久々にヒットしたライトタイプ「P神・天才バカボン〜甘神SPEC〜」ヒットの要因を探る

2023.03.16 / コラム

2月5日週にリリースされた「バカボン甘神」は、導入初週は全国データ上で3万5000個を上回るアウトを記録しており稼働が上々だ。しかも、累計台粗利は5週経過時点で約36万円とミドルスペック並み、いやそれ以上に貢献していることから、ライトタイプではあるが、PPM分析でいうところの「金のなる木」に該当する。この好調を受けて増産が決定。現状では若干の増産に留まっている様子だが、引き合いが多いため部材調達中のようだ。本記事ではその「P神・天才バカボン〜甘神SPEC〜」のヒット要因を、大手ホール機械購入担当者のSH@CK氏の話を元に記事化した。


「いやー完全にやらかしました。私のライフワークとして、ほとんどの機種評価を行っていますが、スペック変更のリユース機はたまに見ないこともあり、本機がまさにそれでした。しかし、実際に動かしてみれば初動で記録的な数値を残す結果となり、私が属している企業でも、初期導入はやや控えめな規模でしたが、導入数日で増産が決まったことを聞き、即決でグロス規模を優に超える多台数注文をさせてもらいました」

そう語るのは、当サイトでも新機種評価などをしてくれている某大手法人機械選定担当のSH@CK氏だ。ちなみに、その即決で多台数注文のおかわりをしたのが、大一の「PA神・天才バカボン~甘神SPEC~(以下略バカボン甘神)」である。

「P神・天才バカボン〜甘神SPEC〜」簡易スペック表

大当り確率 1/129.77(通常時) 1/44.80(高確率時)
ラウンド数 3 or 10R×10カウント
確変突入率 -
時短突入率 72%(ヘソ)100%(電チュー)
賞球数 1&1&3&4&10
大当り出玉 約300 or 1000個(払い出し)
電サポ回転数 0 or 30 or 81 or 1031回転


社会的な情勢を受けて市場背景が大きく影響する場合もあるが、「バカボン甘神」の初動はコロナ発生以降の同タイプとの比較では6番目の稼働となった。しかし、総量計算見直しにより、本格的にハイミドルパチンコ市場となったのが2021年4月後半のこと。それ以降で同タイプを比較すると堂々の1位となり、翌週の稼働維持関連の数値もすべて1位というミラクルを起こした。

ちなみにコロナ以降の同タイプ機で、本機よりも上位にいたのは以下の機種である。
・PA南国育ち5
・PAミニミニモンスター4
・PAぱちんこAKB48 桜LIGHTver.
・PA大工の源さん超韋駄天
・PAぱちんこ新必殺仕置人TURBO
いずれも高貢献かつ高資産価値であった鉄板機種ばかりだ。

突如としてヒットした「バカボン甘神」は、すでに増産が決定した。なぜここまでヒットしたのか、さらに深掘りしていく。


ライトタイプとしてここがいいのだ!

ここ最近のライトタイプの傾向を見ると、1/99よりも高いTSに遊タイムを搭載。RUSH後は遊タイムを追わせるフローで極端に客滞率を向上させるタイプが実績を残している。しかし、これに該当する機種は、もちろん単価は低めだ。

反対に、単価を上げる仕様となると、主に突破型がほとんどとなる。こちらも同様のフローをもった機種は非常に多く、以前に比べて市場では陰りが出てきている。

そんな状況下で「バカボン甘神」は、ライトタイプとして許容されるギリギリのレベルまでTSを低くした設計。その分をシッカリとRUSH性能に返還した仕様となっている。SH@CK氏はこの点がヒット要因の1つだと分析する。

「遊技環境が厳しい状況下でも、ユーザーの遊技意欲を維持させるTS設計というのがポイントかと思います。ベースとなったミドル機同様に、『バカボン甘神』は2段階RUSH。初当り時72%でのRUSH突入という間口の広さに加え、RUSH中はオール1000個かつ上位RUSHなら約85%で継続します。ライトタイプながらこの射幸性の高さが十分な見返りとして遊技意欲を促進させているのではないかと」(SH@CK氏)


ターゲット層のここがいいのだ!

ここまで語られているのは、ライトタイプの中でのスペックの優位性から分析されたものである。一方で、どういった客層が本機を打っているのだろうか。

一般的に遊技機は「コンテンツ」と「スペック」でターゲットとなる年代層をカテゴライズできる。コンテンツはそのまま馴染みのある年代に向けたものとなり、スペックは端的にいえば射幸性(単価)の高さが反比例する傾向にある。当たり前のことではあるが、これまでの傾向としてコンテンツとスペックの親和性が高いほど、より実績が高い。

そんな中で本機はどうか。コンテンツは明らかに中高年層向けであるにも関わらず、スペックの数値を見るにターゲットは射幸性の高さを求める若中年層向けだ。2段階RUSHではあるものの、右打ちでの大当りなら1000個獲得という『分かりやすくシンプルなゲーム性』が間口の広さとして認識され、なおかつ射幸性を抑えているように感じさせるつつも、しっかり出玉を得られる絶妙なバランスで高稼働の獲得に成功している。

さらに、市場全体がショートSTに傾倒している中で、通常確率程度のSTとなっているのもポイントかもしれない。ちなみに、RUSH時間が短くなるほど射幸性が高く認識される傾向にある。


スペック変更時に高確率でヒットする法則に合致したのだ!

