO「大阪を追及」明言@米PA州Bethlehem売却発表リリースで
・5月31日、Las Vegas Sandsは、米国ペンシルベニア州Sands Bethlehemの売却完了をリリース
・売却先は、Wind Creek Hospitality(アラバマ州インディアン部族系)。売却エンタープライズバリューは13億ドル
・Las Vegas Sandsは、そのリリースに、Sheldon Adelson氏の発言として以下を記述
「本売却は、当社が大型、観光促進型IRにフォーカスする重要なマイルストーンである」
「Macau、Singapore, そして、Osaka, Japaへの投資機会を追及」
・シェルドン・アデルソンCEOが、大阪追及を明言したのは初めて
ジョージ・タナシェビッチ氏「コンソ組成。マジョリティ51%以上は必要」@JGC
・5月16-17日、Japan Gaming Congress(JGC)が都内にて開催された。主催は、Clarion Events Ltd.(クラリオン・イベンツ, 英国)
・開催期間中、海外IR事業者は、単独またはグループセッションにて、それぞれ日本におけるIR事業会社の在り方の方針を述べた
・ジョージ・タナシェヴィッチ氏(総支配人およびCEO, マリーナ・ベイ・サンズ)
「コンソーシアム組成に向け、日本企業との交渉作業を開始。日本企業に求める役割は、計画策定への貢献。株式持分は、マジョリティ(51%)以上が必要」
Las Vegas Sands 大阪府市RFC参加へ タナシェビッチ氏「日本市場を理解したパートナーが必要」
・5月15-16日で開催された関西IR産業展において、ラスベガス・サンズは、大阪府市のRFCへの応募方針を明らかにした
・ジョージ・タナシェヴィッチ氏(総支配人およびCEO, マリーナ・ベイ・サンズ)のメディアへの発言
「日本市場を理解したパートナーが必要」
ロバート・ゴールドスタイン氏COO「大阪にフルコミット」@投資家向け電話会議
・4月17日、Las Vegas Sandsが2019年度1Q業績を発表
・投資家向け電話会議では、最高執行責任者(COO)であるRobert Goldstein氏は日本について以下を発言。
「大阪にフルにコミットしている」