【特別寄稿】Xに漂う匿名シゴデキ店長「きゅぴ」氏。全国の店長の声を代弁する
2025.05.15 / ホール匿名で所在を明らかにしてはいないが、実際に全国どこかのホールで店長をしているきゅぴ氏。過去には、小誌企画の「店長ならば打て!」という記事でも取材をしており、かなり打ち込むタイプの店長である。つまりユーザー心理をちゃんと理解してお店を営業しているということだ。匿名だからこそ本音を書いていただいた。

全国にあるパチンコ店の数だけ店長が存在する。新米店長、ベテラン店長、我こそが1番だと思って日々営業努力をしているのではないだろうか。
競合店には負けたくない、社内で1番の評価を得たい、お客さまに喜んでもらいたい、お客さまにたくさん来ていただきたい、思いは人それぞれである。
すべての店長が設定を好きなだけ使って好きなように営業したいと思っているはずであり、そしてそこに憧れや楽しみを求めて業界に飛び込んだ方も多いだろう。
しかし、営業は思い通りにはいかない。いや、「経営は」と言ってもいいのかもしれない。全国のパチンコ店は営利企業であり、ホール店長はより大きな利益を生み出すことを求められるからである。
そんなユーザーの期待と、ホール運営の現実との間にある乖離は年々広がっているように感じる。
「回るパチンコが打ちたい」「設定⑥が打ちたい」。100%ユーザーの想いに応えていては営業が成り立たない。
我々はお客さまを満足させつつ、利益を上げ続け、そして競合店との過当競争に勝っていかなければならない。
「利益を増やしながら集客も増やす」という矛盾に向き合い、それを実現できることが優秀な店長の証だ。
利益度外視で売上、集客だけ追求する例外を除けば、いかに〝上手に〟利益を上げられるかというところに、店長の存在価値があるのかもしれない。
その中で今回依頼されたテーマが「シゴデキ店長とは?」である。
やはり一番は売上も利益も上げることができる店長というのが答えだとは思うが、もう少しドリルダウンして、パチスロの設定についてつらつらと書いてみたいと思う。
今回の依頼を受けた時に昔の自分を思い出してみた。「出すために取る、取るために出す」。営業に携わり始めた頃に教わったホール営業の基本のキだ。
優秀な店長は出したい時にしっかり出せる。出したい時に出せない店長は向いてない。なお、出し過ぎると怒られるというのは何とも理不尽な話だ(笑)。
出過ぎて怒ってくる上司も過去たくさんいたが、この手の出して怒ってくる上司は無視するに限る。出さないと利益が取れないということを何も分かってない。
出し過ぎるなよって言われても、分かりましたーって言って設定を入れてしまえばいい。設定入れ過ぎだから減らせと言われても、分かりましたーって言ってそのまま。むしろ増やしてしまえばいい。仕事ができる店長ほど、大抵上司の言うことを聞かない説!あるある!
集客できる店長は、変わった人・変わったことをやりたい人が多く、設定の入れ方も良く言えば面白いのだが、悪く言えばヒネくれている。上司から「こんな台に設定入れて意味あるのか」と言われても、自分が入れたかったら入れるし、お客さまからも言われたことがある。
「こんな稼働のない機械に入れるなよ(笑)」って。「でも、そういう台を動かさないと利益取れないじゃん」と心の中では思っているのだ。
先ほどの教えの話に戻るが、ホールのセオリーは、「逆に取りにいく時も思いっきりいけ。中途半端にダラダラ取るな」。ここまでがセットであることも忘れてはならない!
「出すことは誰でもできるからね!」
「取ることはほんとに難しいけどね!」
最大限の利益を生むためには、「出すこと」を必ずしなければならない。なので、時には上司の言うことを無視する胆力もめっちゃ大事になってくる!
だから、部下には初めに作った設定から必ず「プラスα」を足すように教えている。
出すことでお客さまに期待が生まれる。お客さまの期待が集客・稼働につながり、利益を取ることができるようになる。設定が入らない店には期待感が生まれない。お客さまがいない店には、つまるところ期待感がない。
本特集で表現しているシゴデキ店長は、出さないといけないタイミング、取らないといけないタイミングをよく理解して、流れや伏線を生み出して出し抜きをしていることだろう。そこが上手いから上手に利益を取ることができ、上手に出すこともできる。もちろん、接客が悪かったり、新台がなかったりとお客さまの期待感以前の話も数多くあるのだが、それは本筋から離れるためまた別の機会に。
私が考える期待感を生む設定の入れ方とは、お客さまにいかに考えさせるか、選択肢を多く持って貰えるかどうかが肝要だと思っている。
利益を上げるために、常にお客さまの選択肢を増やすにはどうしたらいいかを考え続けてきた。
設定⑥を入れることもある意味、利益を上げるために必要なことだと思う。設定④を使うのも、設定⑥を生かすためのスパイスにもなる。
「設定④は中間設定だ!」という世の風潮もあるが、これも要は使い方の問題だと思っている。お客さまから設定⑥まで見えると思って貰える店であれば、設定④に価値が生まれる。最高設定が④と思われないようにするために、設定⑤⑥を使わないといけない。
やはりユーザーは設定⑥に憧れ、追い求めるものだ(もちろんユーザーである自分自身も設定⑥を打ちたい!いやマジで!お願いだから!)。
低設定を打たせてこそ、利益を上げることができる。低設定を打ってもらうためには、設定があると思ってもらわないといけない。高設定が使われている可能性への〝期待〟が、打ち手に低設定を打たせる原動力にもなる。
そこに設定のテクニックのすべてが詰まっている気がする。
一番の理想は、この店は毎日設定に期待できると思ってもらえることであるが、実際にはそういうわけにもいかない。そのために、出す時はしっかりと出し、取る時にはしっかりと取ることで、お客さまとの駆け引きを楽しんでいきたい。つまりは店長対客の勝負である。
その中で負けてもまた来て勝負を挑んでくれることこそが、利益の最大となるのではないだろうか。結論、シゴデキ店長とは、お客さまを負けさせてもまた来たいと思わせなければならないサイコパス的思想の持ち主だということが言えるのかもしれない。