著作者:vectorpouch/出典:Freepik

スペック変更でリリースされた機種がヒットする法則は大きく分けて2つある。まずはベース機が高実績であること。その点、バカボン(ミドル)は神スペックとして話題性もあった。

そしてもう1つが、スペック変更時のTSに幅があることである。最近ではハイミドルからライトの間にライトミドルをリリースするケースも少なくない。100分の1程度しかTSの変化がない場合、スペック変更した機種が優位性が保つことが困難となる。また、メーカーによってミドルとライトタイプの実績が天地ほどの差が出る傾向にあり、これはメーカー別の貢献度という観点でチェックするべきだ。あえて要約すると“ちゃんとニーズのある商品としてライト開発をしている”かどうかとなる。


現市場のトレンドを取り入れているここがいいのだ! 

著作者:storyset/出典:Freepik

 

いわゆる流行・売れ線、現パチンコ市場のトレンドは周知の通り「エヴァ15」「Re:ゼロ鬼」となっている。かつて「牙狼月光」がヒットし、その直後に出た新規コンテンツの「UC」にニーズを喰われ、後に「エヴァ」「Re:ゼロ鬼」へとトレンドは移行していった。

コロナ禍に突入し、パチンコホールも営業時間の短縮を余儀なくされ、ユーザーのホール滞在時間が短縮せざるを得ない。そんな状況下だったからこそ「超韋駄天」のような高出玉速度が一時的にトレンドとなったが、これは昔から「ビッグドリーム」などニッチとして存在していたに過ぎない。さらに時が過ぎ、アフターコロナとなりつつある最近では、MAX時代より変わることのなかったロングSTのトレンドへとユーザーが戻っていった。

この点でもSH@CK氏は「バカボン甘神」の持つ市場優位性を語る。

「『バカボン甘神』といえば通常STタイプ。トレンドに寄った仕様です。その具体的な出玉速度でいえば本機は約18,000個と、『エヴァ15』の時間20,000個と遜色ない性能を有しています。

さらに、出玉速度に比例する数値の1つではありますが、最近の機械はアウト効率・時間アウトが高過ぎる傾向になっています。1分100発打ち出し可能なパチンコ、つまり1時間の最大は6,000個。現4円パチンコ市場の全国平均稼働は12,000程度しかなく、2時間フルで打ち出したら届いてしまう程度のものとなり、言ってしまえば2時間しかユーザーが座っていない程度しか稼働がないということになります。

この全国的な稼働低迷の原因が、仮に遊技時間を割くことができないということであれば、時間アウトを高くすることで向上するかもしれませんが、大きな原因の1つは経済的な問題が強いと見ています」(SH@CK氏)

この時間アウトが高いせいで2時間を除いた10時間以上が空台となっている状況がホールにとって良いわけがない。最近では時間アウトが80%を優に超える性能ばかりで空台が余計に目立ち、短命な状況に拍車をかけている。その時間アウトも「エヴァ15」は76.7%(4,600個)程度となっており、本機も75.3%(4,520個)程度とシッカリとトレンドに寄った性能であるとSH@CK氏は太鼓判を押す。

4月にはスマパチのリリースも控えたパチンコ市場だが、仮にスマパチのニーズが高まった際には、その影響を大きく受けるのは射幸性をウリとしているハイミドル機となる。だが、ライト帯への影響は。おそらく数年後のレベルだろう。

さらには、ライト帯のスペックはベース機を踏襲する傾向が強く、ベース機となるハイミドルのほとんどがショートSTで溢れ返っている。そうした状況では、同タイプ機のリリースはおそらく少ないはずだ。「バカボン甘神」は、ほぼ長期的な稼働が見込めるライトタイプの1つである。

「本機は等価分岐で17回を切る非常に甘い仕様ではあるものの、玉単価1.8円、玉粗利30銭を超えても高売上・高粗利を維持できる珍しいニーズが存在している機種です。特に長期稼働が見込める高推移のライトタイプですし、当分稼働が10,000を切ることもないであろう非常に期待値の高い機種。やや気になる点として最後に意見を言わせてもらうと、少し取り過ぎているようにも見えるので、台粗利3,000円程度を目安にしてさらに長期間の稼働・営業貢献を狙うと業績に与える影響も多いのかなと思います」(SH@CK氏)

©︎赤塚不二夫/ぴえろ

 

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