[特別レポート/議連ウォッチ]パチンコホールにおける 外国人雇用、歴史的転換か?
2026.07.22 / 組合・行政パチンコホールの人手不足を背景に、外国人雇用の規制が転換点を迎えようとしている。遊技産業議員連盟の総会では、「家族滞在」の在留資格を持つ外国人のアルバイト就労を認める方向性が示されたという。長年の懸案事項に道が開けた一方、なぜ対象は「留学生」でなく、家族滞在なのか。その背景と今後の可能性を探る。
議連総会から聞こえてきた声
全国のパチンコホールの頭を悩ます、慢性的かつ致命的な人手不足。時給をいくら上げようとも応募は来ず、既存スタッフへの負担は日に日に増大している。この業界の首を真綿で絞め続ける労働力不足問題に対し、ついに水面下で、大きな転換の足音が聞こえ始めてきた。
令和8年6月9日、「遊技産業議員連盟」総会が衆議院第一議員会館で開催された。
表向きの公式発表には出てこないが、その総会の場で、関係省庁から極めて踏み込んだ方針が示されたという情報が聞こえてきた。長年業界が強く求め続けてきた「外国人雇用の規制緩和」に対する、大きな一歩。これまで風営法下の遊技場というだけで一律にアルバイト雇用が禁じられていた外国人に対し、「家族滞在(※注)」の在留資格を持つ者に限って、個別審査のうえで就労を認める方向で調整が始まったという期待が高まるシナリオである。
ついに動き出した規制緩和。しかし、なぜ本命の「留学生」ではなく「家族滞在」なのか。漏れてきたインサイドストーリーから、外国人雇用のリアルな最前線をレポートする。
複雑な就労条件と理不尽な職業差別
そもそも、外国籍の人が日本で就労するための条件(在留資格)にはいくつかのカテゴリーが存在する。就労制限が一切ない「永住者(特別永住者を含む)」や「日本人の配偶者等」をはじめ、専門分野に限られる「就労ビザ」、技術を学ぶ「技能実習生」などが代表的だ。
また、本来は就労目的ではない留学生や家族滞在の外国人も、原則週28時間以内であれば「資格外活動許可」を得てアルバイトをすることができる。
しかし、この留学生や家族滞在のアルバイトにおいて、パチンコホールなどの風営法下の営業所は、その就労対象から頑なに除外されてきた歴史がある。背景には、1980年以降、外務省をはじめとする関係省庁が風営法管下の職種における外国人就労を厳格に取り締まってきたという事実がある。
街のコンビニや飲食店では外国人が当たり前のように働いているのに、パチンコ店だけは足を踏み入れることすら許されない現状。この分厚い壁を打ち破る一打となったのが、今回の議連の場で明かされたという「関係省庁」の公式見解である。
水面下の協議において、所管する関係省庁側は「遊技産業は業務の適正化と業界の健全化が図られており、遊技場を、アルバイトを行う事業所とすることについて特段問題はない」と明言したという。長年にわたる業界の適正化への努力が実を結び、関係省庁の頑なな態度を軟化させた最大の要因がここにある。
ではなぜ「留学生」は据え置きのままなのか
一方で業界が強く要望してきたのは、圧倒的なボリュームゾーンである「外国人留学生」の雇用環境緩和措置である。しかし、今回の関係省庁の対応方針は、あくまで「家族滞在」の外国人に限定されるという話だという。
現在、日本全体として留学生の「資格外活動」に対する監視の目は厳しさを増しており、許可そのものを厳格化する方向でさまざまな措置が講じられつつある。このデリケートな時期に、風営法業種への就労を一気に全面解禁するのは「時期尚早」であるというのが、関係省庁側の本音であろう。
そこで次善の策として白羽の矢が立ったのが「家族滞在」という枠組である。令和7年末時点で全国に約35万人おり、その半数程度がすでに資格外活動許可を受けている。入管庁は、この層を対象にパチンコ店での勤務希望者を個別審査し、アルバイトを認める方向で準備を進めているという。小さくとも要望に応えてスタートするという官僚側の妥協点。この小さな一歩が、業界の仕組みに大きな影響をもたらすことができるのだろうか。
パチンコ業界の〝代弁者〟木村議員が気を吐く
この方針転換は悲願達成への第一歩だが、明日からすぐに外国人がホールにあふれるわけではない。そこには実務的な高い壁が存在する。
関係者から聞こえてくる運用方針案によれば、アルバイトが認められるのは、「適正な外国人雇用が図られている事業所」に限定される見込みだ。外国人雇用状況の届出を適切に行っていることや、近く導入される「在留カードとマイナンバーカードの一体化」を推奨していることなどが条件として浮上している。要はしっかりとして受け入れ態勢を作れる企業に限られる可能性があるのだ。
この実務の壁に対し、議連の場で業界の代弁者として大いに気を吐いたのが、パチンコ業界が全面的に支援し、本年2月に繰り上げ当選を果たした木村義雄参議院議員だ。木村議員は関係省庁に対し「いろいろな要件を付けて、実際には使えない制度にしてしまっては、絵に描いた餅になる」と鋭い懸念を突きつけたという。
複雑な申請手続きや個別審査の長期化を恐れてホール側が手を出さない、あるいは制度の形骸化。これを防ぐためには、民間ブローカーの介在を許さない、ハローワークなどの公共職業安定所を通じた、公的で透明な募集ルートの確立が不可欠となる。紹介料が無料である公的インフラを活用し、業界団体と行政が一体となった安全な人材確保の仕組みを構築できるか。
「家族滞在」のアルバイト解禁という、水面下で動き出したシナリオ。それは、パチンコ業界が長年受け続けてきた不当な職業差別に対する、確かな反撃の狼煙でもある。業界は小さくとも開いたこの風穴を、決して塞いではならない。
そのためには、全国のパチンコホール企業が複雑な労務管理から逃げず、適正な外国人雇用の実績を地道に積み上げていくしかない。「健全化が図られている」という関係省庁の評価を裏切らないこと。それこそが、次なる「留学生」の解禁という本丸を攻め落とすための唯一のパスポートとなるのだ。
※注/家族滞在……就労系や留学など一定の在留資格を持つ外国人の「配偶者または子」が、その扶養を受けながら日本で日常生活を送るための在留資格。
6月24日に行われたパチンコ・パチスロ産業合同祝賀会で壇上に集まった遊技産業議員連盟のメンバー。壇上の議員以外にも議連メンバーは存在し、総勢で50名を超えているという。
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