店長より上のSNS運用を考える/マルハン東日本カンパニー 山田豊氏

2024.09.13 / ホール

パチンコ店営業の王道ど真ん中を伝えること。
それがXをやっていた理由。 

マルハン東日本カンパニー/静岡2エリア エリア長 山田 豊氏

 今年の2月20日、「退任のご挨拶」というXポストを出し、それをもってマルハン新宿東宝ビル店から卒業。新天地として静岡中西部13店舗のエリア長となった山田豊氏。店長時代には、1日も欠かすことなく毎日ポストを続け、アカウントと業績を成長させ続けてきた。店長という役職を離れエリア長となった今も、Xの運用は続いている。SNSもホールの業績も、両方の成功を収めてきた本人に、Xの運用軸からホール営業感まで含めて意見を求めた。


 山田氏のフォロワーは彼のことを、リスペクトを込めて「クレイジー」と呼ぶ。
 2021年5月にマルハン新宿東宝ビル店に就任してから1年でTwitter(当時)アカウントを開設。在任期間中の2023年7月7日の777CON-PASS申込数が2万5000となり、当時の最多記録となった。今年はさらに記録を更新し、5万4000の申し込みとなり現在も同店の人気は衰えていない。
 マルハン新宿東宝ビル店が日本一のホールにまで成長したのは、営業内容が強かったことに加えて、山田氏が運用するXアカウントの成功もその一旦を担っている。山田氏はXアカウントを開設してから、1日も休むことなくポストを続け、自らの発信だけではなく、リプ返にも多くの時間を費やしてきた。
 
ヤマダのSNS①
1.9万人以上のフォロワー

店長アカウント時代に1万7000人ほどのフォロワーを獲得していた。エリア長になってからは、Xをたまに投稿しない日もあるようになったようで、「楽しています」と笑って話す。

 

ヤマダのSNS②
退任時に106万のimp
 

 今年の4月に店長から昇進し、静岡県中西部13店舗のエリア長となったわけだが、当時、山田氏はどんなことを考えてXを運用していたのだろうか。それを聞くと、「ホール店長としてのSNSは何のためのツールだと思いますか?」と逆に質問を返されてしまった。
 編集者の考えでは、Xは相互のツールであり、一方通行で何かを告知をするだけではなく、その後のリプライの応酬も含めてお店とユーザーのコミュニケーションを深めていくものだと思っていた。しかし山田氏は「そうですね」と一言だけ放ち、数秒逡巡してからこう話し始めた。
 「たしかにXにおいてはそういうところもありますが、それはどちらかというと付加価値の方です。パチンコ店営業の王道ど真ん中。我々の商売でとても大切にしているお客さまにドキドキワクワクしていただくこと。私がXをやる理由はそれを伝えるため。ここが一番大きいですね」
 伝えるツール、メディア、言葉、さまざまな制約がある中で、現代社会ではXがたしかに効果的ではある。しかし、Xはあくまで伝える手段に過ぎず、目的はドキドキワクワクして楽しんでもらうこと。いわば、山田氏がホール営業で表現していたことの補助がポストというわけである。これを理解させることがより遊技することを楽しめるようにさせてくれるのだという。
 
 では、山田氏は店長時代にどんな営業を伝えたかったのだろうか。
 「店長の時に考えていたのは、人の記憶に残る仕事をすること。例えば亀有店で店長をしていた時は、設置最終日に『バジリスク絆』や『初まど』を全6にするということをやっていました。撤去する台なので、無駄な投資と捉えるのが普通だと思います。その無駄をなんのためにやっていたか。例えば最終日に打たれたユーザーが『バジリスク絆』や『初まど』の筐体を見た時に、『俺この台、最後の最後亀有で全6打ったな~』となりますよね。その人からしたら生涯忘れない思い出になります。勝つにしろ負けるにしろ、人の記憶に残ることをしたかった。ただそれだけでしたね。怒られますねこれ(笑)」
 これこそが山田氏が山田氏たる所以であり、最大の差別化である。山田氏自身が業界に入る前のプレイヤーだった時代に、そのような店長の営業を目の当たりにして、「自分もこうありたい」と考えていたという。
 このホール運営感はXの運用にも大いに関わってくることだ。山田氏はホールならではの表現を重要視している。例えば、出玉の総量でいえば、山田氏が任されていた当時のマルハン新宿東宝ビル店を上回っていたホールはあるだろう。それこそ1日単位で見れば大きな差がつくこともあったはずだ。だが、その知名度は新宿歌舞伎町という東京の一等地であることを踏まえても、それ以上に差が大きいようにも見える。これはつまり、ただ出玉を出しているだけでは「記憶に残らない」ということの証明となってしまうということだ。
 

勝てるんだけどただ勝てるだけでつまらないと思われるホールにはなりたくないと思っていました。

 

 「勝てるんだけど、ただ勝てるだけでつまらないと言われるようなホールにはなりたくないと思っていました。機械を買ったり演者さんを呼んだりすることは、もちろん必要な時もあります。ただ、それだけでは誰でもできてしまうことで、自分しかできないということではない。自分で楽しさを伝えて人の記憶に残すこと。ここをどこまで考えて追求するかが本来の店長の仕事だと思います」
 だからこそ、山田氏が考えていたのは、日々のXポストで顧客に伝えることは、ホールのブランディングだけでなく、自分のブランディングもしていくということだ。マルハン新宿東宝ビル店が強いのか、ヤマダが強いのか。そのどちらもを狙ったのが山田氏のX運用だった。これには一長一短がある。山田氏自身は、新宿東宝ビル店の後は、また別の店舗で店長を務めると思ってのアカウント開設であった。
 「Xアカウントを始めた時、東宝のブランド力を上げることと、自分のブランド力を上げることを考えていました。なぜなら次も店長をやると思っていたので(笑)。『ヤマダに期待できるよね』となったら次の店に着任した時にも営業しやすくなると思っていたんです。結局投資をして何を残せるかが大事。Xには自身のブランド価値をあげることで、東宝での投資が次の店舗にもつなげられる可能性を感じていました」
 
