パチンコが玉で遊ぶパチスロになる日 【第二部】日工組が描く 次世代パチンコの 「設計思想」
2026.04.24 / 組合・行政日工組技術担当理事・渡辺圭市氏、技術委員長・清原賢二氏ダブルインタビュー
パチンコの再設計について語る日工組・技術担当理事の渡辺圭市氏。通常時の遊技性や設計の自由度拡張など、今後の方向性について言及した
「玉で遊ぶパチスロ」というテーマのもと、本特集では現状の課題から新たな動きまでを追ってきた。では、その先にあるパチンコの姿とは何か。設定付きパチンコやLT3.0プラスなど、新たな設計が広がる中で、パチンコはどこへ向かおうとしているのか―。日本遊技機工業組合への取材から見えてきたのは、単なるスペックの変化ではなく、“遊び方そのもの”を見直そうとする明確な方向性だった。
目指しているのは「通常時から遊べるパチンコ」
本稿では、日本遊技機工業組合(以下、日工組)へのインタビューをもとに、今後のパチンコの方向性を整理していく。今回話を聞いたのは、日工組で技術担当理事を務める渡辺圭市氏と、技術委員の委員長を務める清原賢ニ氏である。
両氏の発言から見えてきたのは、いま起きている変化が単なるスペックの調整ではなく、「遊技そのものの再設計」であるという点だった。まず大きなテーマとして語られたのが、通常時の遊びやすさである。
渡辺氏は次のように語る。
「現状、一番の問題は、遊んでいる時間がストレスになりやすいことなんです」
従来のパチンコは、大当りまでの過程が単調になりやすく、「当たるまでの時間」が重く感じられる構造だった。そこで今、目指しているのが通常時そのものを遊技として成立させる設計である。
渡辺氏は続けてこう語る。
「同じだけ回る中で、どう遊ばせるか。そこをゲーム性で作っていきたいんです」
単に出玉性能を強化するのではなく、遊技の「過程」に価値を持たせる方向へと舵が切られているという。その一つが今回発表された「設定付パチンコ」だ。
設定付パチンコが広げる「設計の自由度」
これまでの「設定付パチンコ」は大当り確率のみに差がつけられていたが、今後は図柄の比率を変えることで、より多面的な設計が可能になる。
渡辺氏は次のように語る。
「図柄の割合が変わると思ってもらえればいいです。そうすると、出玉(内訳)も変わるし、STの入り方も変わる」
重ねて清原氏はこう補足する。
「図柄に紐づく部分が多いので、時短やラッシュの入り方も自然と変わってきます」
図柄の割合が変わることで、出玉の内訳やラッシュへの導線、さらには展開の強弱に至るまで設計が可能になる。これは単なる確率差ではなく、「体験の差」を作る仕組みだ。
従来のように「当たりやすさ」だけで差をつけるのではなく、「どのように当たるか」「どう展開するか」まで含めて設計できるようになることで、遊技者にとっても違いが体感しやすくなる。
新しい設定付パチンコの仕組みを話してくれた日工組・技術委員長の清原賢二氏
遊技体験を見直すという発想
こうした設計思想の背景には、現在の遊技環境に対する問題意識がある。渡辺氏は次のように語る。
「短時間で大きく勝つか負けるか、そういう機械だけでは市場は持たないんですよ」
現状は結果的にストレスフルな運用になりやすく、「投資がかさみやすい」「継続遊技が難しい」「体験の波が荒い」といった課題が生まれている。
さらに渡辺氏はこう続ける。
「当たるまでが長くて、その間に何も起きないと、やっぱりしんどいでしょう。そこを改善できるようにしたいと思うのです」
そのため今後は、通常時の中で変化を感じられる設計が重要になる。
「ずっと待つだけじゃなくて、途中で何かしらの手応えがあるようにしていかないといけないと思っています」
結果だけではなく、その過程と遊びやすさを含めて設計していく必要があるという考え方だ。
「日工組としては、自由なスペックや性能を設計できる仕組みを考えています。ここからは、遊技機メーカー各社の腕の見せ所になると思います。絶妙な性能を持った機種をメーカーが開発して、それがヒットすれば、『●●メーカーと言えばこのスペック』みたいなイメージも生まれる。それぞれのメーカーならではの看板機種みたいなものも出せるようになるではないかと期待しています」
将来を見据えて検討する2種・3種機と“玉の面白さ”
一方で、もう一つ重要な方向性として渡辺氏から語られたのが、2種機・3種機のような仕様の追求だ。
「例えばビッグシューターのような役物と、普通のデジパチのアタッカーを組み合わせる。図柄ぞろいで当たってからその大当りの継続は役物が担う。そんな機械も可能でしょう」
これはデジタル主体とは異なる方向性であり、玉の動きや役物そのものを楽しむパチンコの再構築といえる。こうした機種は遊技時間との相性も良い。
「1万円で遊べる、5000円でもやめられる。大当りまでの仮定が短いから短時間でも遊べる。そういう中射幸性を持った機種。遊びやすい機械が大事なんです」
パチンコは〝パチスロ化〟するのか
今回の取材から見えてきたのは、パチンコがパチスロへ近づこうとしているのではなく、「パチンコとしての遊び」を再構築しようとしているという事実である。
設定による設計や通常時のゲーム性といった要素は、結果としてパチスロ的に見える部分もある。しかしその本質は、玉の動きや役物の面白さ、短時間でも成立する遊技性といった、パチンコ本来の魅力をもう一度成立させることにある。
渡辺氏は「パチスロに寄せるつもりではありませんし、パチスロユーザーをパチンコに誘引しようとしているわけでもありません。パチンコとして、どう遊ばせるか。それを考えているだけなんです」と語る。
パチンコは〝パチスロ化〟するのではなく、パチンコとして新たな進化を目指す。メーカー各社の今後の機種開発が、その方向性をより明確にしていく。
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