 山田氏は休みの日に朝の抽選からパチスロを打ちに行き、高設定狙いをしてツモると1日9000回転遊技したりする、ガチスロッターとしても有名ではあるが、それも自身のブランディングにつながっていたと感じている。だからこそ、ユーザーからしてみれば山田氏の考えを読み切って高設定をツモって達成感や満足感を得たいという、出玉を獲得することとは別のモチベーションも生み出すことができていた。パチンコ・パチスロの本来の楽しさであるドキドキワクワクすることを、Xのポストを通じても生み出してきたのである。
 新宿東宝ビル店時代から自身のブランディングにも成功し、そのブランド力を生かすことを期待されての静岡中西部エリア長として異動となる。
 静岡県は店長アカウントなども少なかったが、山田氏が担当する13店舗でもアカウントを開設するようになってきており、東部でもエリア長を含む多くの店長アカウントが2024年4月以降の開設となっている。
 こうなると気になるのは、山田氏のノウハウをどれだけ店長陣に伝えているのかという部分と、山田氏自身の役割はエリア長となった今、どうなっているのかという点だ。
 「店長たちにはそんなに細かく指示はしていません。店長ブランドが育てやすい店とそうじゃない店もありますし。ただ、1つ確実に言えるのはSNSに向き合う時間が長くないと差別化はできないと思います。今だから言えますが私は身内に不幸があった日も、コロナに罹患した日も、そんな姿は見せずに変わらず毎日自分でポストをしていました。正直もう辞めたいと思った時もありましたが、ポストの先にいるユーザーのことを考え、人の記憶に残すために続けてきました。さすがにここまでやればそれなりには差別化できると思いますが、ここまでやることを業務として指示することはできませんね(笑)。
 
 東日本Cの全エリア長は、今は9人全員がアカウントを運用するようになっています。どんな運用をすることが効果的なのか、それぞれがまだ模索中です。
 私自身も人の記憶に残るようなことをやりたいという基本スタンスは変わっていませんが、エリア長だからこそできることをやりたいと思っています」
 
ヤマダの仕掛け
静岡県マイジャグラー全389台が……
 
8月11日仕掛けられた、静岡県マイジャグラー全389台(5スロを含む)の営業内容をまとめたポスト。公開されているデータサイトなどでその内容がまとめられ、ボーナス確率などから設定6の近似値となり、「静岡マルハンがマイジャグ全台6をやったぞ」として話題になった。こうした仕掛けが拡散されやすいのも、ヤマダブランドの積み重ねであると感じる。
 
8月11日、静岡マルハン全店が「県内のマイジャグラーV全389台が全6だったのでは?」とネットが騒然となったことがあった。これは恐らく山田氏を中心に仕掛けたのではないかと推測されている。
 これは普段から山田氏がマルハン新宿東宝ビル店時代から積み上げてきたブランド力を静岡でパワーアップして利用した事例と言えるだろう。メッセージ性やスケールが他より大きく、まとめサイトやYouTubeなどで速報的に話題を提供することができたと言える。
 SNSに先進的であるマルハン東日本Cの内部を見ても、部長以上のアカウントは現状存在しない。この状況に対し、山田氏に何か考えはあるだろうか。
 「世の中がエリア長や部長に何を求めているのか。それが定まっていないので、必要かどうかはまだ分かりません。ただ成功する可能性は十分あると思っています」
 今は店長の延長線上でのX運用を行っているが、地域をよくしたり活性化したりすることも山田氏は考えている。
 マルハン新宿東宝ビル店で、近隣の飲食店のポストをしていたのは「歌舞伎町という街が初めて来る人にとっては怖いと感じる場所かもしれない。でも店長が食べている店なら安心だから行けると思って貰えるかもしれない。その街で商売するのであれば、その街の活性化にもつなげたい。だから店舗近隣の飲食店の紹介を基本的なポストにしていたんです」と狙いも語ってくれた。
 立場が変われば、ポストする内容も、求められる役割も変化する。何が正解なのかは運用する人次第で変わる。最後まで諦めなかった人が勝つのかもしれない。
 
唐突な登場でよく分からないと思うが、写真左は本誌編集長。山田氏から、「記憶に残ることをするから一緒に誌面デビューを」と言われ、半ば強引にこの写真が選ばれました。とほほ。

PROFILE
マルハン八王子四谷店から店長のキャリアをスタートさせた山田氏。その後、亀有店の店長を務め、業績を上げた後に新宿東宝ビル店の7代目店長に就任する。Xのアカウントを開設したのは、就任してから1年を過ぎた頃。アカウントを開設してから、店舗を離れるまでの約1年半、毎日ポストを欠かすことはなかった。同店での功績が認められ、静岡中西部エリア13店舗を束ねるエリア長に昇進。1万9000人以上のフォロワーを抱えており、「SNSの影響力が強い東京から、そうでない郊外に異動してどこまで変化させられるか。そういうチャレンジも含めた人事なのでしょう」とは本人談。 
マルハン東日本カンパニー, 山田豊氏, エリア長
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